【NEWS】富山地鉄が存廃議論の終結宣言 – 本線もみなし上下分離で決着へ

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【2026年9月29日】富山地方鉄道本線の「あり方」をめぐる部会が開かれ、富山県と沿線自治体は、みなし上下分離により存続させる方針で合意しました。みなし上下分離を導入する対象線区は、鉄道線の全路線です。これにより、立山線や不二越・上滝線を含めて、全路線の存続が確定しました。

この日の部会で富山県は、今後10年間で想定される全路線の維持管理費(約78億円)の負担割合を提示。富山地方鉄道が2分の1を負担し、残る2分の1を県と沿線自治体が「1対1」の割合で分担します。なお、自治体ごとの負担割合は今後の協議で決まります。

また維持管理費とは別に、富山県は鉄道施設の機能向上や駅舎改修などの投資計画も提案。国の鉄道事業再構築事業を活用し、富山地方鉄道を支援する考えも示しました。

事業者と自治体の役割や負担割合が決まったことを受け、富山地方鉄道の新庄社長は「この回答をもって、存続・廃止議論は終えたい」と明言。一部線区で進めていた廃止手続きを撤回する考えを伝えています。

【解説】全線存続が決まっても「自治体間の負担割合」が課題に

富山地方鉄道をめぐる存廃議論は、2026年度より富山県が主宰する「富山地方鉄道鉄道線再構築検討会」で話し合っています。検討会は「本線」「立山線」「不二越・上滝線」の3つの部会に分けて議論。このうち立山線と不二越・上滝線の部会では、線路・電気設備・車両など鉄道施設の維持費を公費で負担する「みなし上下分離」を軸に、存続に向けて協議を続けています。

一方で本線は路線長が長く、赤字額も大きく、さらに関係自治体が多いため、議論を慎重に進めてきました。とくに、あいの風とやま鉄道と並走する滑川~新魚津の線区については、赤字額を減らすうえで廃止を含めた検討もされてきました。

しかし、富山県が再試算した収支シミュレーションで「滑川~新魚津を廃止にしても赤字額に大差がない」ことが報告されます。くわえて、「本線がもたらす社会便益は年間で123億5,800万円になる」と、黒部市などが提示。これらの試算結果などから、沿線自治体は「本線を全線維持する」方針を、第2回本線部会(2026年7月21日開催)で決めたのです。

ただ、「どのような方法で維持するのか」「誰がどれだけ負担するのか」といった具体的な方策は決まっていませんでした。その方策について、2026年9月29日に開かれた第3回本線部会で富山県が提案。本線も「みなし上下分離」を導入することで、沿線自治体は同意します。

これにより、立山線、不二越・上滝線を含めて、富山地方鉄道の鉄道線は全線みなし上下分離で維持することが決まったのです。

富山地鉄も鉄道施設の維持費を半分負担

第3回本線部会では、線路や電路、車両の維持費といった鉄道施設の維持費と負担割合も示されました。その額は、今後10年間で約78億円(立山線・不二越・上滝線も含む)。この負担割合について、富山県は次のように提案しています。

  • 富山地方鉄道:2分の1(39億円)
  • 富山県:4分の1(19.5億円)
  • 沿線自治体:4分の1(19.5億円)

ここで注目すべきポイントは、富山地方鉄道も「下」の維持費の半分を負担するという点です。

一般的に、みなし上下分離を導入する場合、「下」の維持費は自治体が全額負担するのが通例です。もしくは「車両の維持費は事業者が負担する」など、項目を細かく分類したうえで、自治体負担額を決めていきます。

富山地方鉄道の場合、「下」全体で「事業者も半分負担する」という取り決めになりました。富山地方鉄道の鉄道部門の赤字額は、6億6,903万円(2025年度)。県や自治体から約3億9,000万円の支援を受けたとしても、赤字は解消しません。

しかし富山地方鉄道は、この負担割合に賛同しました。その理由として、「地域公共交通を支える事業者としての責任と利益追求のバランス」を挙げています。自治体だけに過度な負担を求めず、「双方が持続可能な形でリスクを分け合う」という判断です。

富山地方鉄道の新庄社長は、以前から「(自治体と)一緒に担っていただけないかと問いかけてきた」「公費負担が大きくなるなど、いずれにも負担が偏らないような状況にならないかということを言ってきた」と、自社も負担する姿勢を示していました。そのため、それぞれが2分の1ずつ負担することに納得した様子です。

また、下の維持費とは別に、富山県と沿線自治体は「鉄道施設の機能を向上させるための投資」をおこなうことも提示しています。具体的には、「中古車両の導入」「変電所の更新」「駅舎改修」「パークアンドライドの整備」「クレジットカードによるタッチ決済の導入」などです。

これらの投資の一部は、国の鉄道事業再構築事業を活用することで、自治体が全額負担する方針です。負担割合は、国が2分の1、県が4分の1、沿線自治体が4分の1を想定。富山地方鉄道の負担はありません。

こうした手厚い支援を受けることで、富山地方鉄道は「自社の負担が軽減し、鉄道を維持できる環境になる」「攻めの取り組みもでき、利益を出すことにも繋がっていく」と判断。沿線自治体の決断に、感謝の意を伝えています。

単なる「赤字の穴埋め」ではなく、「未来への投資」として事業者を支援していく。鉄軌道王国・富山らしい考えが表れた施策といえるでしょう。なお、下の維持費以外の投資額は、今後10年間で50億円規模になる模様です。

今後の課題は「自治体間の負担割合」

富山地方鉄道からみれば、維持費に関する負担割合が決まったことで「存続・廃止議論は決着した」という考えです。ただ、自治体からみると「自治体間の負担割合」が決まっておらず、決着したとは言い切れない状況でしょう。第3回本線部会では、「県と沿線自治体の負担割合」や「沿線自治体(7市町村)間の負担割合」に関して、議論が紛糾した模様です。

まず、「県と沿線自治体の負担割合」について。

富山県は、あいの風とやま鉄道に移管されるJR城端線・氷見線のケースを例に、それぞれの負担を「1対1」にしたとしています。富山県としては、県と沿線自治体が「同等の負担」で維持したい考えです。これに対して一部の自治体からは、「県の負担割合を増やせないか」という意見が出ています。財政力の脆弱な沿線自治体からみれば、数千万円もの公費負担が毎年続くことを警戒している様子です。

「沿線自治体(7市町村)間の負担割合」についても、「何を基準にして割合を決めるか」で、ひと悶着があったようです。

たとえば滑川市は、「市町村ごとの乗降客数」で割合を決めてほしいと主張しています。滑川市では、あいの風とやま鉄道の利用者数のほうが多いことから、利用者数の少ない富山地方鉄道への負担割合を抑えたい考えです。これに対して立山町は、「観光客の利用者数は反映させるべきではない」と主張。沿線住民の利用者数で決めてほしいと訴えます。観光利用の多い立山町からみれば、頑張って観光誘客をするほど負担が増えるようなルールだと「やってられない」となるでしょう。

ちなみに、JR城端線・氷見線のケースでは、乗降客数のほかにも「駅数」「運行本数」「固定資産税額」などをもとに、沿線4市の負担割合を決めたそうです。一部の自治体が不利にならないよう、多角的な視点で負担割合を決めることが大事でしょう。

なお、富山地方鉄道に対する支援は2027年度から始まる予定です。つまり、今年中には「鉄道事業再構築実施計画」を策定したり、各自治体の予算編成に富山地方鉄道への支援を含めたりと、対応すべきことが山積しています。次回の本線部会(2026年11月開催予定)では、みんなが納得する負担割合を決めることが求められます。

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参考URL

富山地方鉄道鉄道線再構築事業の事業構造の変更(案)及び費用負担(富山県)
https://www.pref.toyama.jp/documents/57124/06_shiryo3jigyokozohenko.pdf

再構築国庫補助事業費及び費用負担(富山県)
https://www.pref.toyama.jp/documents/57124/07_shiryo4saikoshikukokkohojo.pdf

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