【2025年5月1日】木次線利活用推進協議会は、木次線を使ったグループ旅行者向けの補助金の拡充を決めました。
拡充されたのは「木次線でGo!」という補助金制度です。協議会ではこれまでもJRの運賃のほか、駅からの貸切バス・タクシー・レンタカーといった二次交通の運賃や料金にも補助してきましたが、2025年度からは二次交通分の補助金を拡充します。
補助金の上限額は、1件あたり10万円(補助率は2分の1)。このうち二次交通分の上限額は1件あたり5万円ですが、出雲横田~備後落合を利用する場合は1件あたり7万円に拡充されます。
利用条件は「3人以上のグループで、木次線を3区間以上乗車すること」。補助対象区間は木次線全線のほか、山陰本線(安来~飯浦)、芸備線(備中神代~広島)、山口線(益田~津和野)も含まれます。運賃のほか、あめつちのグリーン車指定席料金や一部特急列車の料金も補助対象です。
協議会では二次交通分の補助拡充について「より多くの場所を訪れてもらえる」として、木次線の利用を呼び掛けています。なお、補助金の利用には7日前までの申し込みが必要です。
【解説】攻めた補助金制度で利用促進を図る木次線の沿線自治体
利用促進を目的に、運賃の一部を補助するローカル線の沿線自治体が増えています。なかには、運賃の半分を補助したり特急料金も補助したりする自治体もあり、鉄道事業者の割引きっぷよりお得になるケースもあるようです。
ただし、特定路線・線区の利用促進を目的とした補助金のため、一般の旅行客はともかく地元の人でも使いづらい制度も多いようです。たとえば、特定線区内で乗降する場合に限られたり、駅からの二次交通は補助対象外であったりと、さまざまな制約があります。
こうしたなかで木次線利活用推進協議会では、独自の制度で比較的に利用されやすい補助金を用意しています。一例として、部活を含む学校行事で木次線を利用する学生には運賃を全額助成したり、社会人の団体旅行には半額助成するなど、沿線住民向けの補助金制度が充実しています。
「木次線でGo!」も、ユニークな補助金制度です。まず対象者は「中国地方の5県を旅行する3人以上のグループ」であること。木次線の沿線住民以外の人も、補助が受けられます。とりわけ広島から芸備線で移動する方なら、JRの運賃全額が補助対象です。また、山陰本線の益田~安来から移動する方なら、「スーパーおき」「スーパーまつかぜ」の運賃・特急料金も補助されます。
さらに、貸切バスやタクシー、レンタカー、レンタサイクルといった二次交通の利用料金が補助されることもポイントです。たとえば、木次線の駅から観光施設へ向かう際に貸切バスやタクシーを使うときは、その運賃にも補助が受けられます。鉄道の運行本数が少ない区間をタクシーなどで移動する場合も、補助対象になるでしょう。
「木次線でGo!」は、鉄道のみを使う「線」で移動する人だけでなく、沿線の観光施設なども訪問したい「面」で移動する人にも使いやすい補助金制度なのです。
とはいえ、利用するにはハードルが高いのも事実です。そのひとつが「木次線を3区間以上乗車すること」。時間帯によっては1本逃すと3時間待ちという木次線で、最低3回乗降しなければなりません。また補助対象の二次交通は、島根県内の貸切バス・タクシー・レンタカー・レンタサイクルです。路線バスは含みません。貸切バスは自分で手配するか、旅行代理店に手配してもらう必要があります。
さらに面倒なのが、「事前申し込みと実績の報告が必要なこと」。申込用紙(実施計画書)などの書類は、木次線利活用推進協議会のホームページからダウンロードできます。その用紙に旅程のほか運賃や料金、補助対象額を自分で計算して7日前(厳密には土日祝日を除く7営業日前)までに提出しなければなりません。
しかも、旅行を終えた後には「実績報告書」を作成して領収書(写し)と一緒に送り、それを協議会が確認した後で補助金が支払われます。つまり、旅行代金は先に全額を支払い、実績報告書を送った後で補助対象額がキャッシュバックされるしくみです。
このフローは、他の自治体が用意する補助金制度でも同じです。その手続きの手間を考えると「マイカーで行ったほうが楽だよね」と考える人のほうが多いでしょう。役所の事務処理の関係で必要な流れであることは理解できますが、もう少し手続きを簡素化しなければ利用促進の効果につながらないのではないかと感じます。
なお、木次線の存廃をめぐっては2024年7月にJR西日本が出雲横田~備後落合のあり方について協議を申し入れており、2025年4月には沿線自治体に対して事前説明会をおこなったようです。運賃や料金が安くするだけでローカル線の利用者を増やす施策は、難しいのかもしれません。
※木次線沿線自治体が取り組んでいる利用促進策や、JR西日本との協議については、以下の記事で詳しく解説します。