【NEWS】富山地方鉄道への財政支援「運行委託」の3億円は見送りで減便へ

富山地方鉄道の駅 協議会ニュース

【2025年2月5日】富山地方鉄道への支援を議論する検討会が開かれ、富山県と沿線7市町村は約2億円の財政支援を決めました。県と沿線自治体で2分の1ずつ負担するとしています。

富山地方鉄道は、燃料費などの物価高騰に対する支援として約2億円、さらに運行費の赤字補てんにあたる「運行委託」として約3億円の計5億円を沿線自治体に求めていました。このうち、物価高騰に対する支援の約2億円が今回の検討会で決まりましたが、運行委託の約3億円については、富山地方鉄道の経営改善が見込めないとして見送られました。

この結果に富山地方鉄道は地元メディアの取材に対して、今春のダイヤ改正で減便をするなど、経営改善を進めていく考えを示しています。

【解説】「運行委託」の見送りで一部線区の廃止も検討か?

コロナの影響で経営が悪化した富山地方鉄道に対して、沿線自治体は2024年2月に勉強会を立ち上げ、支援のあり方について協議してきました。同年11月には富山県も参画した検討会が発足。「みなし上下分離」への移行を視野に、富山地方鉄道に対する財政支援の協議を続けています。

ただ、みなし上下分離を導入すると事業費は総額で約600億円という試算結果もあり、富山県の新田知事は「相当の覚悟が必要であり、丁寧な議論が必要だ」という考えを伝えます。一方で富山地方鉄道はコロナ禍以降、億単位の赤字が毎年続いており、早急な経営改善が求められています。

そこで検討会は、支援のあり方が決まるまでの数年間、単年度で支援することを確認。富山地方鉄道は、運賃値上げなどの経営努力をする一方で、2025年度は年間5億円の財政支援を沿線自治体に求めます。支援の内訳は、物価高騰に対する支援が約2億円、運行費の赤字補てんにあたる「運行委託」が約3億円です。

このうち、2025年2月5日に開かれた検討会では、物価高騰に対する約2億円の支援が決定します。しかし、運行委託の約3億円は見送られたのです。沿線自治体は、このほかにも富山地方鉄道に対してさまざまな支援をおこなっており、「これ以上の支援は難しい」という判断があったと推測されます。

この決定に、富山地方鉄道の長瀬取締役などは会合後の記者会見で「非常に残念。休日を中心にダイヤを調整させていただく」と答え、今春のダイヤ改正で減便する考えを示しています。

また、北日本新聞(2025年2月6日)によると、検討会の前に開かれた実務者会議で、富山地方鉄道が「自社で安定経営できる線区」を説明したそうです。その線区は、電鉄富山~上市(本線)、寺田~五百石(立山線)、稲荷町~月岡(不二越・上滝線)です。それ以外の線区は、自治体から十分な支援がないと「廃止も検討する」という姿勢を示したそうです。つまり、以下の線区は「自社だけで安定運行できない」と伝えたことになります。

■富山地方鉄道が安定運行できないとした線区

・上市~宇奈月温泉(本線)
・五百石~立山(立山線)
・月岡~岩峅寺(上滝線)

これを受けて検討会では、沿線自治体が全線存続を要望。2026年度以降の支援のあり方については、「本線」と「立山線 ・不二越・上滝線」にわけた分科会を設置し、議論していくことが確認されます。2025年度に関しては「運行委託」が見送られたものの、2026年度以降は、分科会の話し合いによっては支援が得られる可能性もあるでしょう。

とはいえ、沿線自治体の支援にも限界があります。富山市の藤井市長は「可能な限り支えるが、経営努力でできることもあり、しっかり運行してほしい」と、検討会後の記者会見で語っています。また、2月7日に開かれた県議会の特別委員会でも「経営状況の開示が必要だ」といった意見が議員から出ており、富山地方鉄道の経営努力の足りなさに疑問を持つ声もあるようです。

鉄軌道王国・富山でも「いくらでも支援する」というわけにはいかず、さらなる自助努力が求められた富山地方鉄道。2026年度以降も全線存続できるのか、今後の動きが注目されます。

その他の鉄道協議会ニュース

JR美祢線復旧検討部会「鉄道以外ならBRTが適当」

【2025年2月3日】JR美祢線復旧検討部会が開かれ、JR西日本は「鉄道以外の復旧方法」に関する復旧概算費用と工期を示しました。具体的には、BRTで復旧する場合の費用は約55億円、工期は3~4年としています。またバスの場合、営業所の設置などの費用として約9億6,000万円、工期は1~2年です。なお、費用負担は国、自治体、JR西日本で3等分される予定ですが、自治体負担には地方交付税が充てられ実質負担額はBRTが3億7,000万円、バスが6,000万円になる見込みです。

そのうえでJR西日本は、BRTは速達性や定時性が優れているなどの理由から、「鉄道以外で復旧するならBRTが適当」と伝えたようです。また、鉄道以外の方法であればJR西日本が復旧後の運行費(年間約2億5,000万円)を負担することとしています。

復旧検討部会は今回が最後となり、復旧方法を決める議論は、JR美祢線利用促進協議会に移ります。

※美祢線の復旧をめぐるJR西日本と沿線自治体との協議の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。

錦川鉄道は「みなし上下分離」が負担最小と報告 – 岩国市

【2025年2月3日】山口県岩国市は、錦川鉄道のあり方について「みなし上下分離が市の負担をもっとも抑えられる」と伝えました。岩国市は、「現状維持」「上下分離方式などへの移行」「一部線区の廃止」「全線廃止・バス転換」の4案で収支をシミュレーション。それぞれのメリット・デメリットもあわせて比較検討しました。

具体的な支援額は公表されていませんが、現状維持と比べて「みなし上下分離」のほうが支援額を抑えられるという試算結果が示されたそうです。また「一部路線の廃止」は、鉄道とバスの両方に費用がかかるため負担がもっとも大きくなりました。「全線廃線・バス転換」の場合、費用はもっとも安くなるものの、利便性の低下が懸念されるとしています。

岩国市は、4案の収支シミュレーションを報告書にまとめ、2025年度にも存続・廃止の方針を決める予定です。

※錦川鉄道に対する沿線自治体の支援内容や、存続・廃止をめぐる協議の流れは、以下の記事で詳しく解説します。

岩手県のJR6路線で利用促進の計画策定を確認

【2025年2月6日】岩手県とJR沿線15市町が、路線存続に向けた対策会議を開きました。対象路線は山田線、釜石線、大船渡線、花輪線、北上線、八戸線の6路線です。会議冒頭で佐々木副知事は「自治体との連携を強めて、さらなる利用促進に取り組んでいきたい」と述べました。

会議では、通学定期購入費の助成やイベント実施など、これまで沿線自治体が実施してきた利用促進について共有。宮古市からは「観光に特化した取り組みを進めたい」という意見が、また花巻市からは「バリアフリー化など利用しやすい駅にする」といった意見が出たようです。

そのうえで、今後数年にわたる利用促進計画を各路線で策定することを確認し、これから策定するとしています。

JR烏山線などの「利用促進チャレンジ」を開始 – 那須烏山市

【2025年2月3日】 栃木県那須烏山市は、烏山線などの公共交通機関の利用を促す「公共交通チャレンジ月間」を始めました。

市ではこれまでにも、約250人の職員に烏山線の利用を呼びかける「チャレンジウィーク」を実施してきましたが、効果は限定的だったようです。このため、本格的に実施しようと、2025年2月の1カ月間をチャレンジ月間に制定。列車の到着時間にあわせた4つの時差出勤制度(フレックスタイム)を導入し、試験運用を始めています。また、チャレンジ月間の終了後にはアンケート調査をおこなう予定です。

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