週刊!鉄道協議会ニュース【2024年7月28日~8月3日】

西九州新幹線の武雄温泉駅 協議会ニュース

今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、西九州新幹線の未整備区間について国の検討委員会が沿線自治体などにヒアリングした話題や、美祢線の沿線自治体が鉄道の「あり方」を話し合う新たな検討部会を設置したことなど、さまざまなニュースをピックアップして紹介します。

西九州新幹線の未整備区間 国の委員会が沿線自治体にヒアリング

【2024年7月30日】政府・与党整備新幹線検討委員会は、西九州新幹線の未整備区間を含めた沿線自治体やJR九州に対してヒアリングを実施しました。

西九州新幹線の未整備区間をめぐっては、国土交通省と佐賀県との「幅広い協議」や、佐賀県・長崎県・JR九州の「三者協議」でも議論されています。しかし、意見の食い違いから議論は平行線をたどり続けています。

こうした状況に、6月19日に開かれた同委員会で「当委員会でも沿線自治体などへヒアリングするのが大事ではないか」という意見が出たことを受け、今回のヒアリングが実施されました。ヒアリングは、7月24日と30日に実施。対象者は、佐賀県・長崎県・JR九州・沿線自治体(佐賀市・嬉野市・大村市・長崎市)です。

ヒアリング後、同委員会の森山委員長は、「九州全体のために西九州新幹線をどうするかという観点から議論したい」と述べ、佐賀県・長崎県・JR九州が実施している三者協議に対しては「必要があれば、国を交えた協議で前進させていくことが大事だ」と伝えています。

【解説】各自治体・JR九州の主張まとめ

政府・与党整備新幹線検討委員会が実施したヒアリングで、各自治体およびJR九州の主張をまとめます。

佐賀県の主張(南里副知事)

  • 国がFGTの開発を断念したから、「追加で多額の財政負担をしてほしい」「在来線の不利益も受け入れてほしい」と言われている。これを佐賀県は、簡単に受け入れられない。
  • もともと、新鳥栖~武雄温泉は在来線の活用で合意した。フル規格に変更するなら、地元で新たな合意形成を図るのが本来の議論のあり方だ。
  • 西九州新幹線の開業区間で、佐賀県にプラスとマイナスの影響があった。
  • 「県民の意見はどうか」と委員会から質問があった。さまざまな意見があり、まとまっていないと伝えた。
  • (今後の進展・打開策について)非常に難しい。FGT断念から問題が始まっており、佐賀県から「こうしてほしい」という要望は、正直ない。長崎県やJR九州、国でもいいが、(代替案を)出していただきたい。

佐賀市の主張(坂井市長)

  • 在来線の問題、財政負担、ルートなど、さまざまな論点がある。多角的な視点で、佐賀市の事情に向き合って議論してほしい。
  • FGTを断念したことで、異例な事態が生じている。こうした特殊な事情も踏まえて、佐賀のために何ができるかを考えてほしい。

長崎県の主張(大石知事)

  • 人口が減少するなかで、関西などの大都市圏とつながることは必要不可欠だ。
  • FGT開発を断念した経緯から、建設費の地方負担の軽減を要望した。
  • 地方負担ひとつとっても、法令で決まっている。地方だけでは解決できない課題もあるため、国も含め関係者を集めた協議を開催してほしい。

新幹線開業区間の沿線自治体の主張

  • 佐賀県全体のことを考えると、佐賀駅を通るルートが適している。佐賀県が高速鉄道網から取り残されないためにも、新鳥栖~武雄温泉をフル規格で整備してほしい。(嬉野市・村上市長)
  • 新幹線の開業が、人口増加の要因のひとつになった。将来の公共交通のあり方という観点でも、新幹線の重要性は増している。佐賀県にも、ぜひ理解してほしい。(大村市・園田市長)
  • 2024年10月には、スタジアムシティが開業する。こうした街の変化は、西九州新幹線がなければ実現できなかったこと。(長崎市・鈴木市長)

JR九州の主張(古宮社長)

  • 九州新幹線の鹿児島ルートが全線開業した際に、博多~熊本の利用者が増えた。
  • (ルートについて)白紙からもう一度考え直したが、人が多く住みバスの拠点でもある佐賀駅を通るルートが、県民の皆さまも利用しやすく、いちばん適している。
  • 委員会からは、在来線への影響を懸念する質問もあった。新鳥栖~武雄温泉の在来線は通勤通学の利用者が多く絶対に残すべき線区であり、普通列車に関しては現在の本数を維持したいと伝えた。
  • 新幹線と在来線特急の構成は、今後考えなければならない。特急「みどり」は残るかもしれないし、「かささぎ」もある。利用状況を見ながら、在来線と新幹線の組み合わせを検討したい。
  • (三者協議について)話し合いをするのはいいことだと思う。

政府・与党整備新幹線検討委員会の見解(森山委員長)

  • 「のんびり議論していられない」というのが、委員会の共通認識。難しい課題だと思うが、できるだけ早く地元の協議(三者協議)をしてほしい。必要があれば、国も入って前進させることも大事だ。
  • 西九州ルートは佐賀県のためだけにあるのではない。九州全体の浮揚のために、新幹線をどうするかという観点で議論を進めたい。
  • 佐賀県からは「(国土交通省との)幅広い協議」にも応じる考えを聞いている。今後も進むと思う。
  • (地元負担について)ほかの自治体も、これまで負担してきた。地域が今の枠組みを望まないのであれば、法改正をしてまで「やる必要がない」と思う。

※上記コメントの参考記事は、このページ下部の「参考URL」をご覧ください。

※佐賀県と国土交通省との「幅広い協議」について、これまでの流れは以下のページで詳しく解説しています。

その他の鉄道協議会ニュース

JR美祢線利用促進協議会で「復旧検討部会」の設置を容認

【2024年7月30日】JR美祢線利用促進協議会が臨時総会を開催し、協議会のなかに「復旧検討部会」の設置を承認しました。この部会は、JR西日本が美祢線の存廃を含めた「あり方」の協議を求めていたのに対して、設置されるものです。

部会で検討される具体的な内容としては、JR西日本が提示する美祢線の復旧費用や運行経費の詳細などを確認するほか、鉄道以外の輸送モードのコストや利便性、潜在ニーズも調査。それぞれのメリット・デメリットを整理する予定です。なお、検討部会は意思決定機関ではないため、結果はJR美祢線利用促進協議会に報告。その後、協議会で存廃議論がおこなわれるとみられます。

美祢市の篠田市長は「費用だけでなく、地域の持続可能性を含めた議論をしていく。早期に検討部会を開催したい」と述べています。

※美祢線の沿線自治体とJR西日本との復旧協議の流れは、以下のページで詳しく解説しています。

弘南鉄道への支援継続に他自治体から厳しい意見が噴出

【2024年7月30日】弘南鉄道活性化支援協議会が開催され、黒石市や平川市などの市長から弘南鉄道への支援に対する厳しい意見が相次いだようです。

この協議会に参加する沿線自治体は、大鰐線に対する2026年度以降の支援について「2023年度末までの経営状況を確認してから決める」という基本方針を2021年に策定していました。しかし、経営状況は改善せず、弘前市と大鰐町は基本方針の見直しを求めています。

これに対して平川市の長尾市長は、「このまま支援を続けていいのかという議論もある。基本方針に沿って支援を決めるべきだ」と主張。黒石市の高樋市長は「大鰐線と弘南線をわけて、それぞれしっかり議論すべきだ」と、支援のあり方について言及しました。

一方、弘前市の桜田市長は「弘南鉄道が見直し中の中長期計画を確認したうえで、判断したい」という考えを示すとともに、「地域の足を守ることを大前提に議論していきたい」と述べています。

※弘南鉄道大鰐線に対する支援内容や協議の進捗状況は、以下のページで詳しく解説しています。

北陸鉄道への支援計画 15年間で約132億円に

【2024年7月30日】石川中央都市圏地域公共交通協議会は、みなし上下分離の導入が決まった北陸鉄道の長期的な事業計画を公表しました。

計画では、喫緊の課題となっていた車両の更新をはじめ鉄道施設の更新については、国の社会資本整備総合交付金を活用。沿線自治体の支援額をあわせると、2025年度からの15年間で113億4,000万円になる見通しです。また、線路や駅といった鉄道施設の維持管理にかかる経費のうち、修繕費などは石川県と沿線自治体が支援。2025年度からの15年間で、自治体負担額は約18億9,000万円になります。

公的支援が決まったことを受け、北陸鉄道は「鉄道の持続可能性が高まり感謝している。利便性を向上させるなどして、地域の重要な足を守っていきたい」と述べています。

※北陸鉄道石川線の存続が決まるまでの経緯は、以下のページで詳しく解説しています。

JR城端線・氷見線に導入する新型車両について意見交換

【2024年7月29日】城端線・氷見線再構築会議は、城端線・氷見線に導入する新型車両のデザインや仕様について、意見交換をしました。城端線・氷見線再構築会議は、両線が2029年にあいの風とやま鉄道に移管するのにあわせて交通系ICカードの導入や車両更新などの利用促進策を検討する会議で、2024年4月から開催されています。

7月29日の第2回会議では、新型車両について検討。車両のタイプについて、電気式気動車、ハイブリッド気動車、蓄電池駆動電車、燃料電池車の4種類が議題に上がったようです。また、車両のデザインはJR東海や相模鉄道の車両が参考資料として提示されています。

次回の会議では車両の仕様について決めるほか、城端線・氷見線の直通化についても議論される予定です。

※城端線・氷見線の協議の流れは、以下のページで詳しく解説しています。

参考URL(西九州新幹線の関連記事)

西九州ルート巡る与党委で佐賀市長 財政負担踏まえた議論要請(NHK佐賀 2024年7月24日)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/saga/20240724/5080017609.html

西九州新幹線の未着工区間の整備は? 与党検討委が沿線自治体から意見聴取(テレビ長崎 2024年7月24日)
https://www.fnn.jp/articles/-/733743

<新幹線長崎ルート>JR九州・古宮洋二社長「話をやっていくのはいいこと」 山口祥義知事との意見交換に前向き(佐賀新聞 2024年7月24日)
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1286849#goog_rewarded

九州新幹線西九州ルート・三者協議に国も加わる考え示す(テレビ長崎 2024年7月30日)
https://www.fnn.jp/articles/-/736639

新幹線与党検討委ヒアリング2回目 未整備区間巡り意見(読売新聞 2024年7月31日)
https://www.yomiuri.co.jp/local/saga/news/20240730-OYTNT50176/

<新幹線長崎ルート>全線フル規格整備後の在来線特急 JR九州社長、存続の可能性に言及(佐賀新聞 2024年7月31日)
https://www.saga-s.co.jp/articles/-/1291271

新幹線西九州ルート 与党PTが佐賀・長崎両県などの意見聴取(朝日新聞 2024年7月31日)
https://www.asahi.com/articles/ASS7Z3TF7S7ZTOLB00NM.html

新幹線西九州ルート 与党PTヒアリングで森山委員長「必要であれば国も交えた協議を」(長崎国際テレビ 2024年7月31日)
https://www.nib.jp/nnn/news10649ywhob2se88pygk.html

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