【NEWS】JR陸羽西線で一部列車のバス転換を検討 – 自治体が再考求め要望書提出

陸羽西線の駅 協議会ニュース

【2026年8月19日】JR東日本が陸羽西線の一部列車のバス転換を検討していることに対して、山形県と沿線自治体が再考を求める要望書を提出しました。要望書は、JR東日本のほか国土交通大臣にも提出しています。

要望書などによると、沿線自治体との勉強会でJR東日本は、日中の定期列車4本をバスで代行輸送する案を提示。「観光地の近くに停留所を設置できるなど柔軟な輸送ができる」と、バス転換のメリットを伝えたそうです。これに対して沿線自治体は強く反発。現行の運行本数を維持するよう求めています。

陸羽西線は、並行する道路のトンネル掘削工事にともない長期間運休し、2026年1月16日に運転再開したばかりでした。

【解説】運転再開から半年で見直し?陸羽西線が抱えるJR東日本の課題

陸羽西線は、並走する国道47号のトンネル工事にともない、2022年5月から全線で運休。運転を再開したのは、2026年1月16日でした。それからわずか半年で、JR東日本は運行形態の見直し案を沿線自治体に申し出たのです。

2026年7月30日に開かれた、陸羽西線沿線活性化勉強会。この場でJR東日本は、日中の定期列車4本をバスで運行する案を提示します。

全列車ではなく日中に限ったのは、「バスで運べる人数しか利用者がいない」という現実があったからでしょう。そもそも運休期間中は代行バスで運べたわけですから、時間はかかっても輸送力には問題ありません。また、朝夕は通学定期客をはじめ沿線住民の利用が多いものの、日中は観光客の割合が高いことから、地域振興策の一環で提案したと思われます。

ただ、自治体からみれば「バス転換の布石」と感じる、唐突な提案でした。3年8カ月もの長期運休からようやく再開し、利用促進の取り組みもこれからという矢先に、「なぜこのタイミングで提案した?」と困惑する自治体も多かったようです。

JR東日本は、2027年のダイヤ改正で一部列車のバス転換を実施したい考えです。これを阻止するために、沿線自治体は要望書を作成。「現行の運行本数を継続すること」「陸羽西線を基軸とした交通体系の検討を地域と一体となって推進すること」などをJR東日本に求め、2026年8月19日に提出します。

さらに沿線自治体は同日に、国土交通大臣に対する要望書も提出。JRの一方的な事情で安易に減便しないよう「国の責任においてJRに対し厳格な指導を行うこと」を要望します。ローカル線の減便問題で、地域が国に要望書を提出するのは異例なことです。

また国土交通大臣への要望書では、陸羽西線は「広域的な地域間の移動を支える路線」として、国が「維持すべき基幹的ネットワーク」に位置付けるよう懇願。「継続的に支えるための支援の実施」や、それに必要な「財源を確保する」ことも求めています。

「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」において本年4月に取りまとめられた「課題整理・今後取り組むべき方向性」において、引き続き検討することとされた「基幹的ネットワーク」について、陸羽西線のように広域的な地域間の移動を支え、二次交通を含めた地域の公共交通全体のあり方を左右する大きな存在として機能している路線を「維持すべき基幹的ネットワーク」として位置付けること。
また、当該路線を継続的に支えるための支援を実施するとともに、そのために必要な財源を確保すること。

出典:山形県「陸羽西線の運行本数見直しに係る要望書(国土交通省宛)」

JR東日本が一部列車のバス転換を提案した理由は?

鉄道事業者が減便を提案すると、自治体の反発を受けるのは必至です。いくらバスのメリットを伝えたところで、自治体との関係性に亀裂が入るのは、容易に想定できたでしょう。

では、なぜJR東日本は陸羽西線の一部列車のバス転換案を、このタイミングで示したのでしょうか。単に廃止にしたいのであれば、陸羽西線の長期運休前や運休中に沿線自治体へ協議を申し入れることもできたはずです。

このタイミングで申し入れた理由のひとつに、2023年の地域公共交通活性化再生法の改正があるでしょう。この法改正で、鉄道事業者に対する国や自治体の支援が手厚くなり、JR東日本からみれば赤字ローカル線の「あり方」議論を申し入れやすくなりました。なお、陸羽西線の運休が決まったのは2022年。法改正前でした。

また運休中の代行バスは、あくまでも「鉄道の代わり」ですから、観光地に寄るといったルート変更は容易にできません。運転を再開し、列車が走り始めた今だからこそ、こうした提案ができたのです。

「だったら、列車を運行しながら二次交通を充実させればよい」という意見もあるでしょう。しかし、利用者が減り続ける赤字ローカル線に対してJR東日本が投資できる額には、限界があります。

陸羽西線の赤字額は11億4,600万円、営業係数は5,356です(2024年度)。長期運休前(2019年度)は、赤字額が6億9,300万円、営業係数は1,127でした。この成績で二次交通を充実させたくても、沿線自治体の支援がなければ対応できません。仮にできたとしても、沿線地域の人口減少が進むなかでは、劇的な収支改善に繋がりにくいのが実情です。

また、少子化にともないJR東日本も人手不足に悩まされていることも、一因として考えられます。限られた運転士をやり繰りしたり、保線作業を日中におこなうなど労働環境を改善したりと、人繰りに苦労していることも減便・一部バス転換の案につながったのではないでしょうか。

遅々として進まない「鉄道のあり方協議」の先手打ちか?

慢性的な赤字や人材不足にくわえ、鉄道のあり方をめぐる「協議の長期化」も、減便・一部バス転換案を提案した一因として考えられそうです。

最近の赤字ローカル線の存廃協議では、まず各路線の現状把握を自治体と一緒に進め、利用者数が減っているといった課題を洗い出し、利用促進に取り組むという流れが一般的です。それで利用者数が増えれば良いのですが、現実はそんなに甘くありません。試行錯誤を続け、何をやっても増えないとわかって、ようやく「バスのほうが利便性は良いのでは?」と、他の交通モードと比較する実証実験が始まるのです。ここまでに、協議を申し入れてから数年が過ぎています。

今回のJR東日本の提案は、最初の課題抽出や利用促進の取り組みを一切排除し、いきなり実証実験から始めたようにも見えます。そこには、「効果のない施策をいつまで続けるのか?」という自治体に対するJR東日本の不満も垣間見えるのです。

山形県では、米坂線の復旧協議も進めていますが、被災から4年を経た現在でも解決の見通しは立っていません。陸羽西線は災害で運休していたわけではありませんが、仮にあり方の協議を申し入れることになれば、米坂線と同じく議論の長期化が予測されるでしょう。

だったら、先手を打ってバスを使った実証実験を進め、「バスでも地域貢献ができる」とアピールする材料集めをすることで、将来の協議期間の短縮を目論んでいるのではないかと推測されます。

本来は、沿線自治体が主体となって地域に適した交通モードをファクトとデータをもとに議論し、利便性が高く持続可能な公共交通網を再構築するのが理想の姿です。しかし、現状の沿線自治体は何ら調査・分析をした形跡もなく「陸羽西線は基幹的ネットワークだ」と鉄道の維持に固執し、事業者任せ・国任せの要望書を提出しています。この状況で協議をしても、なかなか出口にたどり着けないでしょう。

陸羽西線は、代行バスで運べるくらいの利用者数しかいません。しかも、運休の理由は並走する道路の整備でした。道路が全線開通すれば、バスのほうが速くなる区間もあるでしょう。そうなれば、鉄道の利用者数がさらに減るのは明らかです。そうしたことが容易に想像できるなかで、JR東日本は将来の協議に向けた準備を進めているとも解釈できそうです。

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参考URL

陸羽西線の運行本数見直しに係る要望書の送付について
https://www.pref.yamagata.jp/020057/kurashi/kendo/kotsuseisaku/20260819.html

陸羽西線の運行本数見直しに係る要望書(東日本旅客鉄道株式会社宛)
https://www.pref.yamagata.jp/documents/53832/20260819_1.pdf

陸羽西線の運行本数見直しに係る要望書(国土交通省宛)
https://www.pref.yamagata.jp/documents/53832/20260819_2.pdf

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