小浜線は、福井県の敦賀から京都府の東舞鶴までを結ぶJR西日本のローカル線です。2024年春に北陸新幹線が敦賀まで延伸開業するのを控え、小浜線の沿線自治体も観光誘致に注力しています。一方で、鉄道の利用客はマイカーに流れる傾向があり、年々減少の一途をたどっている現実もあります。
沿線自治体が中心となって組織した小浜線利用促進協議会の動きを中心に、小浜線の取り組みを紹介しましょう。
JR小浜線の線区データ
協議対象の区間 | JR小浜線 敦賀~東舞鶴(84.3km) |
輸送密度(1987年→2019年) | 2,712→991 |
増減率 | -63% |
赤字額(2019年) | 18億1,000万円 |
営業係数 | 678 |
※赤字額と営業係数は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。
協議会参加団体
敦賀市、小浜市、美浜町、高浜町、おおい町、若狭町、嶺南広域行政組合、福井県、JR西日本など
小浜線利用促進協議会の設置までの経緯
小浜線利用促進協議会は、鉄道の利用促進を協議・検討するために、2005年4月に設立されました。
この協議会が設置される前から、沿線自治体はJR西日本と緊密な関係を構築してきたことも、小浜線の特徴です。たとえば、2003年春の電化事業では、総工事費約99億円のうち約42億円を福井県や京都府をはじめ、沿線自治体が補助。所要時間の短縮や湖西線経由で京都方面へのアクセス向上が図られ、利用促進につながっています。
一方で、並行する国道27号線のバイパスや舞鶴若狭自動車道など車でのアクセス改善が進んだことにより、小浜線の利用者は右肩下がりになっている実態もあります。沿線自治体はJR西日本や関係団体などと一体となって、小浜線のさらなる利用促進をめざしており、今後の取り組みが注目されています。
小浜線の主な取り組み
小浜線利用促進協議会をはじめ、沿線自治体やJR西日本が実施してきた取り組みの一例を紹介します。
- サポーターズクラブの運営
- 新規定期利用助成
- 小学生団体利用促進補助金
- フォトコンテスト
- フリーペーパーの発行
- サイクルトレインの運行
- モニターツアーの実施
- スタンプラリーの実施
…など
2021年10月、協議会が主体となって「おばませんサポーターズクラブ」を発足します。会員になると、協賛店での割引サービスや小浜線のPR関連イベントへの助成などが受けられるそうです。発足して間もない応援団体のため実績は少なく、これからの取り組みに期待したいところです。
新規定期利用助成は、小浜線を利用する定期券を新たに購入する沿線住民に対して、通勤定期は1カ月分、通学定期は3カ月分を助成する事業です。なお、バスを乗り継ぐ方にはバスの定期券1カ月分も助成します。
そのほか、サイクルトレインや臨時貸切列車の運行など、モニターツアーも実施していますが、参加者は10~20名程度と少ないようです。
2024年は北陸新幹線の延伸開業により、首都圏からも多くの観光客が訪れることが見込まれます。今後は、近畿圏にくわえ首都圏の観光客に対するアピールも求められるでしょう。
ただし、利用促進のカギを握るのは沿線住民です。輸送密度が1,000人/日を割り込んでいる現状、沿線住民にどれだけメッセージを届けられるかも、今後の協議の課題といえそうです。
※沿線自治体と協議を進めている路線は、ほかにも複数あります。各路線の協議の進捗状況は、以下のページよりご覧いただけます。
参考URL
平均通過人員2,000人/日未満の線区ごとの収支データ(JR東日本)
https://www.jreast.co.jp/company/corporate/balanceofpayments/pdf/2019.pdf
小浜線利用促進協議会
https://www.obamaline.com/
JR小浜線 嶺南地域鉄道整備(福井県)
https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/013561/reinantetsudou.html
電化事業の概要(おばませんドットコム)
https://www.obamasen.com/introduce/electro.php
小浜線を応援するサポーターズクラブ発足 電車利用促進、SNSで情報発信も(福井新聞)
https://www.hokurikushinkansen-navi.jp/pc/news/article.php?id=NEWS0000029036