【2025年4月22日】青森県は、県内の鉄道3事業者と沿線自治体などが参加する「青森県ローカル鉄道連携会議」を設立しました。構成メンバーは、青い森鉄道、弘南鉄道、津軽鉄道、沿線自治体と青森県。オブザーバーとしてJR東日本も参加します。
初会合の冒頭では、各事業者が現状の課題を説明。利用者の減少に歯止めがかからない実態や、人材の高齢化、車両の老朽化などの課題が共有されました。そのうえで、利用促進の取り組みや安全対策の訓練などを共同で実施することを提言。JR東日本に対しては、技術面での協力や人材支援などを求めています。
今後は実務担当者レベルで具体的な取り組みが検討され、今夏から実行に移される予定です。
【解説】青森県の鉄道事業者や沿線自治体が連携した新組織が誕生
弘南鉄道と津軽鉄道は2021年2月に、「青森県民営鉄道利用促進協議会」を立ち上げ、利用促進の取り組みなどを連携して進めました。ただ、事業者だけの取り組みには限界があります。現に弘南鉄道では、大鰐線の利用者が増えず事実上の廃止が決まっています。
そこで青森県は、青い森鉄道や沿線自治体などに呼びかけ、今回の「青森県ローカル鉄道連携会議」を設立。各事業者と自治体が連携することで、利用促進や安全対策などの実効性を高めようとした模様です。
具体的な取り組みは今後の協議で検討されますが、この日の会議でもいくつか提言されています。そのひとつが、弘南鉄道の提言する「脱線防止の合同訓練」です。
弘南鉄道では2023年8月に、大鰐線で脱線事故が発生。国の運輸安全委員会から管理不備を指摘されたほか、長期運休による運賃収入の減少が大鰐線の廃止の一因になりました。こうした事故を防ぐには、他社の技術を学ぶことも大事です。そこで、JR東日本と青い森鉄道が合同で実施している事故防止の訓練会への参加を要望。技術面での協力を得ることで、安全対策の強化につなげたい考えです。
ほかにも、利用促進イベントの連携も検討していくようです。ただ、一過性のイベントで利用者を増やすのは難しいでしょう。JR各社のデスティネーションキャンペーンのような長期スパンのイベントを、3社合同で実施してほしいところです。あるいは、津軽鉄道のストーブ列車を他の事業者で走らせるといったイベント列車のコラボレーションも、面白いかもしれません。
会議では、鉄道施設の修繕に協力を求める意見も出たようです。これについて、ハピラインふくいや福井鉄道などでやっている資材の共同調達や工事の一括発注が参考になるでしょう。福井県の各事業者の事例では経費削減効果が認められており、より効率的な運用が期待できます。
青森県の各事業者の連携によるパフォーマンスを向上させるには、沿線自治体や青森県の支援も大切です。事業者の課題を一緒に解決しながら、ローカル線を盛り上げてほしいところです。
その他の鉄道協議会ニュース
阿武隈急行の「みなし上下分離」導入を検討へ
【2025年4月25日】阿武隈急行線再生支援協議会が会合を開き、阿武隈急行の経営改善策のひとつとして「みなし上下分離の導入」も検討することが確認されました。
この日、同社の経営改善策を検討してきた有識者の検討会が提言書を提出。沿線人口の減少や交流人口が希薄といった理由で、「現状では鉄路の維持は困難」と報告しています。そのうえで、自治体が鉄道施設の維持管理費を支援する「みなし上下分離」への移行も検討が必要と指摘しています。
この提言を受けて協議会では新たな分科会を設け、阿武隈急行を交えて具体的な検討を進める方針です。
※阿武隈急行と沿線自治体とのこれまでの協議の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。
JR陸羽東線沿線の住民・団体による新協議会が発足
【2025年4月21日】宮城県大崎市は、陸羽東線の維持をめざす観光団体や住民グループなどが参加した、新たな協議組織を設立しました。この組織は「陸羽東線地域活動協議会」で、10の団体で構成されます。
この日の初会合では、沿線の魅力発信の強化やイベント実施などのアイデアが出されたようです。協議会の会長を務める大崎市の伊藤市長は「まずは陸羽東線に乗ってみる。陸羽東線を通じて参加してもらえるきっかけをつくりたい」と述べています。
※陸羽東線の存続をめざす大崎市の取り組みは、以下の記事で詳しく解説しています。
山口県のJR沿線自治体が利用促進の取り組みを報告
【2025年4月24日】山口県のJR沿線自治体が、ローカル線の利用促進の取り組みを報告する会議を開きました。
この会議で山陽小野田市からは、小野田線の通学定期券で路線バスに乗車できるモニター実験の取り組みを報告。山陽小野田市の担当者は「地域の足を維持していくうえで、自治体の役割もある。一時的な取り組みではなく、いかにして恒常的な利用につなげるか。そこに注力していきたい」と語りました。
また、会議に参加したJR西日本からは「地域の移動手段をどのように確保していくのか。その手段を総動員し、支えていくことが大事」と述べ、継続的な利用につながる取り組みを要望したようです。
JR肥薩線の山線復旧にJR九州「費用負担も議論したい」
【2025年4月25日】JR九州の古宮社長は定例会見で、長期不通となっている肥薩線の人吉~吉松(通称:山線)について、費用負担のあり方も議論したいという考えを示しました。
人吉~吉松の復旧協議をめぐっては、熊本・宮崎・鹿児島の3県の知事が参加意向を示しており「鉄道での復旧」を求めています。ただ、同線区は利用者が極端に少なく年間3億円前後の赤字であることから、古宮社長は「当社が復旧・運行する線区なのか、出口を決めず議論したい」と述べています。
また、八代~人吉(通称:川線)より先に復旧する可能性について、古宮社長は「利用者のほとんどが川線から通過しており、川線が再開しないと山線も再開できない」と、山線の先行復旧を否定しています。