週刊!鉄道協議会ニュース【2024年5月19日~5月25日】

津軽線廃止区間の駅 協議会ニュース

今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、JR津軽線の沿線自治体が一部区間の廃止を容認したほか、JR吾妻線で協議開始のニュースや、JR西日本が木次線の協議を示唆するなど、さまざまな出来事を取り上げます。

JR津軽線(蟹田~三厩)の廃止が事実上決定 – 今別町が方針転換

【2024年5月23日】JR津軽線の災害復旧を検討する第3回JR津軽線沿線市町村長会議が開かれ、JR東日本と青森県、沿線自治体は、蟹田~三厩の復旧を断念することで合意しました。

同線区をめぐっては、今別町が復旧・存続を主張していましたが、代替交通への転換を容認。他の自治体からも異論はなく、蟹田~三厩の廃止が事実上決定しました。今別町の阿部町長は、復旧への思いは変わらないとしながらも「今別町が鉄道にこだわり続けても、他の自治体や今別町のためにはならない」と述べ、苦渋の決断だったと伝えています。

すでに廃止を容認していた外ヶ浜町の山崎町長は、今別町が代替交通への転換を認めたことに対して「これからは両町が手を携えて前向きに話し合いたい。沿線住民の意見も聞きつつ、鉄道のほうがよかったと思われないような交通体系を作りたい」と語りました。今後は新しい交通体系の議論を進めながら、蟹田~三厩の廃止手続きも進める予定です。

【解説】JR東日本が示した「新たな交通ビジネス」が廃止容認の転機に

利用者が極端に少ない路線で災害復旧を検討する際、JR各社は復旧費用よりも「復旧後の赤字額」を重視します。

津軽線(蟹田~三厩)の場合、1日の利用者数は100人弱。約6億円の復旧費用はJR東日本が負担することを、第1回今別・外ヶ浜地域交通検討会議(2023年1月18日に開催)で明言しました。しかし、同区間の年間赤字額は約7億円。これを毎年負担し続けるのは難しいとして、JR東日本は「上下分離方式を採用して鉄道を存続させるか」「バスやデマンド交通に転換するか」のいずれかが妥当であると提案します。

この提案に対して、沿線自治体は「支援はできない」「廃止も容認できない」と主張。外ヶ浜町が廃止容認に方針転換した後も、今別町は一貫して主張が変わりませんでした。

議論は平行線をたどるなか、転機となったのがJR東日本が示した「新たな交通ビジネスの創設案」でした。この案でJR東日本は、地域のバス事業者とタクシー事業者を統合し、効率的な運用をすることで持続可能な地域公共交通をめざすと提言。新事業者の設立準備資金や設立後18年分の赤字補てんなどは、JR東日本が負担すると約束します。

その後、今別町は青森県と協議。「鉄道の廃止はやむえない」と青森県が態度を明らかにしたことも、今別町が津軽線の全線復旧を諦める一因になったようです。今後は、新たな公共交通計画を話し合いながら、2025年度内の新事業者設立をめざすとしています。

※沿線自治体とJR東日本との協議の流れや、津軽線の復旧・存続を断念するまでの経緯は、以下のページで解説しています。

その他の鉄道協議会ニュース

JR吾妻線(長野原草津口~大前)の「あり方」協議がスタート

【2024年5月23日】JR東日本と群馬県など沿線自治体が協議する「JR吾妻線(長野原草津口・大前間)沿線地域交通検討会議」の初会合が開催されました。この会議でJR東日本は、長野原草津口~大前の利用状況や収支などを説明。利用者の約8割が通学定期客であることから、長野原町と嬬恋村に住む高校生と保護者を対象とした住民アンケートを実施することで合意します。

協議は期限を設けず、また存続や廃止という前提を置かずに開始。協議に参加した群馬県の山本知事は「地域住民にとって便利で快適な交通サービスを提供するために、県としては中立的な立場で調整に努めたい」と述べています。

※JR吾妻線の沿線自治体や群馬県がこれまで取り組んできた利用促進などは、以下の記事で詳しく解説します。

肥薩おれんじ鉄道が運賃値上げへ

【2024年5月20日】肥薩おれんじ鉄道は、鹿児島県の沿線自治体が組織する利用促進協議会で、運賃を値上げする考えを明らかにしました。値上げ幅については検討中とのことですが、燃料費や人件費などの高騰により現在の運賃体系では維持困難になっているそうです。

また、2023年12月には鹿児島県の全市町村で構成される市町村振興協会が「肥薩おれんじ鉄道に対する支援は2027年まで」と期限を区切られたこともあり、収支改善も値上げの目的とみられます。値上げの実施時期は2024年度中とされ、国に認可されると2004年の開業以来初(消費税増税を除く)となります。

※肥薩おれんじ鉄道の経営状況や沿線自治体の取り組みについては、以下の記事で詳しく解説します。

木次線の「あり方」協議を申し入れる考えを表明 – JR西日本

【2024年5月23日】JR西日本は、木次線の出雲横田~備後落合について、沿線自治体に協議を申し入れる考えを明らかにしました。山陰支社の佐伯支社長は定例記者会見で「できるだけ早く沿線自治体に伺い、協議の進め方などを相談したい」と語っています。また、国の再構築協議会については「選択肢の一つだが、前提ではない」と述べています。

これに対して沿線自治体は「廃止が前提であれば応じられない」という共通認識を示したうえで、広島県の湯崎知事は「具体的な説明があれば、島根県などと一緒に対応を検討していく」とコメント。島根県の丸山知事は「木次線は県民の生活にも鉄道ネットワークの形成にも重要な路線」と述べ、広島県などの意見を確認したうえで対応する方針です。

国土交通相の斉藤大臣は24日の閣僚会議後の会見で、JR西日本に対して「丁寧な合意形成に努めるよう期待している」と助言したうえで、「関係者が十分に議論して連携・共働を図り、最適な交通手段を維持・確保することが重要だ」と述べています。

※木次線の沿線自治体がこれまで取り組んできた利用促進などは、以下の記事で詳しく解説します。

鉄道員の体験イベントをふるさと納税の返礼品に

【2024年5月22日】茨城県高萩市は、ふるさと納税の返礼品に「JR職員の体験イベント」を企画。人気を集めているようです。高萩市にはJR常磐線の車両保守基地があり、イベントなどでも一般開放されています。ふるさと納税の返礼品では、車内放送の体験や災害時に運用される「レールスター」の運転体験などができ、鉄道ファンの納税者に好評だったようです。

家庭ごみの貨物輸送を検討 – 函館市

【2024年5月23日】北海道函館市は、市のごみ焼却施設の改修工事にともない、札幌市の焼却施設まで貨物列車で家庭ごみを輸送することを検討しています。

函館市のごみ焼却施設は今年から2028年度まで改修工事がおこなわれ、その間は北斗市に委託する予定ですが、処理力に限界があるとして札幌市にも委託。トラックによる輸送はドライバー不足のため難しく、JR貨物に家庭ごみの輸送を委託したそうです。

現在、函館市と札幌市が協議しており、話がまとまれば廃棄物専用コンテナを使い輸送を始めるとしています。輸送量は、1日最大約12トンの予定です。

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