【JR東日本】飯山線の廃止を避けるには?新幹線を活かせない自治体の苦悩

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飯山線の列車 JR
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JR飯山線は、長野県の豊野から新潟県の越後川口を結ぶ、96.7kmのローカル線です。千曲川・信濃川に沿って走る飯山線の沿線地域は、日本有数の豪雪地帯であり、除雪などの管理コストがかかる一方で、少子化・過疎化などによる利用者の減少に歯止めがかからない地域でもあります。

沿線自治体では「飯山線沿線地域活性協議会」を設置し、利用促進を中心に存続の取り組みをおこなっています。

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JR飯山線の線区データ

協議対象の区間JR飯山線 豊野~越後川口(96.7km)
輸送密度(1987年→2019年)豊野~飯山:3,368→1,444
飯山~戸狩野沢温泉:2,171→416
戸狩野沢温泉~津南:822→77
津南~越後川口:949→359
増減率豊野~飯山:-57%
飯山~戸狩野沢温泉:-81%
戸狩野沢温泉~津南:-91%
津南~越後川口:-62%
赤字額(2019年)豊野~飯山:7億5,800万円
飯山~戸狩野沢温泉:3億3,400万円
戸狩野沢温泉~津南:9億3,600万円
津南~越後川口:8億7,900万円
営業係数豊野~飯山:1,037
飯山~戸狩野沢温泉:3,423
戸狩野沢温泉~津南:13,945
津南~越後川口:2,380
※輸送密度および増減率は、JRが発足した1987年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額と営業係数は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

中野市、飯山市、木島平村、野沢温泉村、栄村、津南町、十日町市、新潟県、長野県、JR東日本

飯山線と沿線自治体

飯山線沿線地域活性協議会の設置までの経緯

飯山線沿線地域活性協議会は、鉄道の利用促進や観光振興による沿線地域の活性化を目的に、2001年12月に設立されました。JRの沿線自治体が鉄道事業者と一緒に協議会を立ち上げるケースとしては、歴史が古いほうでしょう。

沿線自治体は設立当初から、積極的なPR活動を展開。とりわけ、観光誘致に注力しており、協議会のウェブサイト「信州越後の旅 四季浪漫 飯山線」を2003年から運営するなど、地域外でのアピールを進めます。

また、首都圏や中京圏の駅で沿線地域のパンフレットやノベルティーを配布するなど、集客にも努めてきました。

活動休止?北陸新幹線の開業を見据え再始動

協議会は2004年ごろまで、積極的に活動を続けていましたが、その後は停滞の時期を迎えます。総会も、2004年からしばらく閉会しています。この年の10月に新潟県中越地震が発生し、大きな被害を受けた沿線地域への対応が優先されたことも、活動停止の要因かもしれません。

総会が再び開かれたのは、2011年7月です。久しぶりの総会では、4年後に迫った北陸新幹線の延伸開業を見据えて、沿線自治体が連携を強めることを確認します。

北陸新幹線の延伸により、飯山駅が新幹線との乗換駅になります。また、越後川口がある長岡市には上越新幹線が通っています。2つの新幹線を結ぶ路線として、飯山線の利用促進のチャンスと捉えていたようです。

なかでも、大きな期待を寄せたのが観光誘客です。飯山線の沿線には温泉地やスキー場など、雪国ならではの魅力的な観光スポットが点在します。こうした観光資源を活用し、地域活性化を図ることも検討されていました。

飯山線の地域活性化戦略の計画
▲地域活性化戦略の計画では、スキーや温泉など飯山線沿線の観光誘致を強化することが狙いだった。
出典:新潟経済同友会「JR飯山線のリニューアルによる地域活性化戦略」

また、十日町では「JR飯山線のリニューアルによる地域活性化戦略」という計画が策定されます。これは、冬季に遅延・運休が生じやすい飯山線を抜本的に改修し、さらにスピードアップや運行本数の増加を狙うという大胆な計画でした。

ただ、これを実現するには莫大な投資が必要なため、JR東日本は難色を示します。その代わり、新たな観光列車「おいこっと」を北陸新幹線の開業後に投入するなど、沿線活性化につながる施策を実施しています。

飯山線でSL復活も、利用促進の起爆剤にならず

飯山線沿線地域活性協議会では、もうひとつ一大プロジェクトを進めていました。それが、SL(蒸気機関車)の復活です。JR東日本と協議を重ねた結果、「沿線の警備や燃料補給などで地元の協力があれば」という条件付きで、運行の実現に至ったのです。

2016年11月、飯山から長岡の区間でSLが走行。沿線には多くの人が集まり、賑わいました。ただ、これ以来、飯山線でSLは運行されていません。

再復活を望む声もあるようですが、これに対して長野県は「車両や給水、給炭など、直接運行に要する費用、沿線警備等にも多くの人員や費用を要するといった課題もある」として、復活には消極的です。費用対効果の見合わない施策だったのでしょう。

そもそも、一時的なイベントで利用促進効果は限定的ですから、沿線住民にもっと飯山線を利用してもらえるような施策が求められるところです。

JR飯山線のこれまでの取り組み

このほかにも沿線自治体では、飯山線の利用促進に関する取り組みをおこなっています。いくつか紹介しましょう。

  • ホームページを活用した利用促進
  • PR動画の制作
  • 観光客の誘致宣伝
  • フォトコンテストの実施

…など

協議会のウェブサイト「信州越後の旅 四季浪漫 飯山線」では、沿線地域の観光スポットや旅行プランの紹介もしています。「旅プラン」のページからは、旅行代理店へのリンクがはられ、ツアーを申し込める導線設計です。ただし、ツアー行程をみると飯山線を利用しなくても参加できる内容になっています。

また、飯山線沿線7自治体の魅力をアピールしたPR動画は、協議会のウェブサイトをはじめ、Youtubeでも閲覧できます。ただ、公開から1年ほどが経過したものの、再生回数は700回弱と苦戦しているようです。動画による訴求効果は期待されますが、1~2本の投稿で拡散される可能性は極めて低いです。もっと手軽に制作できる動画を量産したほうが拡散されやすいですし、沿線の魅力も多く伝えられるでしょう。

飯山線は、輸送密度や営業係数を見る限り、非常に厳しい区間もあります。とくに、長野・新潟県境の戸狩野沢温泉~津南は、輸送密度が77人/日、営業係数は13,945です(2019年)。この区間に関しては、只見線のように観光誘致に振り切るという方法もありますが、その場合、公的支援は避けられないと考えられます。

JR東日本との協議を進め、沿線地域にとって最適な答えを導き出せるよう願いたいところです。

※観光誘致を進めるJR只見線の協議会は、以下よりご覧いただけます。

参考URL

平均通過人員2,000人/日未満の線区ごとの収支データ(JR東日本)
https://www.jreast.co.jp/company/corporate/balanceofpayments/pdf/2019.pdf

信州越後の旅 四季浪漫 飯山線(飯山線沿線地域活性協議会)
https://iiyamasen-ensen.com/

首都圏・中京圏において、涼しい信州など地域の魅力を発信しました
http://www.nagano-tabi.net/kikou/hot/pdf/1208miryoku.pdf

JR飯山線のリニューアルによる地域活性化戦略(新潟経済同友会)
https://www.niigata-doyukai.jp/pdf/201309-1.pdf

飯山線に関する提案について(長野県)
https://www.pref.nagano.lg.jp/koho/kensei/koho/hotline/201908/hot_1908-9.html