【JR九州】筑肥線は存続できるか?再構築協議会も視野に入る非電化区間

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筑肥線の肥前長野駅 JR
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筑肥線は、福岡県の姪浜から佐賀県の唐津までの線区と、佐賀県の山本から伊万里までの線区で構成される、JR九州の鉄道路線です。唐津から山本まではJR唐津線でつながっており、伊万里からは全便唐津まで直通運行しています。

ただ、山本から伊万里の線区は利用者が少なく、沿線自治体はJR九州と協働で利用促進策に取り組んでいます。国の再構築協議会の対象線区とも噂される、筑肥線の非電化区間の将来について考えてみましょう。

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JR筑肥線の線区データ

協議対象の区間JR筑肥線 唐津~伊万里(33.1km)
※山本~伊万里は25.7km
輸送密度(1987年→2019年)728→214
増減率-71%
赤字額(2019年)2億3,500万円
営業係数721
※輸送密度および増減率は、JRが発足した1987年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額と営業係数は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

唐津市、伊万里市、佐賀県

筑肥線と沿線自治体

JR九州と協働で進める「筑肥線活用に関する検討会」

筑肥線の沿線自治体には、全線の複線化・電化などを要望する「筑肥線複線化電化促進期成会」や、糸島高校駅の新設を要望していた「筑肥線新駅設置促進期成会」といった組織はありますが、鉄道の利用促進を目的とした組織は長く存在しませんでした。これは、筑肥線の大部分の地域が福岡市のベッドタウンとして栄え、路線全体では利用者が増えていたからです。

しかし、飛び地のようになっている山本から伊万里の線区は、輸送密度が214人/日(2019年)と少なく、利用者の減少に歯止めがかかっていませんでした。

こうした状況にJR九州では「線区活用に関する検討会」を、九州管内の利用者が大きく減少した線区で開催。筑肥線(唐津~伊万里)も対象路線となり、2019年から話し合いを始めています。

この検討会は、利用実態に関する情報共有や意見交換をおこないながら、さまざまな利用促進策を実行していく組織です。実行した施策は効果検証もおこない、次回以降の施策につなげていきます。なお、存廃に関する話はおこないません。

筑肥線の主な取り組み

JR九州と筑肥線の沿線自治体が協働で実行した利用促進策の一部を紹介します。

  • イベント列車やラッピング列車の運行(イルミネーション列車、ロマンシング佐賀列車など)
  • 周遊きっぷの販売
  • オリジナル駅名標の設置
  • 鉄道を使った地域づくりセミナーの開催
  • 記念乗車券発売
  • 鉄道利用促進PR動画の制作
  • 遠足等の行事で鉄道を利用する保育所等への支援

…など

これらの施策のうち効果が大きかったのは、2021年に実施したイルミネーション列車の運行です。沿線住民などによるおもてなしも実施し、2日間・8本の運行に515人が乗車しました。

2022年には、人気ゲーム「サガ」シリーズを展開するゲームソフト会社とコラボした「ロマンシング佐賀2022」というキャンペーンを実施。ラッピング列車の運行や周遊きっぷの販売などで、筑肥線沿線を盛り上げました。なお、周遊きっぷはトータルで1,400枚以上が売れたそうです。

イベントのほかにも、遠足などで鉄道を利用する保育所への支援や、鉄道の利活用促進事業をおこなう団体への支援なども実施しています。これらの施策により、2021年には全11件の取り組みで約550人、2022年は全16件の取り組みで約2,500人(他線区の利用者を含む)もの利用者増加につながりました。

筑肥線でも再構築協議会は設置されるか?

線区活用に関する検討会は、2023年以降も引き続きおこなう予定ですが、気になるのが「鉄道のあり方」まで踏み込んだ協議会をJR九州が検討していることでしょう。検討会では、イベントを中心に利用促進に努めているものの、通学や通院など日常的な利用者の減少のほうが大きく、全体の利用者数は減り続けています。

同じく検討会を開催していた指宿枕崎線(指宿~枕崎)では、2024年1月に「地域公共交通のあり方」について話し合う任意協議会を設置し、JR九州との協議が始まりました。指宿枕崎線と同等の利用実績の筑肥線(山本~伊万里)にも、協議会の設置を求めてくることが考えられます。

なお、指宿枕崎線は国の再構築協議会の基準を満たさないため、現状では任意の協議会です。一方、筑肥線は再構築協議会の基準を満たします。このため、国を交えた協議会が設置される可能性もあるでしょう。

いずれにしても、利用促進策だけでは限界があり、地域公共交通の再構築まで踏み込んだ話し合いが求められる地域です。JR九州の次の一手に、注目が集まります。

※再構築協議会の基本情報や、設置が予測される対象線区は、以下のページで解説します。

※指宿枕崎線の「線区活用に関する検討会」の内容や、鉄道のあり方に関する協議の進捗状況は、以下のページで解説します。

※沿線自治体と協議を進めている路線は、ほかにも複数あります。各路線の協議の進捗状況は、以下のページよりご覧いただけます。

【九州】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
九州地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

参考URL

交通・営業データ(JR九州)
https://www.jrkyushu.co.jp/company/info/data/senkubetsu.html

「筑肥線(唐津~伊万里)活用に関する検討会」における2021年度の取り組みについて(唐津市)
https://www.city.karatsu.lg.jp/koutsuu/documents/chikuhisen2021.pdf

「筑肥線(唐津~伊万里)活用に関する検討会」における2022年度の取り組みについて(唐津市)
https://www.city.karatsu.lg.jp/koutsuu/documents/chikuhisen2022.pdf