【2026年1月16日】並行する道路トンネルの掘削工事にともない、2022年5月から全線で運休していたJR陸羽西線が、運転を再開しました。
再開初日は、酒田駅や余目駅などで出迎えや見送りがおこなわれました。余目駅では、新庄発酒田行きの一番列車の到着にあわせて、沿線住民など約100人が旗を振ってお出迎え。降車客に、イベントのチラシや記念品を手渡したそうです。
余目駅がある庄内町の富樫町長は、「イベント列車など、沿線住民が双方向で利用できるような仕掛けを考え(JR東日本に)要望していきたい。多くの人が訪れるように、新庄や最上の人たちとも連携して利用促進につなげたい」と語っています。
なお、1日の利用者が1人未満だった羽前前波駅と高屋駅は、全列車が通過扱いとなります。JR東日本は、地元と協議のうえ2駅を廃止にする方針です。
【解説】3年8カ月ぶりに運転を再開した陸羽西線
陸羽西線は、新庄と余目を結ぶローカル線です。一部列車は羽越本線に乗り入れ、酒田まで直通運行しています。
陸羽西線は、最上川や国道47号と並行しています。この国道が、陸羽西線が長期運休となる原因でした。急峻な山間部を通る国道47号は、大雨による浸水や土砂崩れなどで一部区間が通行止めになることもあります。また道幅の狭い区間では、積雪による自動車走行の安全性・定時性に支障をきたしていました。
こうした課題を解決するために計画されたのが、バイパスとなる「新庄酒田道路」です。新庄酒田道路は2025年末の時点で、新庄南バイパスや酒田余目道路など、おおよそ半分が開通済み。現在は、戸沢村の「高屋道路」や庄内町の「戸沢立川道路」などの建設工事が進んでいます(一部、未事業化区間もある)。
陸羽西線の3m下に道路トンネルを建設
陸羽西線が3年8カ月も運休したのは、新庄酒田道路の一部となる「高屋トンネル(仮称)」の掘削工事が理由でした。このトンネルは、陸羽西線の第2高屋トンネルと隣接しており、両トンネルの交差部はわずか約3mの間隔しかありません。
■陸羽西線(第2高屋トンネル)と高屋トンネル(仮称)の位置関係

計画当初は、列車を運行しながら道路トンネルを施工する想定でした。しかし、周囲の岩盤が脆く陸羽西線のトンネルにも補強対策が必要など、技術的な課題が多いことが懸念されます。そこで国土交通省は、2019年3月に「施工技術検討委員会」を設置。有識者を交えて、施工方法や対策方針の検討を始めます。
検討を重ねること3年。委員会は、より安全で効率的に施工するには「道路トンネルの工事期間中は、陸羽西線の運休が必要」と提言。この提言を受けJR東日本は、工事が始まる2022年5月から陸羽西線を運休し、代行バスの運行を決定します。
列車の運休期間は2024年度中までとされました。しかし地質調査の結果、計画より広範囲で地山補強が必要なことが判明。再び施工技術検討委員会で検討され、道路トンネルの開通時期を見直すことになります。実際に開通したのは、2025年8月です。
その後、JR東日本が陸羽西線の運転再開に向けた鉄道復旧工事を進め、2026年1月16日に全線で運転再開されたのです。
運転再開も将来が不安な陸羽西線
工事が着々と進む新庄酒田道路は、陸羽西線とほぼ並行しています。全線開通の時期は未定ですが、開通すれば陸羽西線の利用者数に大きな影響を与えるでしょう。
陸羽西線は国鉄時代、特定地方交通線(第3次廃止対象路線)に指定されました。ただ、平均乗車キロと輸送密度の除外規定により廃止を免れ、JR東日本の路線として継承されます。1987年の輸送密度は、2,000人/日を超えていました。
しかし、沿線地域の少子化や過疎化、モータリゼーションの進展などの影響で、利用者数は年々減少。2010年代には400人前後まで減っています。
■陸羽西線の輸送密度の推移

参考:JR東日本「路線別ご利用状況」をもとに筆者作成
一般的に、災害などで長期運休となったローカル線では、運転再開後に「利用者が戻ってこない」という傾向があります。陸羽西線の場合、3年8カ月のブランクがあるため、利用者がどれだけ戻ってくるかが懸念事項です。
とはいえ、運休前の利用者数でも代行バスで地域輸送を担えています。「バスは時間がかかる」といっても、並行する高規格道路が開通すれば所要時間は短縮するでしょう。高屋トンネル付近にある高屋駅は、廃止する方針です。バス路線を高規格道路に組み込めば、乗車区間によっては鉄道より早く着くかもしれません。
陸羽西線の利用者を増やすには、観光誘客に注力するのが現実的な解でしょう。沿線地域は少子化・過疎化が進んでおり、普段使いの客は減る一方です。また、起点の新庄駅には新幹線の駅がありますから、観光誘客に適しています。
沿線自治体やJR東日本は、イベントやツアー企画で利用促進に努めています。運転再開後の1月18日には新庄駅で記念イベントを開催。1月25日には、陸羽東西線利用促進協議会が企画した「酒田日本海寒鱈まつりの旅」というツアーを実施します。こうしたイベントやツアーも大事ですが、一過性の観光誘客では全体の利用者数は増えません。沿線地域の魅力を含んだ継続して誘客できる施策も、検討していく必要があるでしょう。
運行再開後も課題が山積の陸羽西線。JR東日本と沿線地域の協力で、存続に向けて取り組んでもらいたいところです。
参考URL
高規格道路 高屋道路(国土交通省東北地方整備局 山形河川国道事務所)
https://www.thr.mlit.go.jp/yamagata/road/takayadoro/
新庄酒田道路(国土交通省東北地方整備局 酒田河川国道事務所)
https://www.thr.mlit.go.jp/sakata/road/sinjosakata/
『陸羽西線運転再開記念イベント』を開催します(JR東日本)
https://www.jreast.co.jp/press/2025/sendai/20251223_s01.pdf
【陸羽東西線利用促進事業】陸羽西線奥の細道最上川ラインで行く「酒田日本海寒鱈まつり」の旅(新庄市)
https://www.city.shinjo.yamagata.jp/k001/030/20241011121319.html
やまがた鉄道沿線活性化プロジェクト 最上ワーキングチームの取組み(山形県)
https://www.pref.yamagata.jp/documents/34190/04_mogamiwt.pdf