週刊!鉄道協議会ニュース【2024年8月11日~8月17日】

成田空港のモーダルシフト事業に協力したJR貨物 協議会ニュース

今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、JR貨物などがモーダルシフト実証実験をおこなうために協議会を設置した話や、福島県田村市が列車のダイヤに合わせたフレックスタイムを導入したニュースなどをピックアップしてお伝えします。

成田空港でモーダルシフト実証実験 – JR貨物などが新協議会発足

【2024年8月14日】成田国際空港(以下、成田空港)とJR貨物、日本フレートライナー(以下、日本FL)の3社は、「成田空港モーダルシフト推進協議会」を設立し、モーダルシフトに関する実証実験を始めると発表しました。

この実証実験は、関西エリアで生産された海外向け製品の輸出について、百済貨物ターミナル駅(大阪市東住吉区)から東京貨物ターミナル駅(東京都品川区)までを、JR貨物が輸送するというもの。現状では、関西から成田空港までトラック輸送する荷主が大半ですが、その一部を鉄道で代替することによりCO2排出削減やドライバー不足などの問題を解決できるとしています。

実証実験は、2024年8月から翌年2月まで実施。効果検証などをおこなったうえで、2025年度の本格運用開始をめざしています。

【解説】航空貨物の荷主が鉄道へのモーダルシフトを避ける理由

「成田空港モーダルシフト推進協議会」は、成田空港がJR貨物と日本FLに呼びかけて発足した組織です。このうち日本FLは、鉄道貨物輸送に関わる業務を請け負う、JR貨物のグループ会社です。

さて、モーダルシフトが叫ばれて久しいですが、航空貨物を利用する荷主の多くは、遠方でも空港までの輸送をトラックに依存しています。その理由のひとつが、「鉄道だと輸送コストが高くなるから」です。

鉄道は大量輸送を得意とする交通モードですから、大ロットの荷主には安く利用できます。北海道で生産された食糧を本州以南に輸送するとき、ホクレンなどの荷主は「輸送コストが安い」から鉄道を利用するわけです。このためJR貨物は、大量輸送を前提とした「コンテナ単位」の契約が基本になっています。

一方の航空貨物は、軽量で高価値な製品など、小ロットの荷主に適しています。航空貨物の荷主からみれば、たとえ遠方の空港でもトラックで十分運べる量だし、JR貨物とコンテナ契約をすると輸送コストが割高になってしまいます。つまり、トラックのほうが「合理的で安い」から、鉄道へのモーダルシフトが進みにくい状況だったのです。

こうした事情を踏まえ成田空港は、1つのコンテナに複数の荷主の貨物を混載する「LCLサービス」を立案。小ロット(1パレット単位)でも利用できる新たなサービスをJR貨物に提案します。共同輸送にすることで輸送コストを抑えられ、航空貨物の荷主でも利用しやすくしたわけです。

今回の実証実験(Rail to NARITA LCLサービス)の内容ですが、まず関西の集荷拠点に運び込まれた荷主の製品を、日本FLが鉄道コンテナに積み込んで百済貨物ターミナル駅まで運びます。その後、JR貨物が東京貨物ターミナル駅まで輸送。東京貨物ターミナル駅では、日本FLが成田国際空港周辺のフォワーダー施設に輸送し、その施設で製品を卸して空港まで運び、海外へ輸出されるという流れです。

■実証実験(Rail to NARITA LCLサービス)の概要

成田空港のモーダルシフトの概要

なお、この実証実験は国のモーダルシフト等推進事業費補助金の交付対象になっています。協議会では、「この補助金により料金が安くなる」と、荷主に対して利用を呼びかけています。

その他の鉄道協議会ニュース

宮崎県がモーダルシフト推進の補助金を新設

【2024年8月14日】宮崎県は、県内を出発する船舶や鉄道の貨物輸送を利用する事業者に対して、港湾や貨物駅までの高速道路利用料金の一部を補助すると発表しました。

補助対象となるのは、宮崎の緑ナンバーの事業用車両を保有する貨物輸送事業者です。その事業用車両で宮崎県の港湾または貨物駅まで荷物を運ぶ際に、東九州自動車道などの有料道路を利用するとき、利用料金の2分の1を補助するというものです。県内を出発地とすることも条件で、到着した船舶や鉄道からの輸送には適用されません。

宮崎県は、モーダルシフトの推進と、高速道路利用による輸送力の向上を図りたいとしています。

JR磐越東線のダイヤにあわせたフレックスタイム導入 – 田村市

【2024年8月14日】福島県田村市は、磐越東線の利用促進の一環で、列車のダイヤに合わせた市職員の時差出勤を導入しました。これは、2024年3月に磐越東線活性化対策協議会で出た案を、事業化したものです。始業時間は7:30、8:00、8:30、9:00の4つの勤務体系となり、磐越東線で通勤しやすくなります。

市の担当者は福島民友の取材に対して、「一度乗ってみようと列車で通勤した職員もいる。民間企業や他自治体でも取り組みが広ってほしい」と語っています。

※磐越東線の利用促進などを話し合う協議会の進捗状況は、以下のページで詳しく解説しています。

西九州新幹線の「幅広い協議」が8月23日に再開

【2024年8月13日】佐賀県は、西九州新幹線の未整備区間をめぐる「幅広い協議(第8回)」を、8月23日に開催すると発表しました。幅広い協議は、佐賀県と国土交通省が未整備区間の整備方法やルート案などを議論する場で、2020年6月に始まりました。しかし、議論は平行線をたどり、2023年2月9日の第7回を最後に開催されていません。

この協議はこれまで公開で実施してきましたが、「まるっきり公開の場では一枚もカードは切れない」と国の関係者から聞いたことを、6月21日の定例県議会で議員が報告。これを受けて8月23日に開催される協議は、一部を除き非公開で実施される予定です。佐賀県の担当者は「佐賀県から非公開での開催を提案し、今回の開催となった。県としてはいつでも協議する用意はある」と話しています。

※西九州新幹線の未整備区間をめぐる、佐賀県と国土交通省の「幅広い協議」の流れは、以下のページで詳しく解説しています。

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