週刊!鉄道協議会ニュース【2025年1月12日~1月18日】

姫新線の列車 協議会ニュース

今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、姫新線や因美線などの沿線自治体で構成される議員連盟が路線存続をめざす意見交換会を開いた話や、弘南鉄道大鰐線への公的支援について2027年度末までの継続が決まった話など、さまざまなニュースをお伝えします。

姫新線などの自治体議員が意見交換 – JR株の取得も存続の一案

【2025年1月16日】姫新線・芸備線・因美線の沿線自治体の議員が岡山県真庭市を訪れ、真庭市の太田市長と、赤字ローカル線の存続に向けた意見交換会を開きました。このなかで太田市長は、地元高校生による駅舎の活用をはじめ、イベントやキャンペーンなどの取り組みを紹介。駅前のにぎわい創出につながっていることを伝えたようです。

また、真庭市がJR西日本の株式を取得したことに関する議員からの質問を受け、太田市長は「株主として、JR西日本に意見を言える立場を生かしたい」と語り、他の沿線自治体も株式を取得することに期待を寄せたそうです。太田市長は、将来的には株主総会に出席して地元の意見を伝える考えも明らかにしました。

意見交換会に参加した津山市の中島議長は、「鉄道を残せと言うだけではJRも国も動かない。我々も知恵を出して、路線ごとのあるべき将来像を示していきたい」と話しています。

【解説】自治体が株主になれば赤字ローカル線の廃止を防げるのか?

この意見交換会は、岡山県と鳥取県の沿線自治体議員で構成される「芸備線・姫新線・因美線利用促進と存続をめざす議会議員連盟」が主催。真庭市の取り組みを参考に、赤字ローカル線への活動強化を目的として開催しました。

真庭市の取り組みのなかで議員連盟が注目したのが、JR西日本の株式取得です。真庭市は2024年7月に、JR西日本から3万4,000株を購入。取得費用は手数料を含めて、1億円です。これについて議員連盟からは、議会の反応などを太田市長に質問したようです。

さて、沿線自治体が鉄道事業者の株主となることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。そのひとつが、「株主としての発言権を強める」ことです。太田市長は、株式取得後におこなった地元メディアの取材に対して「資本参加により一定の責任を持ちつつ、JR西日本に必要な意見を伝えていく」と語っています。

また、「株で得た利益を利用促進などの取り組みに使える」ことも、沿線自治体からみたメリットです。ちなみに真庭市では、年間で約250万円の配当金を想定。利用者への運賃補助や利用促進イベントなどに活用するとしています。

鉄道事業者の株式取得をめぐる動きは、他の自治体でも広がりをみせています。日南線が通る宮崎県の日南市と串間市では、2016年にJR九州の株を取得。株主として路線存続をアピールしています。また、山陰本線が通る京都府亀岡市でも、JR西日本の株式購入を検討しています。こちらは路線存続というより、コロナの影響で減便された運行本数を「コロナ禍前に戻してほしい」という主張を通すのが目的のようです。

ほかの自治体でも、ローカル線の存続を目的に株式取得を検討しているところがあるかもしれません。ただ、どれだけ株を取得しても、鉄道の利用者減少に歯止めをかけられなければ、廃止の危機は拭えないでしょう。現にJR九州は、日南線(油津~志布志)のあり方に関する協議を沿線自治体に申し入れる考えを示しています。日南線の沿線自治体は、国鉄末期から協議会を設置して利用促進の取り組みをおこなってきました。それでも利用者の減少が続いたことでJR九州は、株主か否かは関係なく、存廃協議を申し入れようとしているわけです。

もっとも、鉄道が廃止されると不利益を被るのは沿線自治体ですから、株主として訴えていくことも有効でしょう。その一方で、「赤字路線を維持することで自分たちの利益が失われる」と考える株主もいます。2013年に起きた西武秩父線の「サーベラス騒動」は、その代表例でしょう。

当時、西武ホールディングスの筆頭株主であったサーベラスが、不採算路線の廃止を提案。これに西武鉄道や沿線自治体などが反発しますが、サーベラスはその後、西武ホールディングスの株式公開買い付け(TOB)を実行します。結果的にTOBは失敗し、西武秩父線などの廃止提案は撤回されますが、株主とのトラブルが、何の関係もない沿線住民に多大な心配と迷惑をかける騒動になったのです。

自治体が鉄道事業者の株主になること自体は、否定しません。むしろ、投資家として事業者を支援する点では、有意義な施策です。ただ、ローカル線の存廃に関する話は、事業者の経営や株主の問題ではなく「地域の問題」です。それを事業者の経営問題などにすり替えたところで、ローカル線の利用者数が増えるわけでもなく、鉄道は廃止されてしまうのです。

その他の鉄道協議会ニュース

大鰐線の廃止を了承 – 運行支援は2027年度末まで継続へ

【2025年1月15日】弘前圏の公共交通維持活性化市町村長会議が開かれ、2027年度末で休止としている弘南鉄道大鰐線の実質的な廃線方針を確認しました。2024年度内に、代替交通に関する検討組織を設置することも確認しています。

また、弘南鉄道は2030年までの中長期計画の見直し案を提示。観光誘致の強化や外部人材の登用などの経営改善策にくわえ、運賃の値上げも検討しているようです。値上げは2年以内におこなう見通しで、早ければ2026年4月に実施されるとしています。

これらの中長期計画を受けて、沿線自治体は大鰐線に対する支援を2027年度末まで継続することで合意しました。弘南鉄道の成田社長は支援継続に感謝しつつ「安全運行に努めて継続していきたい」と述べています。

※弘南鉄道大鰐線が休止に至るまでの経緯は、以下の記事で詳しく解説しています。

アクションプランの目標達成のみで存廃判断せず – JR北海道と沿線自治体が確認

【2025年1月16日】JR北海道の黄線区(輸送密度2,000人/日未満の線区)について、北海道は「アクションプランの達成状況だけで存廃を判断しない」と、JRや沿線自治体と確認したことを明らかにしました。

JR北海道と沿線自治体は、黄線区の収支改善をめざすアクションプランを2019年度から実施。2024年9月には、JR北海道が黄線区全体の赤字額を100億円以内にする「チャレンジ目標」を設定しています。この目標に対して沿線自治体からは「目標値が高すぎる」「目標達成か否かで存廃が決まるのか」といった声が噴出したようです。

そこで、北海道と沿線自治体、JR北海道は、改めて協議。チャレンジ目標については「収支改善の取り組みに努める方向性を示すもの」と定義し、達成状況だけで線区の存廃を判断しないことが確認されました。とはいえ、アクションプランの結果次第で、その後に存廃に関する協議が始まるとみられ、今後2年間の取り組みが黄線区の存廃に大きな影響を与える点は変わらないでしょう。

※JR北海道が示したアクションプランの「チャレンジ目標」については、以下の記事で解説しています。

JR久留里線の存廃決断を委ねた「君津市地域公共交通会議」が初開催

【2025年1月18日】君津市地域公共交通会議の初会合が開かれ、JR東日本は久留里線の久留里~上総亀山の廃止意向を改めて伝えました。

この日の会議には、君津市とJR東日本のほか、千葉県、国土交通省、地域代表などが出席。君津市は、2024年10月に沿線地域交通検討会議がまとめた検討結果報告書をもとに、これまでの経緯を説明しました。これに対して、君津商工会議所や観光協会からは「地元の意見を聞きながら、地域の足の確保を検討してほしい」といった要望が出されたそうです。

次回の地域公共交通会議は2025年3月に開催予定で、久留里線の将来について本格的な議論が始まります。

※久留里線の沿線自治体とJR東日本との協議の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。

のと鉄道に石川県が75億円を支援へ

【2025年1月17日】石川県議会の総務復興企画委員会が開かれ、能登地域の公共交通の再構築計画が報告されました。この計画は、2024年12月24日に開催された第2回石川県能登地域公共交通協議会の結果をまとめたものです。

このなかで、のと鉄道に対しては国の制度を活用して、2025年度から10年間で75億円を支援する方針を提示。具体的な支援内容として、被災した鉄道設備の改良やキャッシュレス化への対応、二次交通との接続強化などが挙げられています。また、金沢と能登を結ぶ特急バスの運行体系を見直し、事業者に対する支援を検討するとしています。

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