今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、吾妻線で第2回沿線地域交通検討会議が開かれた話題や、芸備線再構築協議会の幹事会が開催されたニュースなどをお伝えします。
JR吾妻線沿線の高校生にアンケート調査実施へ – BRT転換も視野か?
【2024年7月8日】吾妻線(長野原草津口~大前)のあり方を検討する「JR吾妻線沿線地域交通検討会議」の第2回が開催され、ウェブ形式による住民アンケートを実施することが確認されました。
今回のアンケート対象者は、沿線に住む高校生とその保護者の約400人です。質問内容は「通学時の移動手段や時間」「部活動などで吾妻線を利用する頻度」といった利用状況を確認するほか、路線バスやBRTに転換されたときの利用意向なども尋ねるそうです。アンケートは7月中旬以降に実施され、次回の検討会議で報告される予定です。
利用者の約8割を占める通学定期客が大幅減の吾妻線
JR東日本は2024年3月22日に、吾妻線の長野原草津口~大前の存続・廃止に関する協議を、沿線自治体に申し入れました。沿線自治体は「JR吾妻線沿線地域交通検討会議」を設置。同年5月23日に第1回が開催されています。
第1回の検討会議では、該当線区の利用者の約8割が通学定期客であることから、まずは利用者の意向を把握することで合意。7月8日の第2回検討会議で、住民アンケートの内容が確認されました。この質問のなかには「バスやBRTに転換したとき、どれくらい利用するか」といった内容もあるそうです。
もちろん、このアンケートだけで吾妻線の将来が決まるわけではありません。ただ、今回アンケートの対象になる高校生の人数は、将来大きく減少することが予測されています。
2019年に群馬県と沿線自治体がまとめた資料によると、2015年を基準に、20年後の2035年には通学定期客が約44%も減少すると報告されています(渋川~大前の全線の減少率)。これだけ減ると、観光誘客などの利用促進だけでは鉄道の維持が難しくなるでしょう。
■吾妻線の通過人員の将来推計
上の図は、吾妻線の通過人員の将来推計です。こちらも2015年を基準に、20年後の2035年に利用者がどれくらい減少するかを示しています。わずか20年で、長野原草津口~羽根尾では40%以上の減少(青のライン)、羽根尾~万座・鹿沢口では25%以上の減少(水色のライン)が見込まれています。
この減少率を、現状の長野原草津口~大前の輸送密度に当てはめると、2035年には200人/日を割り込む予測です。将来的には鉄道の維持が難しくなり、スクールバスなどへの転換も視野に入るかもしれません。ちなみに嬬恋町では以前より、小中高の生徒が使えるスクールバスを運行しています。
該当線区には、長野原高校と嬬恋高校の2校があり、全校生徒数はいずれも100人前後です。渋川方面の高校に通う生徒も一定数いると考えられますから、仮に鉄道が廃止になる場合には、通学負担ができる限り軽くなるような公共交通の再構築が求められるところです。
※吾妻線の沿線自治体とJR東日本との協議の流れや、これまで沿線自治体が実施してきた利用促進などの取り組みは、以下のページで詳しく解説しています。
その他の鉄道協議会ニュース
芸備線再構築協議会の第2回幹事会で「調査事業」の案を提示
【2024年7月10日】芸備線再構築協議会の第2回幹事会が開催され、これから実施する「調査事業」の案が示されました。具体的な調査内容として、沿線住民の移動実態や公共交通の利用状況を把握したり、自動車交通や二次交通との接続環境を確認したりと、「芸備線の多様な可能性」を追求するためのデータを収集します。そのデータを分析し、新たな需要創出を図るための施策を検討する流れです。
調査は外部コンサルタントに委託する予定。次回の再構築協議会で調査事業の概要を確認し、その後、コンサルタント会社をプロポーザル方式で公募するとみられます。委託費用は、約2,000万円だそうです。幹事会に参加した岡山県の担当者(県民生活部長)は、「沿線住民の利便性が向上するなど、未来に希望が持てるように検討していきたい」と述べています。
※芸備線再構築協議会の協議の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。
南阿蘇鉄道で全線復旧後初の株主総会 – 2023年度は約2,000万円の黒字に
【2024年7月9日】熊本県の南阿蘇鉄道で株主総会が開催され、2023年度の決算が報告されました。当期純利益は約2,073万円の黒字。鉄道事業は1,046万円の赤字でしたが、小売などの収益が増えたことで黒字になったようです。南阿蘇鉄道は熊本地震で大きな被害を受けましたが、2023年7月に全線復旧。上下分離方式を導入し、沿線自治体の支援を受けながら運営しています。
※南阿蘇鉄道が全線復旧するまでの流れや、沿線時自体が上下分離方式を受け入れた経緯については、以下のページで詳しく解説しています。
JR千歳線のボールパーク新駅の工事着手へ – 2028年開業予定
【2024年7月11日】北海道の北広島市とJR北海道は、北海道ボールパークFビレッジ付近に設置する千歳線の新駅について、2024年秋ごろに着工すると発表しました。
この新駅は、日本ハムファイターズのエスコンフィールド球場から約300mの位置。北広島市の請願駅で、協定工事費は約80億円、設計費や北広島駅構内の線路新設などを含めた総工事費は約90億円です。駅舎は3階建てで、デザインは北広島市とJR北海道が意見交換を重ねて決めました。開業は2028年夏ごろを見込んでいます。
なお、工事費の一部はふるさと納税で寄付を募っています。詳しくは、北広島市のホームページでご確認ください。
※JR新駅建設プロジェクトへの応援(北広島市)
https://www.city.kitahiroshima.hokkaido.jp/hotnews/detail/00152030.html