2026年に想定される赤字ローカル線の存廃協議を予測します。
すでに廃止が確定している線区からこれから協議が始まる線区まで、2025年末時点での進捗状況をまとめました。
廃止・休止が確定している赤字ローカル線

まずは、すでに廃止または休止が確定している赤字ローカル線について、2026年の動きを予想します。
JR留萌本線
2026年3月31日に廃止予定の留萌本線。深川~留萌の部分開業から数えて116年の歴史に幕を閉じるとともに、JR北海道の「赤茶線区(輸送密度200人/日未満の線区)」の問題も、ようやく終止符が打たれます。
代替交通の詳細情報も、2025年3月11日に公表。鉄道の運行本数(14本)より多く、1日あたり20~26本に増える予定です。また、一部の代替バスは深川西高校まで運行し、沿線の通学生の利便性向上も期待されるでしょう。
JR函館本線(長万部~小樽)
北海道新幹線の札幌延伸開業と同時に廃止が確定している、函館本線の長万部~小樽。現在、代替バスの協議が進んでいますが、ドライバー不足の影響もあり公共交通の再構築が難航している模様です。
ただ、ドライバー不足より深刻なのが利用者の減少です。持続可能な公共交通網を構築するには、民間バス事業者だけでなく、スクールバスや病院の送迎バスといった自治体などが保有する交通資産の活用も検討する必要があるでしょう。
なお、貨物列車が走行する函館~長万部は、沿線自治体の並行在来線協議会とは別に、国土交通省と北海道が設置した有識者検討会議でも協議しています。有識者検討会議は、2025年9月3日に中間とりまとめを公表。貨物列車運行のために、鉄道を存続させる方針です。
一方で、旅客に関しては存廃の結論が出ていません。当初、2025年度中に結論を出すとされましたが、新幹線の延伸開業時期が先送りとなったため、在来線の存廃判断も先送りになる可能性があります。
JR津軽線(蟹田~三厩)
蟹田~三厩は、JR東日本と沿線自治体が共同で代替交通の運営会社(NPO法人)を設立する基本合意書を2025年6月10日に締結。同線区は、バスやタクシーの自動車交通に転換される予定です。JR東日本は、設立後18年間の運行経費など約33億円を拠出するとしています。運行会社は2026年度中に設立され、2027年春から新たな公共交通体系がスタートする予定です。
弘南鉄道大鰐線
2024年11月に、大鰐線の「休止」を受け入れた沿線自治体。その後、2025年3月25日に代替交通の検討会議を設置し、ルートなどを2025年度中に固める方針です。なお弘南鉄道は2025年10月2日に、大鰐線の運行休止を正式に発表。運行休止日は2028年3月31日としています。
JR美祢線
2025年8月7日の協議で、沿線自治体はBRT転換を容認。同年10月20日より、ルートや費用負担などを決める法定協議会が始まっています。法定協議会では、国の交付金(社会資本整備総合交付金)の活用を視野に、地域公共交通計画を策定。あわせて、利用促進策などの詳細を定める「利便増進実施計画」も2026年12月末までに策定する予定です。
美祢線のBRT運行開始時期は、計画の決定から2~4年後としており、早ければ2029年ごろになると考えられます。
2026年中に存廃判断が求められている赤字ローカル線

2026年中に存続または廃止の方向性が決まる赤字ローカル線は、以下の路線です。
JR久留里線(久留里~上総亀山)
2024年10月に千葉県君津市やJR東日本などで構成される検討会議が、「自動車交通へのシフト」を提言。これを受けてJR東日本は2024年11月27日のプレスリリースで、久留里~上総亀山の自動車交通への転換を伝えています。
また君津市は、法定協議会の地域公共交通会議で代替交通のルートなどの計画案を策定中。代替バスは1日26本の運行を見込み、鉄道(17本)より増える想定です。この計画案は2026年中にも決定するとみられ、その後、同線区の鉄道の廃止届が提出されます。廃止日は未定です。
富山地方鉄道(本線・立山線・上滝線の一部線区)
当初は2025年中に、各線区の存廃判断を沿線自治体に求めていた富山地方鉄道。ただ、自治体による支援の申し入れにより、協議は2026年も継続することになりました。立山線と不二越・上滝線では、みなし上下分離の導入で全線存続を前提に話し合われる模様です。
本線は、あいの風とやま鉄道と並行する滑川~新魚津の扱いをめぐり、廃止案も浮上しています。沿線自治体は、あいの風とやま鉄道も協議に参加するように要望。2026年は同社を交えた議論が始まるかもしれません。富山地方鉄道は、これ以上の先延ばしはできないとして、2026年中の判断を求めています。
名鉄広見線(新可児~御嵩)
2025年6月に存廃の結論を出すとしていた名鉄広見線の新可児~御嵩ですが、沿線自治体は同年8月25日に、みなし上下分離で鉄道の存続を表明。名鉄との協議を続ける方針を決めました。2027年度からの移行をめざすとしています。
ただ、費用負担や設備投資計画などの検討はこれからで、2025年末の段階では広見線の全線存続が正式に決まったわけではありません。みなし上下分離を導入した場合の自治体負担額は、年間で1億8,000万円。さらに設備更新費などに、約17億円も別途生じるとされています。
ちなみに2026年度は、従来通りの支援(1億円の運営支援)で存続させることを名鉄と合意しています。
錦川鉄道
「現状維持」「(みなし)上下分離方式への移行」「一部廃止・バス転換」「全線廃止・バス転換」の4案から、将来を決めることが示されています。沿線自治体の岩国市は2025年5月13日に、各案の収支予測の試算結果を公表。「上下分離方式(またはみなし上下分離)が、もっとも負担を抑えられる」としています。
岩国市は、存廃を含めた最終判断の時期を決めていません。ただ、現状でも年間1億円以上の支援をしており、早急の決断が求められます。
平成筑豊鉄道
利用者の減少にくわえ、施設の修繕・更新費の高騰、さらに防災対策などで今後毎年10億円前後の赤字が見込まれる平成筑豊鉄道。そのあり方をめぐる協議が、2025年1月31日から始まっています。
平成筑豊鉄道は、今後の運行として「上下分離方式への移行」「BRT転換」「廃止・バス転換」の3案を提示。今後30年間の自治体負担額は、上下分離方式が439億円、BRT転換が148億円、廃止・バス転換が110億円と、2025年11月20日に開かれた協議会で示されています。
協議会では、2025年度中に鉄道の存廃を含めた方向性を決定し、2026年度には地域公共交通計画を作成するとしています。2026年3月末までに、平成筑豊鉄道の将来が決まりそうです。
島原鉄道
2022年に設置された「島原鉄道活性化検討部会」で、鉄道のあり方を議論しています。2024年3月15日の検討部会では、「上下分離方式への移行」「LRTやBRTへの転換」「バス転換」などの選択肢を提示。その後、LRTとBRTは除外され、「上下分離方式への移行」か「バス転換」で検討しています。
このうちバス転換の場合は、ドライバーが20人以上、車両が10台以上不足するという検証結果が報告されており、上下分離方式で鉄道を存続させる案が優勢とみられます。
当初は2024年度中に結論を出す予定でしたが、関係機関との調整に時間を要したとして、結論は2025年度中に出すことになっています。
存廃判断の時期は未定だが事業者と協議中の赤字ローカル線

すでに協議が進んでいるものの、存廃判断の時期が不確定な赤字ローカル線は、以下の路線です。
JR北海道の黄線区
JR北海道の黄線区(輸送密度2,000人/日未満の線区)では、沿線自治体と協力した経営改善計画「アクションプラン」を実行しています。計画最終年度は、2026年度です。
2024年9月4日には、黄線区全体の赤字額を100億円以内にするという「チャレンジ目標」を掲げました(2024年度の実績は約148億円の赤字)。ただ、沿線人口の減少や高規格道路の延伸といった鉄道の利用者数が減る外的要因もあり、「目標達成は厳しい」とみる自治体も多いようです。
2027年春には方向性を決めることになりますが、その後、各線区の存廃協議を始めるため結論がいつ出るかは未定です。
JR米坂線(今泉~坂町)
豪雨災害で今泉~坂町が不通になっている米坂線では、2023年9月より災害復旧協議(JR米坂線復旧検討会議)が始まっています。ただ、復旧後の運行形態をめぐりJR東日本と沿線自治体の意見が対立。協議は難航しています。
JR東日本は、復旧しても年間13億円もの赤字が生まれることから「単独運営は現実的に厳しい」という見解を示しています。そのうえで上下分離方式の案を提示しますが、年間で最大17億円もの自治体負担が生じることから、沿線自治体が否定的です。
ほかにも、第三セクターへの移管や廃止・バス転換も話し合われているものの、山形・新潟両県の意見をまとめるのに時間を要す可能性が高く、2026年中に結論が出ないかもしれません。
JR吾妻線(長野原草津口~大前)
2024年5月に検討会議を設置し、長野原草津口~大前のあり方の協議が始まっています。2025年は吾妻線の代替交通として、北陸新幹線(軽井沢~高崎)を活用した実証実験を実施。通学定期客に新幹線通学をしてもらい、吾妻線の代替手段になるかを検証しました。
これだけで長野原草津口~大前の存廃決断はできないでしょうから、2026年以降も協議や実証実験が続くと思われます。結論が出る時期は未定です。
長良川鉄道(一部線区)
施設修繕費の増加などで自治体支援が限界に近づいているとして、一部線区の廃止を示唆した沿線自治体。2025年3月26日の沿線5市町首長会議では、存廃を含めた検討を始めることを確認し、同年4月から事務レベルでの協議が始まっています。
なお、廃止が検討される線区は2025年末時点で決まっていない模様です。また、存廃の判断時期も明確にしていません。
JR芸備線(備中神代~備後庄原)
2024年3月から国の再構築協議会が始まった芸備線。当初「3年を目安に結論を出す」とされましたが、先行きは見通せない状況です。
2025年は「芸備線の可能性を最大限追求する」として、増便やダイヤ変更などさまざまな実証事業を実施。また2026年度は、バスを活用した実証事業もおこなう予定です。ただ、実証事業後の協議をどのように進めるのかは見通せず、協議の目安とされる3年後(2027年)までに結論が出るのかは不透明な状況です。
JR指宿枕崎線(指宿~枕崎)
芸備線と同じく「鉄道の可能性を追求する」ことを目的に、沿線自治体とJR九州との議論が2024年8月より始まっています。2026年は、鉄道がもたらす経済波及効果の調査をおこなう予定で、それにともない住民アンケートも実施する予定です。また、貨客混載やサイクルトレインなどの実証事業も計画しています。
なお、検討期間は決めておらず、いつ、どのような結論が出るかは不明です。
JR日南線(油津~志布志)
2025年10月31日に「日南線(油津・志布志間)の将来を考える会議」の初会合が開催。鉄道のあり方をめぐる協議が始まっています。初会合では、同線区の現状をJR九州が説明し、「現状のままでは当社単独で運営し続けることは厳しい」と指摘。一方の沿線自治体は、学生の移動手段や観光ニーズに鉄道が貢献していることなどを伝えました。
指宿枕崎線と同じく、日南線の協議も検討期間を決めていません。2026年は、利用実態調査の実施などを予定しています。
存廃協議が始まる予定の赤字ローカル線

事業者側が沿線自治体に協議を申し入れ、または伝えている赤字ローカル線は、以下の路線です。
JR大糸線(糸魚川~南小谷)
沿線自治体とJR西日本が協議する振興部会で「本格的な利用促進を実施し、その結果次第であり方の議論を始める」ことを確認。2024年4月より、さまざまな利用促進に取り組んでいます。
しかし、糸魚川~南小谷の輸送密度は150人/日(2024年度)と低迷。この状況に2025年10月31日に開かれた振興部会で、新潟・長野の両県は「持続可能な路線としての方策について議論するための準備を始める」ことで意見が一致し、2026年度よりあり方の協議を始めることが確認されました。協議はまず事務レベルで話し合い、その後、首長クラスの協議が始まるとみられます。
紀州鉄道
2025年11月に「鉄道事業の譲渡先を探している」と報道され、事業撤退が表面化した紀州鉄道。これに対して沿線自治体の御坊市は、和歌山県なども交えた協議体の設置を検討していると、2025年12月10日の市議会で明らかにしています。協議の具体的な内容などは未定ですが、2026年にも協議が始まる模様です。
JR木次線(出雲横田~備後落合)
2024年7月にJR西日本は沿線自治体に対して、出雲横田~備後落合のあり方の協議を申し入れています。2025年4月22日には、沿線自治体を対象とした説明会を開催しますが、「どのような場で議論すべきか」といった具体的な進め方も、まだ決まっていないようです。
沿線自治体のなかには芸備線でも協議を進めているところもあります。JR西日本は「現段階では、国の再構築協議会を設置する予定はない」としていますが、話がこじれると再構築協議会に移行する可能性もあるでしょう。今後の動きが注目されます。
JR四国の一部線区
JR四国では、2021年度から沿線自治体と一緒に「5カ年推進計画」を実行しています。計画の目標指標は「2019年度の輸送密度(四国全線)」です。これを達成できなければ「事業の抜本的な改善方策に関する検討」を始めるとしています。2025年度は計画の最終年度で、2026年3月末までに国に報告することになっています。その返答によっては、一部線区の存廃議論が始まるかもしれません。
JR四国では、西牧前社長の時代に「予土線」「予讃線の海回り区間」「牟岐線の一部」で、あり方の協議を申し入れる意向を示しています。2025年末時点で申し入れた線区はないようですが、2026年度はいずれかの線区で協議が始まる可能性があります。
JR肥薩線(人吉~吉松)
八代~人吉の復旧が確定している肥薩線ですが、人吉~吉松については何も決まっていません。JR九州は2024年3月に「人吉~吉松の協議も始めたい」と発表。その後、熊本・宮崎・鹿児島の3県知事は「鉄道での復旧」で考えは一致したようですが、2025年末時点でJR九州との協議は始まっていません。
ちなみに、2025年8月の豪雨災害で長期不通となった吉松~隼人について、JR九州は「2026年6月末ごろの運転再開を目指す」と、2025年11月27日の社長定例会見で伝えています。
JR加古川線(西脇市~谷川)は存廃協議を回避か?
大阪・関西万博の開催期間中に取り組む利用促進の効果がなければ、存廃協議を始めるとしていた加古川線の西脇市~谷川。JR西日本は2025年12月24日に、取り組みの結果を公表しています。それによると、輸送密度や乗車人員はいずれも増加。なかでも定期客は、前年度の1.5倍近くまで増えています。
一定の効果が現れたことから、JR西日本は存廃協議の申し入れを撤回するかもしれません。とはいえ、輸送密度は350人/日(2025年4月~10月)、各駅乗車人員の合計は146人で、厳しい状況です。JR西日本がどう判断するかは、2026年に開かれる「JR加古川線(西脇市―谷川間)維持・利用促進ワーキングチーム会議」で示される予定です。
赤字ローカル線の廃止を防ぐためにできることは?
赤字ローカル線の存続には、自治体の「熱意」が重要なカギを握ります。この場合の熱意とは、「国の制度が使えるかを建設的に議論し、鉄道を維持するために行動すること」を指します。
国は、赤字ローカル線の維持に活用できる、さまざまな制度を用意しています。たとえば、2025年度よりみなし上下分離へ移行した北陸鉄道には、社会資本整備総合交付金という制度を活用し、今後15年間で約57億円を国が支援します(沿線自治体の負担は約75億円)。また、JR只見線で上下分離方式を採用している線区(会津川口~只見)でも、同じ交付金で国が約19億円、自治体が約48億円を支援して2025年から10年間を維持することになっています。富山地方鉄道や小湊鉄道、肥薩おれんじ鉄道などでも、この交付金の活用により鉄道の存続をめざしています。
ほかにも国は赤字ローカル線に対する支援制度を用意していますが、鉄道事業者に対して国が直接支援する制度はありません(完全民営化していないJR各社に対する一部制度を除く)。制度を活用できるのはあくまで自治体であり、「自治体も一緒に支援する」のが基本です。
自治体にも支援が求められるのは、受益者負担の考えにもとづくから。鉄道が廃止になると、事業者などが納める固定資産税が減ったり、代替交通の準備や赤字補てんのために歳出が増えたりと、自治体の財政が悪化するのは明白です。ただ、この負担を裏返すと鉄道が存続することで自治体が得ていた「便益」という見方もできます。
大して利用者のいない赤字ローカル線でも、なくなるといちばん困るのは沿線自治体です。だから国は支援制度を用意して、地域が本当に必要なローカル線を守るために、沿線自治体と一緒に支援していくことを求めているわけです。
どの制度を活用するのか、それを使いこなすには自分たちに何ができるのかを考えることが、国を動かす最短のルートです。それを理解したうえで赤字ローカル線の価値を正しく把握し、沿線住民にも理解と協力を求めていくことが大切でしょう。
とはいえ、国の制度を活用しても存続できない赤字ローカル線があることも事実です。国の制度は、施設や車両の更新、交通系ICカードの導入といった投資に関するものがほとんどで、運行経費に対する補助はありません。多くの赤字ローカル線は、運行経費すら賄えないのが現状です。毎年何千万、何億もの運行赤字の補てんは基本的に沿線自治体の負担であり、これを財政基盤の弱い自治体が支援していくのは非現実的でしょう。
であれば、どんな支援制度があれば鉄道を維持できるのかを自治体が具体的に示し、国に求めることも必要ではないでしょうか。ひとつやふたつの自治体が訴えても国は見向きもしないでしょうから、知事会や市長会、町村会が連名で運行経費に対する支援制度の新設などを訴えていくのも一手です。
いまさら国鉄分割民営化の検証を国に求めたところで、利用者が減っていく状況は変わらないし、赤字額が減るわけでもありません。過去の検証も大切かもしれませんが、それよりも、いまある鉄道という資産をどのように活用するのかを考えたほうが有益です。
ローカル線の現状を受け入れたうえで、「鉄道を維持するために自分たちには何ができるのか」「まちづくりや地域振興につなげる活用法はないか」を未来志向で考える。それが、本気で鉄道を残そうと頑張る自治体がやってきたことであり、廃止が懸念される赤字ローカル線を存続させる唯一の手段ではないでしょうか。
























