【JR北海道】コスト削減で宗谷本線は残せるか?駅廃止・管理移管による赤字改善効果の実態

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宗谷本線の終着駅・稚内駅 JR
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JR宗谷本線は、日本最北の駅である稚内と北海道第二の都市・旭川とを結ぶ約260kmもの長大路線です。この鉄道路線を守るために、沿線自治体が中心となって組織されたのが「宗谷本線活性化推進協議会」です。

宗谷本線活性化推進協議会では、鉄道の利用促進に関する施策はもちろん、駅の廃止や自治体への管理移管などJR北海道の経費削減につながる取り組みにも注力しています。具体的な施策の内容や効果についてみていきましょう。

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JR宗谷本線の線区データ

協議対象の区間JR宗谷本線 旭川~稚内(259.4km)
輸送密度(1987年→2019年)旭川~名寄:非公表→1,336
名寄~稚内:751→316
増減率旭川~名寄:-
名寄~稚内:-58%
赤字額(2019年)旭川~名寄:26億3,300万円
名寄~稚内:25億500万円
営業係数旭川~名寄:515
名寄~稚内:727
※輸送密度および増減率は、JRが発足した1987年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額と営業係数は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

旭川市、稚内市、士別市、名寄市、比布町、和寒町、剣淵町、美深町、音威子府村、中川町、豊富町、幌延町、旭川商工会議所、士別商工会議所、名寄商工会議所、稚内商工会議所

宗谷本線と沿線自治体

宗谷本線活性化推進協議会の設置までの経緯

まず、宗谷本線の沿線自治体が協議会を設置するまでの経緯を振り返ります。

2016年11月18日、JR北海道は「当社単独では維持することが困難な線区」を公表しました。このなかで宗谷本線の名寄~稚内間は、輸送密度が200人以上2,000人未満の線区(以下、黄線区)に該当し、「鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区」として位置付けられています。

なお、旭川~名寄間に関しては、JR北海道や沿線自治体などが出資する第三セクター「北海道高速鉄道開発株式会社」が絡んでいるため黄線区からは除外されていますが、後ほど紹介するアクションプランについては旭川~稚内までの全線で取り組みを実施しています。

▲宗谷本線(名寄~稚内)の輸送密度の推移(1987~2022年)。民営化後しばらくは微増(1990年が最高値)だが、2000年代に入ると減少の一途をたどっている。
参考:JR北海道「輸送密度の推移(名寄・稚内間)」をもとに筆者作成

JR北海道の公表を受け、沿線自治体は2017年4月にJR北海道を交えた幹事会を設置。その後、「宗谷本線活性化推進協議会」を創設します。協議の中間報告をおこなった2017年5月には、沿線自治体の首長が鉄道を利用して協議会場に訪れるというパフォーマンスも見られました。

2017年5月の中間報告では、協議会の方向性として以下2点を示しています。

(1)ダイヤの適正化、地域住民の利用実態の把握、広域連携、JR北海道との連携、駅舎の環境改善などの議論をおこなう。
(2)上下分離の考え方や収支フレーム等については、国や道の動向を見ながら対応を検討する。

また、宗谷本線は「国防・国土保全」「教育・医療・ビジネス」「観光・交流人口」に必要な不可欠な路線であることも提言しています。

宗谷本線は北海道にも必要な路線?

沿線自治体が設置する協議会とは別に、北海道でも運輸交通審議会の作業部会として、有識者を交えた「鉄道ネットワークワーキングチーム」を発足。「全道的な観点から将来を見据えた鉄道網のあり方」について検討を始めます。

ただし、この作業部会では「個別線区の存続や廃止に関して結論を出すものではない」としました。つまり、鉄道の存廃は沿線自治体とJR北海道が協議をして決めるのが前提ということです。

作業部会は2017年2月にいったん報告書をまとめますが、抽象的な内容の報告書に沿線自治体は「もっと具体的な提言がされないと協議を進められない」と、さらなる検討を求めます。

そこで、同年7月に鉄道ネットワークワーキングチームの「フォローアップ会議」を設置。およそ半年かけて集中審議をおこない、2018年2月にJR北海道が維持困難とする線区のあり方について示しました。
北海道にとって、宗谷本線の名寄~稚内間は以下のように位置付けています。

ロシア極東地域と本道との交流拡大の可能性も見据え、国土を形成し、本道の骨格を構成する幹線交通ネットワークとして、負担等に係るこれまでの地域での協議を踏まえ、維持に向けて更に検討を進める。

出典:北海道交通政策総合指針(仮称)案「鉄道網の展望」

最後の「維持に向けて」という表現が使われているのは、宗谷本線と石北本線のみです。つまり、宗谷本線は北海道にとっても重要な鉄道路線であり「存続させたい」という意思を示したことになります。

とはいえ、フォローアップ会議のまとめにも「個別線区の存続や廃止に関して結論を出すものではない」という前提が示されており、沿線自治体にはわだかまりの残る報告となっているようです。

※宗谷本線と同じく、北海道が維持の姿勢を見せるJR石北本線の協議会や沿線自治体の取り組みは、以下のページにまとめています。

宗谷線事業計画(アクションプラン)の策定

2018年7月、国土交通省はJR北海道の経営改善に向けた取り組みを着実に進めるよう監督命令を発出します。このなかで国は、沿線自治体などと一体となった取り組みを2019年度より5年間実施するように求めました。その具体的な取り組みをまとめたものが、「宗谷線事業計画(アクションプラン)」です。

アクションプランは、第1期(2019~2020年度)と第2期(2021~2023年度)にわけて、鉄道の利用促進や経費削減などに向けた取り組みを、JRと沿線自治体が一緒に実施する内容になっています。そして、最終年度となる2023年度に総括的な検証をおこなうとしています。

宗谷本線アクションプランの実施内容

宗谷本線における具体的な取り組み内容は、以下の通りです。

  • 自治体の請願による駅移設(東風連駅を移設し、名寄高校駅に改称)
  • 鉄道利用者への助成金交付
  • 観光列車「風っこそうや号」「花たびそうや号」のPR、および利用客のおもてなし
  • 利用者の少ない駅(1日3人未満)の維持管理を自治体に移行、または廃止
  • 地域特産品やイベントを楽しめる「ぴっぷ駅マルシェ」の開催
  • 特急列車内での特産品販売
  • 鉄道利用促進ツアーの実施(トロッコ列車乗車体験、ブルーベリー狩りなどのイベント付)
  • 沿線高校生によるJR応援ポスターの作成
  • 宗谷線フォトコンテストの実施
  • 沿線保育園の園児や小学校の学生による体験乗車(沿線の魅力を学習)
  • 高校生や有志者による清掃活動、花を植える取り組み

…など

利用促進の取り組みとしては、2022年に東風連駅を1.5km移設して「名寄高校駅」に改称。学校からわずか200mの位置に駅が移設されました。新駅は名寄市の請願でつくられ、事業費は自治体が負担しています。なお、名寄高校は2023年度より名寄産業高等学校と再編統合されるため、通学生の増加が期待されています。

また、鉄道利用者の運賃や料金が実質的に割り引かれる助成金交付制度を設ける自治体もあり、沿線住民の利用を促進しているようです。

観光面では、JR北海道の観光列車「風っこそうや号(2019年)」「花たびそうや号(2022年)」の運行にあわせて、地元食材を使ったお弁当の提供などによるおもてなしを実施。地域アピールも兼ねたアピール活動をおこなっています。

▲「鉄道、必要ですか?」というセンセーショナルなコピーが話題となった音威子府村の広報紙。
出典:広報おといねっぷ(2017年7月号)

JRの「コスト削減」に対する協力は限定的でしかない

経費削減に関する取り組みとしては、2021年に12駅を廃止し、さらに17駅を自治体の維持管理に移行しています。これは、1日の乗車人員が3人未満の駅について、JR北海道が自治体管理または廃止を求めたためです。

宗谷本線の通る地域は、日本有数の人口希薄地域です。国鉄時代には仮乗降場だった施設をJRになってから駅に昇格させたところもありますが、その後、過疎化・少子化が進み現在では1日の利用者数が1人未満の駅が並ぶ状況になっています。

こうした駅の廃止や自治体移管により、JR北海道の負担を年間約3,000万円軽減することに成功しています。

ただし、宗谷本線全線の赤字額は年間50億円前後にもなりますから、29駅を管理委託や廃止にしても1%未満の削減にしか至らず、経営改善に程遠いのが実情です。JR北海道では、駅の削減と合わせて利用の少ない踏切の削減も進めていますが、1カ所あたり年間100万円程度の削減にしかならず、こちらも抜本的な改善には至りません。

なお、自治体に管理移行された駅は、後に廃駅となるケースも出ています。2022年3月に廃止された歌内駅は、もともと代替交通網が構築されるまで存続させるという条件で自治体管理に移管された駅でしたが、抜海駅のように自治体と地域住民とのコンセンサスが得られず、存廃の不安を抱える駅も少なくないようです。

※2024年1月30日にJR北海道が国に提出した「アクションプラン総括的検証報告書」の内容については、こちらの記事で解説しています。

※JR北海道のアクションプランの詳細内容や、改善が求められるポイントについて、以下のページで解説しています。

参考URL

宗谷本線活性化推進協議会(幌延町)
https://www.town.horonobe.lg.jp/www4/section/jumin/public/le009f000001c8u6-att/le009f000001ccwb.pdf

当社単独では維持することが困難な線区について(JR北海道)
https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/161118-3.pdf

鉄道WT報告を踏まえた関係機関の取組(北海道)
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/5/1/1/4/9/0/9/_/290731shiryou2.pdf

JR北海道の経営改善について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001247327.pdf

第1期事業計画(アクションプラン)
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/region/actionplan_01.html

第2期事業計画(アクションプラン)
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/region/actionplan_02.html