【NEWS】名鉄西尾・蒲郡線が2041年度まで存続へ – 蒲郡線はみなし上下分離に

名鉄西尾・蒲郡線の駅 協議会ニュース

【2025年3月19日】2026年度以降の「鉄道のあり方」が決まっていない名鉄西尾・蒲郡線(にしがま線)について、沿線自治体は存続の方針を決めました。

名鉄西尾・蒲郡線は、沿線自治体などの支援を受けながら運行していますが、支援期限は2025年度までです。一方で同線区の赤字額は増加傾向にあり、沿線自治体と名鉄は支援のあり方について協議を続けてきました。

今後の支援について、2026年度は従来と同じく2億5,000万円を沿線自治体が支援します。2027年度以降は、蒲郡線(吉良吉田~蒲郡)で「みなし上下分離」に移行。期間は15年間としています。これにより、西尾線の線区とあわせて2041年度までは存続させる方針です。

なお、みなし上下分離への移行により沿線自治体の負担は、年間4億~4億5,000万円に増える見通しです。これについて協議会では、国の補助金(社会資本整備総合交付金)の活用で負担軽減につなげると伝えています。

【解説】名鉄西尾・蒲郡線の存続に大きな決断を下した沿線自治体

名鉄と沿線自治体が議論しているのは、「名鉄西尾・蒲郡線対策協議会」という協議会です。協議対象線区は、西尾線の西尾~吉良吉田と蒲郡線の吉良吉田~蒲郡。これを一体で「西尾・蒲郡線(にしがま線)」とよばれています。

この線区を存続させるために、沿線自治体は2010年より年間2億5,000万円を財政支援しています。ただ、名鉄の赤字額は7億円超。名鉄のほうが負担は大きいのです。その赤字額が、コロナの影響や物価高騰などで増加しており、2023年度には8億7,866万円にまで膨らみます。これにくわえ、安全運行に必要な設備更新費の増加も見込まれました。

こうした状況に名鉄は、沿線自治体に支援の見直しを要請。2024年1月16日に「名鉄西尾・蒲郡線線区の将来像の検討勉強会」という組織を発足させ、財政支援の期限が切れる2026年度以降の「鉄道のあり方」について議論することになったのです。

勉強会では、住民アンケートなどの各種調査をはじめ、バスやBRTへの転換、第三セクターへの移行なども検討。さらに、国の社会資本整備総合交付金を見据えた課題なども議論されます。

そして2025年2月14日、勉強会は報告書をまとめます。このなかで、「バス・BRTへの転換は輸送力や費用負担に課題がある」「第三セクターへの移行は新規事業者を設立するハードルが高い」などの理由で、現実的な選択肢ではないと提言。鉄道の存続を前提に、名鉄が運行主体となる「上下分離方式か、みなし上下分離が望ましい」という結論に至ったのです。

この報告書をもとに、協議会では「上下分離方式」と「みなし上下分離」で議論されます。上下分離方式の場合、沿線自治体が第三種鉄道事業者になるなど手続きが大変ですし、土地や鉄道設備の譲渡などに莫大な資金も必要です。これに対してみなし上下分離であれば、現状のスキームから大きな変更がなく、イニシャルコストも少額で済みます。

こうした理由から協議会では、蒲郡線のみを「みなし上下分離」に移行することを決定したのです。

蒲郡線のみにした理由は、国の地域公共交通再構築事業に認められ、社会資本整備総合交付金を得るためでしょう。地域公共交通再構築事業の対象線区は、「輸送密度4,000人/日未満の線区が目安」とされています。2023年度の実績をみると、西尾線(新安城~吉良吉田の全線)は4,000人を超えていることから、蒲郡線のみを対象にしたようです。

もっとも、国の交付金は路線ごとではなく「線区」でも受けられる可能性はあります。西尾・蒲郡線(西尾~蒲郡)の輸送密度は2,609人/日(2023年度)ですから、蒲郡線のみに特定する必要はなかったでしょう。とはいえ、蒲郡線をみなし上下分離にするだけでも、自治体負担額は2億円近くアップします。西尾線(西尾~吉良吉田)もみなし上下分離に移行すれば、さらに増えるのは明白です。協議会は今後も続きますから、これからの課題として積み残した感じでしょう。

西尾・蒲郡線の存続方針を決めた後、西尾市の中村市長は「自治体の財政負担は増えるが、西尾市が発展するために必要不可欠な投資だ」と語っています。また蒲郡市の鈴木市長は「これまで以上に鉄道運行に深く関わっていく」と述べています。大きな決断を下した両市。名鉄と沿線自治体の協働作業は、これからも続きます。

※沿線自治体が年間2億5,000万円の財政支援を決めた経緯は、以下の記事で詳しく解説しています。

その他の鉄道協議会ニュース

秋田内陸縦貫鉄道でも2034年度までの財政支援が決定

【2025年3月17日】秋田県と北秋田市、仙北市は、秋田内陸縦貫鉄道に対する財政支援について、同社と基本合意書を締結しました。

秋田内陸縦貫鉄道は、これまで年間約2億円の財政支援を受けながら運行しています。ただ、沿線地域の過疎化や少子化、鉄道施設の老朽化などの影響で、支援額の増加が避けられない状況です。そこで県や沿線自治体は、国からの支援を強化するため鉄道事業再構築事業に申請。2025年1月に認められました。これにより、秋田内陸縦貫鉄道は2025年度から10年間の支援が確約されます。

基本合意書では、車両や鉄道施設の整備・修繕・更新に必要な費用は県が全額負担するほか、新たな費用負担のルールも検討されるようです。

※秋田内陸縦貫鉄道に対する沿線自治体の支援や協議の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。

成田空港付近の単線区間「複線化が必要」 – 国交省の検討会

【2025年3月14日】国土交通省は「今後の成田空港施設の機能強化に関する検討会(第2回)」を開き、鉄道アクセスについて議論されました。この検討会は2024年9月に設置。構成メンバーは、成田空港、国、千葉県、鉄道事業者、有識者などです。

今回の検討会では、成田空港アクセス鉄道の将来について議論。空港利用者の増加にともない、アクセス鉄道の輸送力増強について話し合われました。現在の成田空港には、JR東日本と京成電鉄が乗り入れていますが、いずれも空港付近の約9kmが単線区間のため増発が難しいとされます。この課題を解決するため、検討会では「輸送力増強には複線化が必要」として、メンバーの意見が一致したそうです。

なお、検討会は今後も続きますが、実際に複線化事業に進むかどうかは未定です。

交通税の本格議論も検討 – 滋賀県が新たな交通計画案を提示

【2025年3月17日】滋賀県は、2024年に策定した「滋賀地域交通ビジョン」の次の段階となる地域交通計画の骨子案を、県議会特別委員会で明らかにしました。

計画案には、県内の公共交通を現在と同じサービスで維持するには、年間61億4,000万円の公費負担が必要と試算。さらに、自動運転バスやライドシェアといった県がめざす将来の公共交通を実現するには年間87億1,000万円が必要とされ、トータルで年間148億5,000万円の公費負担になると示しています。

この財源として、計画案では「地域交通を支える税(交通税)のあり方について検討する」ことを提言。2024年の「滋賀地域交通ビジョン」より一歩踏み込んだ内容となり、交通税の議論が今後本格化しそうです。

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