【小湊鉄道】自治体との連携を強化した「房総横断鉄道計画」とは?

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小湊鉄道の列車 私鉄
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小湊鉄道は、千葉県の五井と上総中野をつなぐ鉄道事業と、路線バスや観光バスを運営するバス事業を中心に、公共交通サービスを提供する会社です。バスの利益で鉄道の赤字を穴埋めする、地方私鉄の典型的な経営構造ですが、鉄道事業も頑張っておりコロナ禍前は減価償却を除くと黒字経営を保っていました。

そんな小湊鉄道が自治体との連携を強める要因になったのが、「房総横断鉄道」計画です。沿線自治体と鉄道事業者によって組織された「房総横断鉄道活性化協議会」について紹介しましょう。

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小湊鉄道の線区データ

協議対象の区間小湊鉄道線 五井~上総中野(39.1km)
輸送密度(1987年→2019年)2,319→1,073
増減率-54%
赤字額(2019年)5,843万円(鉄道事業のみ)
※輸送密度および増減率は1987年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

市原市、いすみ市、大多喜町、千葉県、千葉県観光物産協会、小湊鉄道、いすみ鉄道、国土交通省ほか

小湊鉄道と沿線自治体

小湊鉄道に関する協議会設置までの経緯

小湊鉄道は売上の8割がバス事業で占められ、また京成電鉄のグループ企業であることから、経営には比較的に余裕のある会社です。自治体からの支援については、一部バス路線で公的支援を受けているものの、鉄道事業では支援を受けていません。

そんな小湊鉄道が、自治体との関わりを強めるきっかけとなったのが、2004年に組織された「房総横断鉄道活性化プログラム推進委員会」でした。房総横断鉄道とは、小湊鉄道といすみ鉄道をつなぐと房総半島を横断していることから名づけられたものです。両社ではこれまで相互乗り入れをしていなかったことから、一体的な運行も視野に、鉄道と沿線の活性化を目的として委員会が組織されました。

小湊鉄道をクローズアップした「房総横断鉄道」のプロモーション。
▲上総中野でいすみ鉄道と連絡することで、五井~大原まで房総半島を横断するプロモーションが「房総横断鉄道」。
出典:小湊鉄道「房総横断鉄道」

具体的な施策としては、国と協力したモニターツアーによる実証実験を実施。小湊鉄道沿線の観光スポットである養老渓谷の紅葉シーズンにあわせて、温泉入浴を組み合わせた日帰りツアーを実施しています。モニターツアーは平日であったにもかかわらず、6日間で303人が参加し、成功を収めました。

この委員会を引き継いで2005年に組織されたのが、「房総横断鉄道活性化協議会」です。協議会では、小湊鉄道といすみ鉄道を乗り継ぐ観光客のために「房総横断記念乗車券」を企画。2022年現在も販売を続ける、ロングセラー商品になっています。

協議会参加で観光に注力するようになった小湊鉄道

房総横断鉄道活性化協議会は、国が掲げる地方創生事業の「地域活性化・地域住民生活等緊急支援交付金」を活用しています。2015年には房総横断鉄道活性化連携事業が認められ、国から967万円を受けました。

この予算を使って、「房総横断鉄道」というブランドを確立させるために、自治体は以下の支援をおこなうとしています。

  1. 知名度アップ戦略
    「房総横断鉄道」のブランドを確立するために、観光ポスターやパンフレットの作成・配布、メディアでのPR活動を展開する。
  2. 付加価値きっぷの発売
    「房総横断鉄道乗車券」の販売。沿線の飲食店や温浴施設、土産店などで利用できる金券を付加した乗車券で、地域活性化にもつなげる。
  3. イベントの実施
    小湊鉄道・いすみ鉄道の両鉄道を全線乗車した利用者には、抽選でオリジナル賞品が当たる応募用紙を配布する。

国が予算を付けた事業とあって、小湊鉄道は観光の視点から鉄道の活用法について検討を始めるようになります。もっとも、2003年から「懐石料理列車」といった観光列車を運行していましたが、定期列車の車両を使っており、観光専用の列車ではありませんでした。

そして2015年に導入したのが、SLをモチーフとした「房総里山トロッコ」です。ディーゼル機関車と4両の客車はすべて新調した、小湊鉄道初の観光専用の列車でもあります。

小湊鉄道のこれまでの取り組み

房総横断鉄道活性化協議会を通じて、自治体との連携を深めるようになった小湊鉄道。これまでの取り組みの一部を紹介しましょう。

  • 懐石料理列車やトロッコ列車の運行
  • 養老渓谷駅の整備
  • ガイドブック・ガイドマップの作成
  • 企画旅行の実施

…など

2003年から続く懐石料理列車は、もともと岐阜県の明知鉄道を参考に始めたサービスです。列車は4月から12月上旬まで運行されており、「夜桜懐石料理列車」「新緑懐石料理列車」など季節ごとに名称が変わります。
養老渓谷駅では、2008年に足湯を併設。列車の待ち時間を利用して無料で利用できます。また、風情のある駅舎にあわせて駅周辺を里山の雰囲気に戻す「逆開発」も進行しています。

小湊鉄道の養老渓谷駅に設置された足湯。
▲養老渓谷駅の足湯(2015年撮影)。

自治体との連携により、小湊鉄道は生活路線としての役割にくわえて、観光路線としての魅力も高めています。現在は経営的に黒字でも、沿線の少子化・過疎化が急速に進むことが予測されるなかで、次の一手を検討する必要があったはずです。実際に、鉄道の利用者が年々減り続けています。

こうしたなかで、自治体が先手を打った「房総横断鉄道」というブランディングは、両者の関係性を深めるだけでなく、先見性をもって鉄道を維持していくうえでも非常に重要な意義を持っているのではないでしょうか。

※房総横断鉄道のもうひとつの主役・いすみ鉄道の協議は、以下のページで紹介します。

安全投資ができず市原市に財政支援を要請

2023年4月20日、小湊鉄道は市原市に対して財政支援の要請書を提出します。これは、コロナの影響で経営状況が悪化し、車両や設備の更新など今後10年間で必要な約60億円を自社で負担できなくなったためです。

これに対して市原市は、国の社会資本整備総合交付金を視野に、法定協議会の設置を検討。その設置に向けて、有識者やいすみ鉄道なども交えた準備調整会議を設立し、協議を進めることになりました。

2023年7月27日、準備調整会議の初会合が開催されます。この会議で市原市は、利用者の少ない上総牛久~上総中野については代替交通モードの可能性も含めて、クロスセクター効果の分析など客観的・定量的な評価データをもとに議論していく考えを示します。

準備調整会議が示す支援の方向性は2023年度内に報告され、その後、法定協議会を設置して小湊鉄道に対する具体的な支援内容が決まる予定です。

参考URL

鉄道統計年報
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000053.html

観光を軸として鉄道を維持するための地域連携の決め手に関する研究(日本国際観光学会論文集)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jafit/24/0/24_137/_pdf/-char/ja

これからのいすみ鉄道を考えるシンポジウム(千葉県)
https://www.pref.chiba.lg.jp/koukei/shingikai/isumi/documents/haifusiryou.pdf

房総横断鉄道活性化連携事業について(房総横断鉄道活性化協議会)
https://prdurbanosichapp1.blob.core.windows.net/common-article/60332ea23d59ae0470416ca3/020_boso.pdf