【2026年2月5日】加古川線の利用促進などを検討するワーキングチーム会議が開かれ、大阪・関西万博期間中に実施した取り組みの結果が報告されました。この取り組みは、西脇市~谷川の存続・廃止をめぐる法定協議会の設置を求めていたJR西日本の提案で、万博期間中の2025年4月から10月に実施したものです。
報告によると、万博期間中の西脇市~谷川の輸送密度は、350人/日。コロナの影響で激減した2021年度(207人/日)と比べて、1.7倍に増えたと伝えています。
一方で、JR西日本は「依然として厳しい状況が続いている」として、効果の持続性などを分析する「勉強会」の設置を沿線自治体に提案。利用促進と並行して、新たな協議組織を懇願しています。
■加古川線(西脇市~谷川)の輸送密度の推移

出典:JR西日本「加古川線(西脇市~谷川駅間)におけるご利用状況について」をもとに筆者作成
【解説】利用者が増えても厳しい状況が続く加古川線の西脇市~谷川
兵庫県では、加古川線をはじめ利用者が少ない線区の沿線自治体とJR西日本が協議する「JRローカル線維持・利用促進検討協議会」を、2022年6月に設立しています。協議会では、線区ごとにワーキングチームを設置。加古川線では「JR加古川線(西脇市-谷川間)維持・利用促進ワーキングチーム」という組織で、さまざまな取り組みを進めています。
ただ、鉄道の「あり方」の話がしたいJR西日本に対して、沿線自治体は利用促進の検討を優先。JR西日本は、沿線自治体に不信感を抱いていました。
沿線自治体による利用促進は、2023年4月からスタート。その翌年にJR西日本は、加古川線の沿線自治体に、鉄道の存廃に踏み込んで話し合う法定協議会の設置を申し入れます。沿線自治体からみれば、利用促進をおこなっている途中であり効果検証もできていません。それに、2024年6月には沿線住民が主体の「利用促進地域協議会」が設立。住民を巻き込んだ取り組みは、これからです。
こうした事情もあって沿線自治体は2024年7月のワーキングチーム会議で、法定協議会の設置は「もう少し待ってほしい」と懇願します。そこでJR西日本は、大阪・関西万博が終了するまで法定協議会の設置を待ち、それまでに一定の効果が現れなければ協議を始めることを提案。これに、沿線自治体が同意します。
JR西日本が「万博終了時」で期限を切ったのは、大きなイベントで集客が見込めるチャンスだからです。一般的に、大きなイベントがあると鉄道の利用者は増えます。それでも加古川線の利用者が増えなければ、「沿線住民に必要とされない路線」という見方もできるのです。
万博と加古川線の利用者増加は関係なかった?
こうして、西脇市~谷川の沿線自治体とJR西日本は、大阪・関西万博が開催される2025年4月から10月までの半年間に、本格的な利用促進を実施します。
JR西日本は、西脇市~谷川で臨時列車を2往復(4本)増発。さらに、福知山線で運行する特急こうのとりを谷川駅に臨時停車させ、加古川線の乗客が乗り継げるように利便性を向上させます。いずれも、万博期間中は毎日実施しました。
しかし、結果は不甲斐ないものでした。増発した臨時列車の乗車人数は、1本あたり平均で10.5人。谷川駅で特急列車に乗り換えた客は、1本あたり0.6人。土日などに限れば、もっと多くの利用者がいたと推測されますが、これらの施策には「効果がなかった」のです。
とはいえ、西脇市~谷川の輸送密度は増加しています。加古川線の利用者数は、なぜ増えたのでしょうか。その答えは「定期客数の増加」でした。
■各駅乗車人員(新西脇~久下村駅間)

2025年度(4月~10月)の定期客数は、121人です。この数値はコロナ前の2019年度(91人)より増えています。駅別にみると、黒田庄駅が43人で前年度(23人)と比べて、ほぼ倍に。本黒田駅なども年々増加しています。
定期客が増えた理由として、自治体が通学定期券の購入費を助成していることが挙げられます。協議会によると、2024年度には61人が定期代の助成を受けており、その数は年々増加傾向にあるようです。ほかにも、団体利用客や社会学習で加古川線を利用する学校などにも運賃を助成しており、2024年度は約900人が利用しています。
加古川線では、万博の効果は極めて限定的でしたが、自治体の利用促進事業は成功しているのです。
西脇市~谷川は今後どうなる?
JR西日本は、万博期間中の各種取り組みで利用者が増えなければ「法定協議会の設置を申し入れる」と伝えていました。しかし、結果として利用者は増えたため、法定協議会の申し入れを撤回します。
とはいえ、輸送密度はわずか350人/日。バスで運べる人数です。また、西脇市~谷川の赤字額は2憶5,000万円、営業係数は1,758(2024年度)。JR西日本としては、見て見ぬふりができない状況でしょう。
そこでJR西日本は、加古川線の将来を検討する「勉強会」の設置を沿線自治体に提案します。具体的にどんな「勉強」をするのかは不明ですが、そもそもJR西日本は鉄道の「あり方」について協議する場を求めているわけですから、鉄道を維持するための方法(上下分離方式など)の「勉強」もするかもしれません。あるいは、JR九州の指宿枕崎線や日南線で進めている任意協議会のように、有識者を交えて「沿線のまちづくり」を含めた勉強も想定されるでしょう。
西脇市~谷川の鉄路をめぐる議論は、今後さらに活発化しそうです。
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参考URL
加古川線(西脇市~谷川駅間)におけるご利用状況について(JR西日本)
https://www.westjr.co.jp/press/article/items/251224_00_press_Kakogawaline_goriyoujokyo.pdf
令和6年度の取組結果一覧 加古川線WT(兵庫県)
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk05/documents/02_torikumiitiran.pdf
