【NEWS】岡山電気軌道の路面電車が延伸ループ化へ – 2029年度開業をめざす

岡山電気軌道の路面電車 協議会ニュース

【2026年1月26日】岡山市と岡山電気軌道は、路面電車の軌道を新設し、既存路線とあわせて環状化する事業計画案を公表しました。

新設する軌道は、清輝橋線の大雲寺前電停から東山線の西大寺町電停までの約600m。沿線には2023年に開館した岡山芸術創造劇場「ハレノワ」があり、ここに電停を新設します。これにともない運行形態も見直され、岡山駅を発着する環状線「ハレノワ線(仮称)」が誕生する予定です。なお単線で整備するため、左回りのみの運行としています。

総事業費は27億4,000万円。国の補助金を活用して、岡山市が全額負担します。また、新設する軌道には「みなし上下分離方式」を導入し、岡山電気軌道の運営負担を軽減します。2029年度中の運行開始をめざすそうです。

岡山電気軌道の延伸予定図
▲赤矢印の「延伸環状化」の区間が、事業計画案で決定した。
出典:岡山市「路面電車の延伸環状化(大雲寺前~ハレノワ~西大寺町間)について 事業計画案がまとまりましたのでお知らせします」

【解説】自治体主導で始まった岡山電気軌道の延伸環状化計画

岡山電気軌道は、東山線と清輝橋線の2路線の路面電車を運行しています。現在はJR岡山駅前広場まで延伸する工事が進んでおり、こちらは2027年春に開業予定です。

ただ、いずれの路線も距離が短く、利用できるエリアは限られます。また、国道30号の十日市交差点以北では路線バスが集中。清輝橋線と重複する区間もあり、効率的な公共交通の整理も課題でした。さらに、岡山市が2019年に開いた住民協議では、「岡山駅前広場への乗り入れだけでは効果が限定的」「路面電車のネットワーク拡充が必要だ」といった意見を多く聞かれたそうです。

もっとも、路面電車の延伸計画は1990年代からあったようです。岡山市が政令指定都市になった2010年には、岡山電気軌道が駅東口への乗り入れや環状化など複数の延伸案を提案しています。

こうした課題や声に、岡山市では公共交通の再構築を検討。2016年に公表した「第六次総合計画」には、公共交通のグランドデザインを市が策定することを盛り込みます。そして、2018年に策定した「岡山市総合交通計画」では、岡山駅前広場の乗り入れとあわせて、路面電車の延伸環状化を記載。中心市街地の回遊性向上や都心の活性化を図ることも目的に、計画が本格化したのです。

選定された延伸候補案

岡山市が主導で始めた路面電車の延伸計画ですが、その後、大きく7つの候補路線が示されます。このなかには、2010年に岡山電気軌道が提言した路線案も含まれていました。

ただ、すべての路線を整備するほどの予算はありません。そこで岡山市は、各路線の優先順位を検討。道路交通への影響が比較的小さいなど、解決すべき課題が少ない路線から優先的に整備することになりました。

■延伸計画の候補路線

出典:岡山市路面電車ネットワーク計画

当初、有力とされたのが岡山電気軌道が提案した「市道南方柳町線」などを通る路線案です(地図①②)。岡山駅を起終点とし、市役所や岡山大学病院を経由して清輝橋電停とつなぐループ線で、利用者数は1日あたり5,700人と、候補路線のなかでいちばん多いとされました。

ただ、交通量の多い道路に敷設するため渋滞の激化が懸念されます。また、大規模な用地買収も必要で概算事業費は53億円と見積もられました。このため、市道南方柳町線の案は優先順位が下がります。

一方の国道250号と岡山吉井線を走る「ハレノワ線(地図④)」は、利用者数は1日3,200人程度しかないものの、道路交通への影響が少なく事業費も9億円程度(当時)、費用対効果(B/C)は1.93と比較的高いです。再開発計画が進んでいた岡山芸術創造劇場の前を通ることもあり、「都心回帰のさらなる進展が見込まれる」として優先順位が上がります。

こうした評価の結果、2020年2月に市が策定した「岡山市路面電車ネットワーク計画」には、ハレノワ線が最有力に挙げられ、2021年9月には都市計画が決定します。

なお、概算事業費は軌道の設計・整備のほか道路の改良も必要なことから再算定。総事業費は27億4,000万円と見積もられました。この事業費をめぐって、岡山電気軌道と衝突することになるのです。

費用負担をめぐり岡山電気軌道が反発

都市計画の決定を受け、岡山市は運行主となる岡山電気軌道との協議を始めます。岡山市は当初、延伸ルートの軌道も岡山電気軌道が管理保有する案を提示。また、整備費には国の補助金が受けられることから、国・市・岡山電気軌道がそれぞれ3分の1負担することを提案します。

この案に、岡山電気軌道が反発したのです。

岡山電気軌道の路面電車は赤字続きで、車両の更新にすら柔軟に投資できない状況でした。路線拡大で運賃収入が増えるといっても、新設区間はわずか600m、新規電停は1カ所です。大きな利益が得られるとは考えにくいでしょう。そのうえ、コロナの影響で利用者は減少。岡山駅前の延伸計画も進むなかで、「新規路線の整備にかける予算はない」と伝えます。

費用負担をめぐる交渉が破談となったことで、延伸環状化計画は、いったん保留に。協議が再開したのは、2024年になってからでした。

その間に、国は地域公共交通活性化再生法を改正。路面電車などの新規路線の事業費について、国の補助率が2分の1にかさ上げされました。これを受けて、岡山市は大胆な提案をします。国の補助金を除く残り2分の1の事業費は、岡山市が全額負担すると約束したのです。

また、新設路線には「みなし上下分離」の導入を提示。年間約800万円の想定される軌道の維持管理費を、市が負担すると提言します。さらに、新設路線に課せられる固定資産税(年間約500万円の想定)も市が負担し、事実上の免除としました。

それでも赤字を不安視する岡山電気軌道に、岡山市はさらなる譲歩案を提示します。ハレノワ線が赤字の年は市が赤字額の50%を支援し、逆に黒字の年は岡山電気軌道が黒字額の50%を市へ納付するという条件を追加したのです。これだけの好待遇に岡山電気軌道も納得し、交渉は成立。2026年1月26日に、基本合意書を結びます。

こうして延伸環状化が決まった岡山電気軌道の路面電車。ハレノワ線の開業は、2029年度の予定です。

参考URL

路面電車の延伸環状化(大雲寺前~ハレノワ~西大寺町間)について 事業計画案がまとまりましたのでお知らせします(岡山市)
https://www.city.okayama.jp/shisei/cmsfiles/contents/0000078/78385/01_roden.pdf

岡山市内交通の大改革(両備グループ)
https://ryobi.gr.jp/wp-content/uploads/2010/05/100506-teigen.pdf

路面電車のネットワーク検討について(岡山市)
https://www.city.okayama.jp/shisei/cmsfiles/contents/0000018/18682/000382919.pdf

岡山市路面電車ネットワーク計画
https://www.city.okayama.jp/shisei/cmsfiles/contents/0000020/20369/000399495.pdf

路面電車のネットワーク検討(岡山市都市整備局都市・交通部)
https://www.city.okayama.jp/shisei/cmsfiles/contents/0000018/18682/000399483.pdf

岡山市総合交通計画
https://www.city.okayama.jp/shisei/0000006186.html

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