週刊!鉄道協議会ニュース【2024年6月30日~7月6日】

木次線 協議会ニュース

今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、JR西日本や平成筑豊鉄道が「鉄道のあり方」の協議を沿線自治体に申し入れた話題や、JR美祢線の沿線自治体が復旧・維持に関する新たな部会設置を準備している話など、各路線の存続・廃止に関わる動きを中心にお伝えします。

木次線の沿線自治体にJR西日本が存続・廃止の協議を申し入れ

【2024年7月4日】JR西日本山陰支社の金岡支社長は、木次線の沿線自治体に対して「鉄道のあり方」に関する協議を申し入れました。対象線区は出雲横田~備後落合です。

JR西日本は、6月中に佐伯前支社長が島根県と広島県を訪問。後任となる金岡支社長が7月2日に庄原市、4日に奥出雲町を訪問し、すべての関係自治体に協議の申し入れを終えました。このうち奥出雲町の仲佐副町長は、地元メディアの取材に対して「危機感を持って受け止めている。他の沿線自治体と協力しながら利用促進に取り組みたい」と述べています。

【解説】新たな協議組織の設置を求めたJR西日本の意図は伝わったのか?

JR西日本ではこれまで、沿線自治体に「鉄道のあり方」の協議を申し入れる際に意思疎通がうまくできておらず、意図せぬ方向に話が進む協議が続いていました。最近でも、大糸線や美祢線の協議会において利用促進の話が中心となり、まちづくりや公共交通の再編などの協議ができないという失敗を繰り返しています。

もっとも、申し入れた場が利用促進を目的とした組織でしたから、「利用促進以外の話はしない」と沿線自治体が拒否しても、致し方ない部分がありました。

こうした失敗を繰り返さないために、木次線の協議申し入れに関しては、「鉄道のあり方」に特化して話し合う新たな組織の設置を沿線自治体に要請。支社長が自ら自治体に出向き、木次線の現状説明や地域公共交通体系について相談したい考えを伝えたそうです。

ただ、奥出雲町の仲佐副町長が「利用促進に取り組みたい」と発言したことからもわかるように、木次線の沿線自治体は「鉄道の存続を前提」に協議に臨む姿勢です。協議会を設置するのは自治体ですから、利用促進を目的とした協議会にして「JR西日本の思い通りにはさせない」という戦略を取ることも考えられます。

なお、木次線は国の再構築協議会の対象路線です。新たな協議の場で「鉄道のあり方」の話ができなくても、芸備線のように再構築協議会に持ち込めます。このことは、広島県などの沿線自治体も認識しているでしょう。沿線自治体がどのような協議組織を立ち上げるのか。そして、JR西日本がどのような手段で話を進めるのか。今後の動きが注目されます。

※木次線の沿線自治体がこれまで取り組んできた利用促進策などは、以下のページで詳しく解説しています。

その他の鉄道協議会ニュース

平成筑豊鉄道が沿線自治体に法定協議会の設置を要請

【2024年7月5日】平成筑豊鉄道は「鉄道のあり方」に関する法定協議会の設置を、沿線自治体に要請しました。

平成筑豊鉄道は、2023年度の決算が約5億2,000万円の赤字でしたが、2026年度以降は鉄道施設の更新などにより年間10億円前後の赤字が続くと見込まれています。一方、沿線自治体などの支援額は年間で約3億円。現在の支援では足りません。こうした状況から平成筑豊鉄道は、「鉄道のあり方」について沿線自治体と協議する考えを示していました。

7月5日に要請を受けた福岡県田川市の村上市長は、地元メディアの取材に対して「各自治体の事情もあるが、しっかり議論して適切な移動手段を確保したい」と述べています。また、福岡県の服部知事は7月2日の記者会見で「存続・廃止の前提を置かずに議論することが重要。鉄道の存続が難しければ、地域の足をどうするのか検討しなければならない」と、鉄道以外の交通モードへの転換も視野に入れる考えを示しています。

※平成筑豊鉄道と沿線自治体のこれまでの協議や、利用促進の取り組みなどは、以下のページで詳しく解説しています。

JR美祢線で「鉄道のあり方」をめぐる新たな部会を設置へ

【2024年7月4日】山口県美祢市の篠田市長は、市議会の特別委員会で「美祢線のあり方」に関する検討部会の設置を伝えました。この検討部会は、2024年5月に開催されたJR美祢線利用促進協議会で、JR西日本が「単独での復旧・運行は難しい」として、復旧後の運営も含めた協議を求めたのを受けて設置されるものです。美祢線は2023年7月の災害で、現在も全線不通になっています。

篠田市長は、復旧の話し合いを進めるには新たな部会の設置が必要なことを伝えたうえで、「JR西日本の言い分と、われわれの言い分をぶつけ合うことも必要。地域にふさわしい公共交通を検討しながら、地元の要望をきちんと伝えていく」と述べています。

※美祢線の沿線自治体とJR西日本との復旧協議の流れは、以下のページで詳しく解説しています。

ひたちなか海浜鉄道が延伸へ向けJR東から車両購入

【2024年7月3日】ひたちなか海浜鉄道は老朽化した車両の代替として、JR東日本から3両の気動車を購入すると発表しました。購入する車両は、大船渡線や北上線で運用しているキハ100形気動車です。3両のうち1両は観光列車として運行する予定で、デザイン案などは今後検討するとしています。なお、車両の購入費には国と県、ひたちなか市の補助制度を活用しています。

ひたちなか海浜鉄道では現在、阿字ケ浦からひたち海浜公園まで3.1kmの延伸計画を進めています。このうち公園南口付近までの1.4kmについては、2030年度の延伸開業をめざしており、これを見据えて観光列車用の車両を購入したことも明らかにしています。購入した車両は整備終了後、2024年度中にも運行が始まる予定です。

※ひたちなか海浜鉄道の延伸計画や、利用促進に関する取り組みなどは、以下のページで詳しく解説しています。

宗谷本線「抜海駅」も廃止へ

【2024年7月1日】北海道稚内市は、2021年度から市が維持管理をしている宗谷本線の抜海駅について、来年度以降は管理費を負担しない意向をJR北海道に伝えました。稚内市によると、抜海駅の管理費は年間で約54~90万円。1日の利用者数は3人以下で、駅の廃止後は代替バスの運行を検討しています。宗谷本線では、幌延町でも雄信内駅と南幌延駅の廃止を受け入れており、2025年3月のダイヤ改正では抜海駅を含め3駅が廃止になる予定です。

弘前市で公共交通の「サブスク実験」を検討

【2024年6月30日】弘前市は、市内の鉄道やバスを定額で乗り放題にする「サブスク」の実証実験をおこなう考えを示しました。この案は、有識者や交通事業者などで構成される弘前市の公共交通会議で示されたものです。具体的には、市内の高校生などを対象とし、弘南鉄道や弘南バス、乗り合いタクシーなど市内のすべての公共交通が定額で乗れるというものです。

弘前市は7月にも検討部会を設置して利用方法や料金などを検討する予定で、実験開始は2025年になる見通しです。

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