週刊!鉄道協議会ニュース【2024年11月3日~11月9日】

函館本線を走る貨物列車 協議会ニュース

今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、JR函館本線(函館~長万部)の維持を貨物の観点から議論する検討会議が開かれた話や、JR津軽線(蟹田~三厩)の廃止時期は2027年春をめざすとJR東日本が明らかにした話など、さまざまなニュースをピックアップしました。

函館~長万部の鉄道は誰が維持する?貨物の視点から検討会開催

【2024年11月6日】国土交通省と北海道は、函館本線の貨物輸送における将来の「あり方」に関する検討会議を開催しました。

この会議は、北海道新幹線の札幌延伸でJR北海道から経営分離される線区(函館~長万部)の維持や負担について議論することを目的に、2023年11月に設置。4回目となる今回は、JR貨物の列車を利用する荷主など物流関係者へのヒアリングを実施しました。

会議に参加した北海道の担当者は、北海道新聞の取材に対して「意見聴取の結果を受け、今後の進め方を精査していく」と述べています。なお、検討会議は2025年度中に結論を出す予定です。

【解説】検討会議のヒアリングで物流事業者が語った「貨物鉄道の必要性」

整備新幹線の開業にともないJRから経営分離される並行在来線は、沿線自治体などが出資する第三セクターに継承されるのが通例です。そのためJR貨物の列車も、経営分離後は第三セクターの線路を使用して物流ネットワークを維持してきました。

しかし、函館本線の新函館北斗~長万部の場合、特急利用者が9割以上を占め、北海道新幹線が札幌まで延伸開業すると大半の人が新幹線に移ると想定されます。ちなみに、新函館北斗~長万部の普通列車のみの輸送密度は191人/日(2018年度)。経営分離後の収支は年間で約14億円の赤字とされ、沿線自治体は旅客列車の維持に懐疑的です。

とはいえ、この線区では1日に約40本もの貨物列車が走っています。そこで、貨物の観点から函館~長万部を、どのような方法・枠組みで維持するのかを有識者や関係者と協議する機関として設置されたのが「北海道新幹線札幌延伸に伴う鉄道物流のあり方に関する有識者検討会議」です。

第1回の検討会議は、2023年11月29日に開催。その後、第2~4回は物流事業者や荷主、海運関係者など10の企業・団体にヒアリングを実施しました。これまでのヒアリングでは、関係者より以下のような意見が出されています。

  • 食品飲料・日用品関係は、トラックより安価という理由で鉄道を選ぶ荷主が多い。出版書籍関係では、長距離を同一ダイヤで大量輸送できることや消費地に近いところに貨物駅があることが選ぶ理由として多い。(日本通運)
  • トラックに切り替えると、常温品の輸送には年間約2,500台を用意しなければいけない。途中でフェリーを使う場合も、港までのトラック輸送が増える。CO2排出量も、約11倍に増えると見ている。(雪印メグミルク)
  • 貨物鉄道から海上輸送に転換するのは、単に船が空いているか否かだけの話ではない。鉄道より工程が複雑化するなどさまざまなデメリットが生じ、多くのハードルやリスクが出てくる。(ホクレン)

国土交通省「北海道新幹線札幌延伸に伴う鉄道物流のあり方に関する有識者検討会議」の第2回・第3回の議事概要より筆者リライト

物流事業者からみると、鉄道は輸送手段の選択肢のひとつにすぎません。しかし、荷主のニーズに応じるには鉄道が優位になることもありますし、2024年問題や環境問題を鑑みると「貨物鉄道は必要」という意見が多く出されたようです。

こうした声から今後の検討会議では、函館~長万部の鉄道を維持する方向で進むと考えられます。ただし、「鉄路は誰が保有するのか」「維持費は誰がどれだけ負担するのか」といった話は、まだ議論されていません。結論は2025年度中に出す予定ですが、これからの1年半で話がまとまるのか注目されます。

その他の鉄道協議会ニュース

JR津軽線の廃止時期は2027年春に – 沿線自治体と正式合意をめざす

【2024年11月5日】JR東日本は、津軽線の蟹田~三厩の正式な廃止時期について、2027年春をめどに手続きを進めていることを明らかにしました。

同線区は2024年5月に、沿線自治体が鉄道の復旧を断念。自動車交通による代替交通への転換が決まっています。ただ、JR東日本と沿線自治体が設立する代替交通のNPO法人について、それぞれの参画方法などは決まっていません。協議はすでに始まっていますが、これについてJR東日本は2024年度中に沿線自治体や青森県と正式合意をめざすと説明。2026年度中にはNPO法人を設立し、2027年春からは新たな公共交通体系でスタートしたいと話しています。

※津軽線(蟹田~三厩)が廃止に至るまでの経緯は、以下のページで詳しく解説しています。

「言い争っても仕方がない」和歌山県知事がJR西との連携を強調

【2024年11月5日】和歌山県の岸本知事は、定例記者会見で「県とJR西日本は『運命共同体』として、利用者を増やせるよう協力していく」という考えを示しました。これは、同年10月29日にJR西日本が公表した線区別収支に対する意見として述べたものです。和歌山県では、紀勢本線の白浜~新宮が約29億円の赤字とされました。

岸本知事は、県などが取り組んでいる観光キャンペーンにJR西日本も「WESTERポイント還元キャンペーン」などで利用促進に協力していることや、沿線自治体も利用促進の取り組みに協力していることを挙げ、「言い争っても仕方が無い。互いに協力し、コロナ禍前の水準まで利用者を回復させたい」と紀勢本線の利用者増加をめざしていく考えを述べています。

※紀勢本線の白浜~新宮をめぐる沿線自治体とJR西日本との協議の流れは、以下のページで詳しく解説しています。

広島県知事と安芸高田市長が公共交通の将来について意見交換

【2024年11月7日】広島県の湯崎知事と安芸高田市の藤本市長は、公共交通の将来のあり方に関する意見交換をおこないました。このなかで、路線バスをはじめ公共交通の維持に向けた具体的な取り組みについて、県と市が連携して議論を深めていくことを確認しました。

なお、安芸高田市は2024年10月16日に開催されたJR芸備線再構築協議会に初参加しましたが、この日の会談では芸備線の話題は出なかったそうです。

会談後の記者会見で、湯崎知事は「赤字額を抑えながら利便性を確保するために、知恵を出し合いたい」とコメント。藤本市長は「財政的に厳しいが、利用者に欠かせない交通手段なので維持できる方法を考えたい」と述べました。

※芸備線再構築協議会のこれまでの流れは、以下のページで詳しく解説しています。

JR小海線を活用した観光モデルコースを視察 – 北杜市の協議会

【2024年11月6日】山梨県北杜市の商工会や観光協会などで構成される「八ヶ岳南麓エリア活性化協議会」は、小海線を活用した観光モデルコースの整備をめざし、列車で沿線を視察しました。

協議会のメンバーは小淵沢駅近くのワイナリーを訪問後、小淵沢駅から貸切列車に乗車。車窓から見える吐竜の滝や紅葉などの景色を確認しました。視察後には意見交換会が開かれ、イベント企画や地元の食や酒を楽しむ観光列車の運行など、利用促進のアイデアが出されたそうです。今後はJR東日本とも連携し、2025年度中に観光モデルコースの整備をめざすとしています。

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