週刊!鉄道協議会ニュース【2024年10月20日~10月26日】

JR久留里線の久留里駅 協議会ニュース

今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、JR久留里線の久留里~上総亀山の存廃をめぐる検討会議が開かれバスやタクシーを中心とした「自動車交通が適切」という報告書をまとめた話や、弘南鉄道への公的支援を左右する中長期計画が沿線自治体に提出された話題など、さまざまなニュースをお伝えします。

JR久留里線の検討会議が自動車交通転換を推奨する報告書提出へ

【2024年10月21日】JR久留里線の久留里~上総亀山の「あり方」をめぐる沿線地域交通検討会議が開催され、今後の方向性を示す報告書をまとめました。報告書には、鉄道は移動需要に対して「輸送力が過剰」と指摘。バスとタクシーを組み合わせた自動車交通のほうが、地域ニーズに適した交通体系を実現できると結論付けています。

この報告書にもとづいてJR東日本に対しては、沿線地域に適した新たな交通体系の検討を要望。その結果を受けて、今後は君津市が設置する地域公共交通会議で、久留里~上総亀山の存廃について最終結論を出すことが確認されました。

会議後の記者会見で、JR東日本は「これまでの議論を踏まえ現在より利便性の高い交通手段を検討していきたい」と述べています。

【解説】久留里線(久留里~上総亀山)の新たな交通体系はどうなる?

「JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議」は、JR東日本の申し入れを受け、2023年5月に始まった千葉県主宰の会議です。構成メンバーは、千葉県、君津市、JR東日本、有識者代表、そして3人の住民代表です。住民代表を参加させることで沿線の声を反映しやすくなり、また代表を中心に住民説明会やアンケート調査を実施するなど、地域が積極的に関わることも目的とした会議でした。

こうした地域の声も踏まえて、今回開催された検討会議では最終的な報告書がまとめられます。なお報告書は2024年10月26日現在で、千葉県のホームページに掲載されていません。ここでは、報道された内容をもとに解説します。

報告書では、沿線地域の交通モードを「鉄道」「バス」「デマンド交通」にわけて整理したようです。

このうち鉄道に関しては現状、ピーク時の移動需要が平日は最大15人ほど、休日は最大20人ほどしか利用されていないと指摘。沿線地域は人口減少が進み今後も増加が見込めないことから、鉄道は「輸送力が過剰」としています。

バスに関しては、運行ルートを柔軟に設定できるため、今後の検討で「有力な選択肢」とされました。ただ、バスでも供給過多になるほど利用客が少ない点や、ドライバー不足などの課題を検討会議は指摘。鉄道より運行本数を増やしつつ、通勤通学など一定の需要がある時間帯に走らせるといった解決策を、関係者で協議するように伝えています。

デマンド交通は現在、君津市が運行する事前予約タクシー「きみぴょん号」があります。これを活用することで、買物や通院などの散発的な需要を満たせるそうです。ただ「予約が取りにくい」という住民の声もあり、デジタル技術を活用して効率的な運行の検討を求めています。

以上から、通勤通学には「バス」、日常利用には「デマンド交通(タクシー)」という自動車交通中心の公共交通体系が望ましいという結論が出されたそうです。この結果を踏まえて、JR東日本が中心となり新たな公共交通体系の検討に入ります。

新たな公共交通体系の参考例として、JR津軽線の廃止予定区間で検討している「路線バスとタクシーの共同ビジネス」も一手でしょう。これは、JR東日本と沿線自治体が共同で新法人を設立し、バスとタクシーを一括運営する新事業です。既存事業者がそれぞれ運営するより人員や車両を効率化できることや、自治体負担額を抑えられるといったメリットが期待されています。

また、沿線地域には日東交通と千葉中央バスが運行する高速バス「カピーナ号」が運行しています。カピーナ号は現状、乗降制限の区間があるため、これを該当線区では撤廃することにより鉄道の代替を果たすことも可能でしょう。

検討会議は今回が最後です。報告書は君津市に提出され、久留里~上総亀山の存廃議論は君津市が主宰する「地域公共交通会議」に移ります。

※JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議のこれまでの流れは、以下のページで詳しく解説しています。

その他の鉄道協議会ニュース

弘南鉄道への支援可否を決める「中長期計画の見直し案」が提出

【2024年10月22日】弘前市の桜田市長は定例記者会見で、弘南鉄道に求めていた「中長期計画の見直し案」が市に提出されたことを明らかにしました。

中長期計画は、弘南鉄道が2021年に策定。沿線自治体は、この計画にもとづいて弘南鉄道に対する公的支援を決めています。計画期間は10年間でしたが、利用者の減少が続く大鰐線については2023年度末の経営改善状況を確認し、改善されない場合は2026年度以降の支援を打ち切ることも約束していました。

しかし、2023年度末時点で目標値を3,000万円も下回り、大鰐線の経営は悪化しています。弘前市などの一部自治体は「コロナ禍など社会状況に変化があった」として、弘南鉄道に中長期計画の見直しを要請。その案を確認したうえで、2026年度以降の支援について沿線自治体と協議するとしています。

桜田市長は「弘南鉄道からの説明を受け、関係自治体と協議をしたうえで、早い段階で方向性を決めたい」と述べています。

※弘南鉄道が経営不振に陥った理由や、沿線自治体との協議の流れは、以下のページで詳しく解説しています。

釧網線と花咲線で3日間乗り放題のフリーパス販売

【2024年10月23日】JR北海道は、釧網線と花咲線が3日間乗り放題になる「釧網線/花咲線フリーパス」を発売しました。このフリーパスは、利用促進実証事業の一環で沿線自治体などの補助金が活用されています。

利用区間は、釧網線フリーパスが釧路~網走、花咲線フリーパスが釧路~根室です。発売期間は2024年10月25日~2025年3月29日ですが、補助金が上限に達した段階で終了になります。利用期間は、2024年11月2日~2025年3月31日です。

価格は、釧網線フリーパスが4,100円、花咲線フリーパスが3,000円。小学生以下は半額になります。

「国際鉄道事故調査フォーラム」が東京で開催

【2024年10月23日】鉄道の安全性向上をめざす国際組織「国際鉄道事故調査フォーラム(RAIIF)」の第1回会合が、東京で開催されました。この会合は、航空や船舶の事故調査のように、鉄道の事故調査も国際機関による公的枠組みを設けようと、日本の呼びかけで発足したものです。

第1回となる今回は、シンガポールやスウェーデンなど11の国と地域から調査機関や鉄道事業者が参加。事故調査の事例や安全の取り組みについて、意見交換がされました。また、事故調査などの情報を共有するためのネットワーク強化や、各国の調査機関が技術協力していくことも確認されています。

議長を務めた運輸安全委員会の奥村鉄道部会長は「鉄道事故をなくすには、事故調査のレベルを上げることが重要。日本の先進事例を含め、各国の情報を共有していく場にしたい」と語っています。なお、来年は台湾で開催されます。

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