【JR北海道】富良野線の廃止を防げ!沿線自治体の取り組みは成功するか?

富良野線の臨時駅 JR

旭川と富良野を結ぶJR富良野線は、通勤通学客を輸送する定期列車にくわえ観光列車も多く走るローカル線です。しかしJR北海道は、利用者が少ないことなどを理由に「当社単独では維持することが困難な線区」に指定。廃止を危惧する沿線自治体は、利用促進などの取り組みで富良野線の維持に努めています。

富良野線は、廃止を防げるのでしょうか。自治体の取り組みをもとに検証します。

JR富良野線の線区データ

協議対象の区間JR富良野線 旭川~富良野(54.8km)
輸送密度(1987年→2024年)2,056→1,304
増減率-37%
赤字額(2024年)12億900万円
営業係数457
※輸送密度および増減率は、JRが発足した1987年と2024年を比較しています。
※赤字額と営業係数は、2024年のデータを使用しています。

協議会参加団体

旭川市、富良野市、美瑛町、上富良野町、中富良野町、JR北海道など

富良野線と沿線自治体

観光利用だけでは存続できない!富良野線沿線自治体の行動

JR北海道は、輸送密度が200~2,000人/日の線区(黄線区)について、「鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区」と位置付けています。すぐ廃止にしないものの、「地域の支援がなければ存続が厳しい」という切実な思いを伝えているのです。その線区のひとつに、富良野線も該当します。

JR北海道の公表を受け、富良野線の沿線自治体が動き始めます。2017年2月には、担当者レベルの会合を開催。同年5月には「JR富良野線連絡会議」という協議組織を設置し、JR北海道を交えた協議を始めます。

連絡会議では、利用者アンケートの実施や広報誌を活用した利用促進などの取り組みを決定。このほか、乗車イベントの開催や学校行事での鉄道利用の推進などの検討も確認します。

■富良野線の輸送密度の推移

富良野線の輸送密度の推移
▲1990年代後半から2000年代にかけて、輸送密度は大きく減少した。ただ、2010年代には微増に転じている。
参考:JR北海道「富良野線(富良野~旭川間)事業の抜本的な改善方策の実現に向けた実行計画」をもとに筆者作成

沿線自治体の連絡会議とは別に、北海道でも「鉄道ネットワーク・ワーキングチーム・フォローアップ会議」という組織を設置。全道的な観点から将来を見据えた鉄道網のあり方を検討するため、有識者を交えて議論が重ねられました。

フォローアップ会議は2018年2月に、黄線区それぞれのあり方について報告。富良野線に関しては、次のように位置付けています。

観光客の利用だけで鉄道を維持していくことは難しいことから、関係機関が一体となって、観光路線としての特性をさらに発揮するよう取組を行うとともに、地域における負担等も含めた検討・協議を進めながら、路線の維持に最大限努めていく。

出典:北海道交通政策総合指針について「JR 北海道単独では維持困難な線区に対する考え方」

富良野や美瑛といった、北海道を代表する観光地の多い沿線地域。しかし、北海道は「観光客の利用だけで鉄道を維持していくことは難しい」と、沿線自治体へ投げかけているようにみえます。ただ、沿線自治体も先述のアンケート調査などで富良野線の利用実態を把握しており、観光と地域輸送の両面から利用促進などの取り組みを模索していました。

文末の「路線の維持に最大限努めて」という表現は、釧網線や花咲線(根室本線の釧路~根室)と同じ位置づけです。「維持に向けて」と表した宗谷本線・石北本線よりワンランク下の表現ですが、北海道としても「可能な限り存続させたい」と考えているように受け取れます。

なお、フォローアップ会議では「個別線区の存続や廃止に関して結論を出すものではない」とし、あくまでも沿線自治体とJR北海道との協議で存廃を決めるように求めています。

富良野線の廃止を防ぐ「アクションプラン」策定

2018年7月、国土交通省はJR北海道に経営改善に向けた取り組みを着実に進めるように監督命令を発出します。このなかで黄線区については、沿線自治体と一緒に取り組みを実施するように求めました。

監督命令を受けて、連絡会議では鉄道の利用促進や経費削減などの具体的な取り組みを検討。それをまとめたものが「富良野線事業計画(アクションプラン)」です。

アクションプランでは、取り組みによる改善状況を評価しやすいように「目標値」を設定しています。その目標値は「2017年度の輸送密度と収支」で、富良野線では以下の通りです。

■富良野線のアクションプラン目標値

輸送密度1,597人/日
収支9億9,800万円

計画最終年度には、「抜本的な改善方策の検討」をおこなうことを国は求めています。なお最終年度は当初2023年度でしたが、新型コロナウイルスの影響で中止・規模縮小となった取り組みが28件もあったことから、JR北海道と沿線自治体は期間延長を要望。これが国に認められ、最終年度は2026年度末に変更されています。

富良野線アクションプランの実施内容

アクションプランの取り組みは、JR富良野線連絡会議を中心に各種施策がおこなわれています。代表的な施策についてお伝えしましょう。

観光列車・イベント列車の運行

毎年夏に運行する臨時観光列車「富良野・美瑛ノロッコ号」のほかにも、さまざまな観光列車・イベント列車を運行しています。2023年7月には、「フラノラベンダーエクスプレス」が富良野線に乗り入れ。11日間で1,969人が乗車しました。翌年度からは「冬のラベンダー号」を運行。2024年度は2日間で、662人が利用しています。

ほかにもH100形のラッピング列車による「JR富良野線満喫列車」など、沿線の観光施設をめぐるイベント列車も運行しています。

臨時観光案内所の設置

JR北海道が毎年夏に実施する「富良野・美瑛キャンペーン」にあわせて、上富良野駅などに臨時の観光案内所を設置。外国語通訳スタッフを配置して乗車案内をおこなうなど、利用者増加に貢献したようです。案内したインバウンド観光客の数は、2019年度からの5年間で約3万人でした。

子ども向け乗車イベントの実施

地元の小中学生を対象とした乗車イベントも開催しています。2021年度からは「えきをめぐるなぞときのたび」というイベントを開催。列車に乗って指定書に書かれたミッションをクリアするとプレゼントがもらえるという企画で、2023年度までの3年間に約900人が参加しました。

ほかにも、小学生を対象にした「旭川駅&運転所見学ツアー」も2019年度から開催。2023年度までの5年間で152人(保護者同伴)が参加したそうです。

観光施設と連携した実証事業

沿線の温泉施設や美術館、スポーツ施設などの利用料金が割引になる実証実験も実施しています。2024年度には、乗車時のきっぷなどをスマートフォンで撮影し、その画像を施設で提示すると利用料金が割引になるというキャンペーンを実施。美瑛駅と白金温泉を結ぶ路線バスの1日フリーパスも割引にしました。12月から2月までの約3カ月で、約460件の利用があったそうです。

その他の取り組み

  • 広報誌でのPR
  • 鉄道利用フォーラムの開催(市内外より200名が参加)
  • スタンプラリーの実施
  • フォトコンテストの実施(Instagramの活用)
  • PR動画コンテストの実施
  • 観光スポットや飲食店などを紹介したマップ作製

…など

富良野線の廃止を防ぐには?

アクションプランの達成状況ですが、輸送密度・収支(赤字額)いずれも目標値を下回る年が続いています。
輸送密度に関してはコロナの影響が大きく、観光路線の富良野線では大打撃になりました。収支は、コロナ禍以降の原油価格高騰などで経費が増加。減便や駅窓口の営業時間短縮などで経費削減に努めるものの、厳しい状況が続いています。

■富良野線の目標値との比較

富良野線の目標値との比較
▲目標値は2017年度の輸送密度(1,597人/日)と収支(9億9,800万円の赤字)。コロナ禍からの回復が鈍く、アクションプランの目標達成は危うい。
参考:JR北海道の各年度の線区別利用状況をもとに筆者作成

ただ、JR北海道は「アクションプランの目標達成状況のみで存続・廃止を決めることはない」と伝えています。鉄道の価値は、輸送密度や収支といった定量的な指標だけでは図れません。存廃に関しては、定性的な指標も含めて総合的に判断する模様です。

そこでJR北海道と沿線自治体は、高校生を除く沿線住民800人にアンケート調査を実施。富良野線の利用状況や今後の利用動向、重要性などを調べています。その結果は、以下の通りです。

利用頻度をみると、週2日以上を含め月1回以上利用する人は13%、年2~3回と答えた人もあわせると30%を超えます。その一方で、半数以上が「まったく使わない」と回答しています。一見すると、沿線住民の意識は低いように見えますが、他の黄線区と比べたら高いほうです。

富良野線の通勤定期客は217人、通学定期客とあわせると約800人になります(2024年度)。輸送密度も1,000人/日を超える路線ですから、現時点で路線バスへの転換は難しいでしょう。とはいえ、JR北海道は鉄道を維持するのに年間10億円以上の赤字を生んでいます。施設の老朽化や原油価格の高騰のあおりも受け、赤字額は増加傾向です。

こうしたなかで鉄道を維持するには、沿線自治体の支援が欠かせません。沿線自治体は利用促進などの取り組みに、年間で約340万円を支援しました(2024年度)。しかし、富良野線が存続することで沿線地域が受ける便益は、それ以上あると推測されます。こうした観点から持続可能な鉄路維持のために、さらなる支援を検討してほしいところです。

富良野線の関連記事

※JR北海道のアクションプランについて、以下のページで解説しています。

※沿線自治体と協議を進めている路線は、ほかにも複数あります。各路線の協議の進捗状況は、以下のページよりご覧いただけます。

【北海道】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
北海道地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

参考URL

鉄路対策(富良野市)
https://www.city.furano.hokkaido.jp/life/docs/2018011100020.html

当社単独では維持することが困難な線区について(JR北海道)
https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/161118-3.pdf

鉄道WT報告を踏まえた関係機関の取組(北海道)
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/1/1/0/5/4/0/9/4/_/290731shiryou2.pdf

JR北海道の経営改善について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001247327.pdf

地域の皆様との連携(JR北海道)
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/region/alignment.html

アクションプラン総括的検証報告書(JR北海道)
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/region/pdf/8senku/verificationreport_06.pdf

富良野線(富良野~旭川間)事業の抜本的な改善方策の実現に向けた実行計画
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/region/pdf/8senku/executionplan_05.pdf

事業の抜本的な改善方策の実現に向けた実行計画 検証報告書(JR北海道)
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/region/pdf/8senku/v_report_2024_05.pdf

JR富良野線連絡会議(Instagram)
https://www.instagram.com/jr_furanosen/

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