週刊!鉄道協議会ニュース【2024年9月8日~9月14日】

函館駅 協議会ニュース

今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、JR函館駅の新幹線乗り入れ構想について函館市が「フル規格で東京・札幌との直通運行をめざす」考えを示した話題や、JR豊肥本線の輸送力向上について熊本県とJR九州が一部区間の複線化を検討している話など、さまざまなニュースをピックアップして紹介します。

JR函館駅の新幹線乗り入れ構想「フル規格で整備」を基本方針に

【2024年9月9日】函館市は、北海道新幹線の函館駅乗り入れ構想について「フル規格」で整備する基本方針を、市議会総務委員会で明らかにしました。

新幹線の函館駅乗り入れ構想をめぐっては、フル規格やミニ新幹線などの整備方式や、新函館北斗駅での連結・分割について、市が2024年3月に調査結果を報告。輸送力や経済波及効果など総合的に判断した結果、「フル規格で東京・札幌との直通運行(新函館北斗駅の連結・分割なし)」をめざす方針で固めたようです。

また、追加の必要がある車両の購入費について、函館市はJR北海道に負担を求めない考えも提示。調査結果で示した事業費(157~169億円)には車両購入費を含んでいないことから、今後、市議会の委員会で関係機関とも議論し判断していくとしています。

【解説】はこだてライナーの存続にも影響する「函館駅乗り入れ構想」

北海道新幹線の函館駅乗り入れ構想は1990年代から存在し、函館市にとって「悲願」でもあります。1994年7月には、市議会で新幹線の乗り入れを決議。当時の道知事も「函館駅への乗り入れは北海道が責任を持つ」という覚書を交わしています。

しかし、函館~新函館北斗は国の整備新幹線スキームに含まれないため、建設費は地元で負担しなければなりません。これに北海道が難色を示し、2005年当時の道知事が約束を反故。不満を表した函館市は「新幹線の着工を認めない」「経営分離後の在来線(現・道南いさりび鉄道)に支援しない」など、北海道との確執を生むことになります。

結果的に、函館~新函館北斗の在来線を電化して「はこだてライナー」を運用する代替案で、この問題は解決。ただ、新幹線の駅がない函館市からみると「札幌まで延伸開業すれば、新函館北斗駅で乗り換えが必要になる」などの不利益を被るとして、函館駅への乗り入れを求め続けています。

さて、函館~新函館北斗の在来線は、北海道新幹線が札幌まで延伸開業するとJR北海道から経営分離され、函館市などが出資する第三セクターに移行します。2024年9月現在では鉄道の存続について正式に決まっていませんが、2018年度の輸送密度は4,000人/日を超えており鉄道を存続させたほうが適切でしょう。

ただ、函館~新函館北斗は赤字線区です。北海道新幹線並行在来線対策協議会が示した函館~新函館北斗の赤字額は、経営分離初年度が約3億9,000万円。その後も4億円以上の赤字を毎年生み続け、開業後30年間の累計赤字額は320億円を超える試算結果が示されています。沿線自治体にとって大きな負担であることは、いうまでもありません。

では、函館~新函館北斗にフル規格の新幹線を整備すると、どうなるのか。2024年3月に函館市が示した調査結果によると、最大2億2,300万円の黒字になるとしています(JR北海道が営業主体の上下分離方式で線路使用料なし、新函館北斗駅での連結・分割なしの場合)。

さらに、地域に与える経済波及効果は130億円前後。およそ160億円の事業費や車両購入費(1編成あたり40~50億円)を函館市が負担しても回収できそうですし、在来線の赤字もカバーでき函館~新函館北斗は安泰と考えられます。

なお、この試算結果は「東京から1日5本、札幌から1日8本の新幹線が函館駅に乗り入れる」という前提でシミュレーションしています。東京~札幌が1日何往復設定されるかは未定ですが、一部列車を函館駅までスイッチバックさせることにJR北海道が納得するのかも、乗り入れ構想の実現に欠かせないポイントです。

また、函館市の財政力も懸念事項です。いくら経済波及効果が大きいとはいえ、人口減少が続き財政悪化をたどる函館市が、数百億円もの事業費を拠出できるのか、さらに新函館北斗駅がある北斗市の理解が得られるかなど、技術面以外の課題のほうが大きいと感じられます。

こうした課題をどのようにクリアしていくのか、函館市の動きに注視したいところです。

その他の鉄道協議会ニュース

弘南鉄道大鰐線への支援は年内に判断 – 弘前市

【2024年9月12日】弘前市は、弘南鉄道大鰐線に対する2026年度以降の公的支援について、2024年内に判断する考えを示しました。これは、弘前市議会の一般質問で市が答えたものです。

大鰐線への支援は2025年度までは決まっていますが、それ以降に関しては「2023年度末の経営状況を確認して決める」と、経営改善を前提にした支援計画の基本方針が示されています。ただ、実際には経営は改善されず、存続を求める弘前市と大鰐町の首長は基本方針の見直しを求めていました。

これについて弘前市は「基本方針の判断基準に変更はない」と伝えたうえで、弘南鉄道が年内に策定予定の中長期計画を確認後、支援の有無を判断するとしています。

※弘南鉄道大鰐線に対する支援内容や協議の進捗状況は、以下のページで詳しく解説しています。

JR津軽線廃止予定区間の跡地は沿線自治体に無償譲渡へ

【2024年9月12日】JR東日本は、津軽線の廃止予定区間(蟹田~三厩)の用地について、沿線自治体へ無償で譲渡する方針を明らかにしました。これは青森県などの要望を受けての対応で、外ヶ浜町と今別町の事業に必要な用地については「不要な踏切や駅舎などの鉄道施設を確認してもらっている」と、すでに協議を進めていることも伝えています。

また、鉄道廃止後の地域公共交通を任される新たなNPO法人の設立について、社員を派遣するなどJR東日本の参画方法を検討していることも明らかにしています。

※津軽線(蟹田~三厩)の廃止が決まるまでのJR東日本と沿線自治体との協議は、こちらのページで詳しく解説しています。

JR豊肥本線の輸送力向上「一部区間の複線化」も検討へ

【2024年9月11日】熊本県は、利用者が急増している豊肥本線について、一部区間の複線化も検討していることを明らかにしました。

豊肥本線は全線が単線ですが、台湾の大手半導体メーカー進出などの影響もあり、熊本~肥後大津の利用者が急増。同区間の輸送密度は12,889人/日(2023年度)で、コロナ禍前の2019年度(11,465人/日)より増えています。また混雑率は121%(2023年度)で、JR九州のなかで最混雑区間です。さらに、同線区を利用した熊本空港アクセス鉄道計画も進んでおり、今後も増加が見込まれています。

こうした状況に熊本県とJR九州は、輸送力向上など豊肥本線の機能強化が必要として協議を開始。増便や増結、快速列車の運行などを検討するなかで、一部区間の複線化も議題に挙がったようです。これについてJR九州は、現時点で決まったことはないとしたうえで「豊肥本線の機能強化は重要だと認識している。熊本県と協議しながら検討したい」とコメントしています。

大規模災害時の交通機能を維持するために – 秋田県で検討会を設立

【2024年9月10日】秋田県は、大規模災害時の交通機能の維持を目的とした検討会を立ちあげました。この検討会は、大地震や水害などで鉄道や道路が被災した際に、代替輸送の確保や迂回路の誘導などについて関係機関が話し合う会議で、国土交通省が設立を進めています。秋田県でも近年は、豪雨災害などで交通機関に影響が出るケースが増えていることから、交通事業者や有識者などを交えた検討会を設立。この日は、他県の事例などを共有したそうです。

秋田河川国道事務所の松本所長は「緊急車両の通行を優先しながら交通の混乱が起きないよう、さまざまな状況を想定して災害に備えたい」と述べています。今後も年1回のペースで定例会を開き、関係機関との連携を強化していくそうです。

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