【JR西日本】木次線は廃止を避けられるか?再構築協議会の対象区間を予想

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木次線の観光列車 JR
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木次線は、島根県の宍道と広島県の備後落合をつなぐJR西日本のローカル線です。沿線には、ヤマタノオロチの神話伝説にまつわる場所や、自然散策・温泉といった観光地も多く、観光路線という一面もあります。

ただ、利用者数は非常に少なく、沿線自治体は廃止への危機感を強めています。自治体が中心となって組織する「木次線利活用推進協議会」の活動を中心に、利用促進の取り組みを紹介しましょう。

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JR木次線の線区データ

協議対象の区間木次線 宍道~備後落合(81.9km)
輸送密度(1987年→2019年)宍道~出雲横田:879→277
出雲横田~備後落合:279→37
増減率宍道~出雲横田:-68%
出雲横田~備後落合:-87%
赤字額(2019年)宍道~出雲横田:7億2,000万円
出雲横田~備後落合:2億7,000万円
営業係数宍道~出雲横田:1,323
出雲横田~備後落合:6,596
※輸送密度および増減率は、JRが発足した1987年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額・営業係数については、2017年から2019年までの平均値を使用しています。

協議会参加団体

松江市、雲南市、奥出雲町、庄原市など

木次線と沿線自治体

木次線をめぐる協議会設置までの経緯

国鉄時代の木次線は「陰陽連絡線」として、急行「ちどり」などの優等列車も運行されていました。しかし、モータリゼーションの影響などにより利用者は激減。国鉄末期には、第2次特定地方交通線に指定されます。このときは、沿線の道路事情がよくないことを理由に、廃止対象から外れました。

民営化後も利用者の減少に歯止めがかからず、広島県は2006年、利用促進策として木次線などの高速化と直通列車の運行をJR西日本に求めます。しかし、広島県からの公的支援が示されなかったことや、島根県が「利用者の減少が続く現状で支援は困難」としたことから、この話は立ち消えになります。

一方で、木次線と平行する国道が整備されたことで、2010年代になると冬季に列車が運休した際にはタクシーによる代行輸送をおこなうことが増えてきました。つまり、沿線の道路事情がよくなり、木次線の存在意義がますます低下したということです。

こうした社会環境の変化に、沿線自治体が鉄道廃止の危機感を抱くきっかけになった出来事があります。2018年の三江線の廃止です。「三江線の次は木次線」という意識もあり、沿線自治体は同年に「木次線利活用推進協議会」を設置。沿線住民なども巻き込んで、木次線の利用促進に本腰を入れることになったのです。

3つの柱で木次線の利用促進を実行

木次線利活用推進協議会では、「交通対策」「地域振興」「観光振興」の3つの側面から鉄道の利用促進をおこなっています。

交通対策では、二次交通の整備や運賃助成などで利用促進を図るというもの。地域振興は、イベントを通じたマイレール意識の醸成を含め、沿線地域の活力を創出するというもの。そして観光振興は、企画列車の運行やSNSなどを活用した情報発信で、交流人口の拡大を図るというものです。

これらの施策を、沿線住民や各種団体などと連携しながら、木次線の利用を促すとしています。

木次線利活用推進協議会が計画した利用促進の図
出典:木次線利活用推進協議会「事業テーマ」

木次線の主な取り組み

協議会が実行した具体的な施策について、一例を紹介しましょう。

  • 木次線を利用した学校遠足などの助成(バスなどの二次交通の助成も含む)
  • イベント列車やラッピング列車の運行(木次線地酒トレイン、観劇列車など)
  • ノーマイカーデー普及などの啓発事業
  • スタンプラリー、ウォーキングイベントなどの実行(実行団体への支援)
  • 散策マップやガイドブックの作成(地元高校生などと連携して製作)
  • 駅舎を活用したイベントへの助成
  • ホームページやSNSによる情報発信
  • 地域PR動画作成

…など

利用促進の一環として、運賃助成に注力しています。2021年には、高校生以下の遠足や部活動など学校行事で利用する場合、運賃の全額助成を始めました。また、社会人の団体旅行や研修利用、個人旅行においても、最大半額の助成制度を設けています。

木次線といえば、トロッコ列車「奥出雲おろち号」が有名ですが、ラッピング列車も人気があります。2023年には、4種類のラッピング列車が登場。新たな観光推進策として、協議会が企画したものです。

この企画の背景には、奥出雲おろち号が2023年度で運行終了になるという事情があります。沿線自治体は、奥出雲おろち号に代わる新たなトロッコ列車をJR西日本に求めますが、「経営的、技術的観点から、財政支援の有無に関わらず行わない」とJR西日本が回答。その代わりに、2024年度からは観光列車「あめつち」の運行を確約します。これに先立ち、新たな利用促進策としてラッピング列車を企画したようです。

なお、ラッピング列車の事業費(約2,500万円)は、観光庁の補助金と沿線自治体が負担しています。

木次線は再構築協議会に移行する可能性も

さまざまな取り組みを実行してきた沿線自治体ですが、その効果は限定的のようです。木次線全線の輸送密度は、協議会設置前の2017年が204人/日に対し、設置後の2018年は200人/日、2019年は190人/日と減り続けています。とりわけ出雲横田~備後落合は、30人台と非常に少ない線区です。なお、新たな観光列車「あめつち」は、性能上の問題で出雲横田~備後落合には乗り入れしない予定です。

線区201620172018201920202021
宍道~出雲横田204204200277198220
出雲横田~備後落合371835
▲木次線の輸送密度の推移。2016~2018年は、全線の輸送密度(出典:JR西日本)

気になるのは、2023年秋にも設置される再構築協議会に、木次線が対象となるかという点でしょう。再構築協議会の対象条件は、「二つ以上の県にまたがっている」「輸送密度1,000人/日未満」「特急列車が走行していない」などがあります。木次線は、いずれの条件にも当てはまるため、再構築協議会に移行する可能性が高いです。

ただ、対象区間は全線ではなく、出雲横田~備後落合のみになるケースも考えられます。先述の通り、この区間は冬期運休が常態化しており、運休中の代行手段も確保できています。JR西日本が、どう判断するのか。今後、注目しなければならない路線のひとつです。

※再構築協議会の基本方針や対象線区の予想は、以下のページで解説します。

参考URL

ローカル線に関する課題認識と情報開示について(JR西日本)
https://www.westjr.co.jp/press/article/items/220411_02_local.pdf

木次線利活用推進協議会
https://kisuki-line.jp/

木次線観光列車運行検討会の報告について(出雲市)
https://www.city.izumo.shimane.jp/www/contents/1644889592056/files/houkoku4.pdf