【NEWS】JR北海道の黄線区に上下分離方式も提案へ – 自治体の反発必至か?

JR北海道の黄線区を走る列車 協議会ニュース

【2026年4月8日】JR北海道が単独での維持が困難とする「黄線区(輸送密度200~2,000人/日の線区)」の存続に向け、沿線自治体に対し上下分離方式を提案していることが明らかになりました。釧網本線や日高本線など一部の沿線自治体には、すでに説明したようです。

この動きに、北海道から慎重な姿勢を示す声が挙がっています。2026年4月8日に開かれた道議会の特別委員会では、議員から「財政の厳しい自治体には負担が重すぎる」「黄線区すべてが上下分離方式になじむ環境ではない」といった異論が相次ぎました。

また、北海道の鈴木知事は4月10日の定例記者会見で、JR北海道からの公式発表はないとしたうえで「上下分離方式ありきではないと(担当者から)説明を聞いている。ただ、地域が主体となって鉄道を維持していくのは、課題が多く容易ではない」などと述べています。

JR北海道は、国から2026年度末までに抜本的な改善策をまとめるよう求められています。その期限まで1年を切り、各地域との調整が本格化する見通しです。

【解説】黄線区の上下分離は妥当か?重すぎる負担と現実解

北海道の鈴木知事の発言にもあるように、黄線区の上下分離方式に関するJR北海道からの公式発表は、2026年4月11日現在で何もありません。ただ、上下分離方式に関しては、2016年にJR北海道が「当社単独では維持することが困難な線区」を公表した際に「案のひとつ」として提示しています。

ア 設備の見直しやスリム化、ご利用の少ない駅の廃止や列車の見直しによる経費削減
イ 運賃値上げによりお客様に応分の負担をしていただく方法
ウ 沿線の皆様に日常的に鉄道をご利用いただく利用促進策
エ 運行会社と鉄道施設等を保有する会社とに分ける上下分離方式

出典:JR北海道「当社単独では維持することが困難な線区について」

上下分離方式を含めたこれらの案を、JR北海道は10年前にも提示しました。これに対して自治体からは、強い反発の声が挙がったのです。とくに上下分離方式に関しては、自治体負担が重すぎると抵抗。これを受けてJR北海道は、自治体が協力できる範囲で上記の「ア」「イ」「ウ」の取り組みを進めることになります。

あれから10年。利用促進をしたところで利用者が劇的に増えたわけでなく、設備の見直しや駅を廃止したくらいでJR北海道の経営が改善したわけでもありません。こうした「効果が限定的な取り組み」を、JR北海道と沿線自治体は10年も続けてきたわけです。

一方、JR北海道に支援を続ける国としては「いつまでやり続けるのか?」というのが本音でしょう。国も、黄線区のみに対する支援をしてきました。2024年度からの3年間だけでも、黄線区の設備投資などに67億円を支援する予定です。しかし、その額に見合う効果が現れていないことに、国は不満を感じています。

2018年に発出した監督命令で、国は「線区ごとに事業の抜本的な改善方策を確実にとりまとめる」ように命じました。期限は2026年度末です。JR北海道としては、「ア」「イ」「ウ」の取り組みだけでは黄線区を維持できず、次の一手として「上下分離方式」を提案するのは当然の流れでもあるのです。

黄線区すべてを上下分離にするのは不可能?

とはいえ、黄線区すべてに上下分離方式を導入するのは、現実的ではないでしょう。なぜなら、「路線長が長いわりに沿線人口が少ない」からです。

ここで、黄線区の営業キロと輸送密度、赤字額を一覧にまとめます。

■JR北海道の黄線区の営業キロ・輸送密度・赤字額(2024年度)

営業キロ輸送密度赤字額
石北本線(新旭川~網走)234.0km669人/日49億9,900万円
宗谷本線(名寄~稚内)183.2km273人/日27億2,900万円
釧網本線(東釧路~網走)166.2km378人/日19億1,900万円
根室本線(釧路~根室)135.4km217人/日13億5,200万円
室蘭本線(沼ノ端~岩見沢)67.0km327人/日10億7,100万円
富良野線(旭川~富良野)54.8km1,304人/日12億900万円
根室本線(滝川~富良野)54.6km457人/日11億円
日高本線(苫小牧~鵡川)30.5km388人/日4億1,400万円
合計925.7km147億9,400万円
参考:JR北海道「2024年度線区別の収支とご利用状況について」をもとに筆者作成

8線区のうち4線区が100km超の線区です。

ちなみに、日本で営業キロが100kmを超える鉄道に上下分離方式を導入しているのは、三陸鉄道(163.0km)、青い森鉄道(121.9km)、京都丹後鉄道(114.0km)などがあります(みなし上下分離は除く)。

三陸鉄道の場合、鉄道用地とトンネル・橋梁などの一部施設を沿線自治体が保有。その他の鉄道施設は三陸鉄道が保有しています。なお、三陸鉄道が保有する施設の修繕・維持管理費は、岩手県と沿線自治体が負担。自治体負担額は、2019年から10年間で約68億円です。

青い森鉄道では、鉄道用地・施設いずれも青森県が保有。保守管理費用は県が負担しています。また、線路使用料は青い森鉄道の経営状況に応じて増減するしくみです。

京都丹後鉄道は、民間事業者のWILLER TRAINSが運行し、鉄道施設や車両などは第三セクターの北近畿タンゴ鉄道が保有します。北近畿タンゴ鉄道には、京都府や兵庫県など沿線自治体が支援しており、2025年度から10年間の自治体負担額は約267億円です。

いずれも府や県も負担していますが、これらの鉄道と比べてJR北海道の黄線区は路線長が長いわりに沿線人口が少なく、自治体の財政基盤は脆弱です。なお、上下分離にともなう自治体負担額と、赤字額は別物です。それでも、数億から数十億単位の負担が生じるのは確実でしょう。

「沿線自治体では無理なので、北海道が維持すべきだ」という声もありますが、北海道も財政的に厳しいでしょう。

上下分離ではありませんが、北海道は道南いさりび鉄道に対する赤字補てんもおこなっています。また、北海道新幹線が札幌まで延伸開業したときに経営分離される函館本線(函館~長万部)も、北海道に何らかの支援が求められます。

仮に、これらの線区と黄線区を管理するとなれば、北海道は1,100km以上の鉄道を保有し、負担額は年間200億円近くになります。北海道の人口は、2025年に500万人を割り込みました。今後も人口減少は続く見通しです。財政も逼迫するなかでこれだけの長大路線を担うのは、現実的な解とはいえません。

選択は不可避。国の支援を得られる線区は?

黄線区の維持には、国の支援が不可欠です。しかし国は、これまで1兆円をはるかに超える支援をJR北海道に対しておこなってきました。支援額は増え続けており、「現状維持」がいつまでも許されるわけではありません。「鉄道として残す路線」と「他の交通モードに転換する路線」の選択が、いずれ必要になってきます。

では、国の支援を得ながら存続できるのは、どの線区でしょうか。

ひとつの考え方として、「鉄道でなければ地域輸送をまかなえない線区」は、鉄道の役割が大きいといえます。つまり、バスでは運べないほどの利用者がいる線区です。

たとえば、富良野線の輸送密度は1,000人/日を超えます。バスドライバーが多かった時代であればともかく、現状ここをバス転換することが果たして可能なのか、検証が必要です。観光利用も多い路線ですから、鉄道がもたらす地域経済効果を調べて国にもメリットがあると伝えられたら、支援を得やすくなるでしょう。

観光といえば、釧網本線も鉄道のメリットを生かせる路線かもしれません。ただ、日常利用は極めて少なく、観光だけで維持するのは難しいと思います。

もうひとつの観点として、貨物列車が走る路線は「国家的な物流網」の一部ですから、国の支援を引き出せる可能性があります。黄線区でいえば、根室本線の滝川~富良野、室蘭本線の沼ノ端~岩見沢、石北本線が該当します。

国は、貨物列車が走る路線を「基幹的鉄道ネットワーク」と位置付け、原則JR各社が維持するように求めています。しかし、JR北海道が維持できないと言っているわけですから、株主でもある国が支援を拡充することも考えられます。ただし、他の路線や交通モードで代替できる場合は、支援の拡充が難しいかもしれません。

いずれにせよ、国だけでなく沿線自治体も支援しなければ、黄線区は存続できません。各線区の特徴を生かしつつ、北海道と沿線自治体が当事者意識を高めて「なぜ鉄道が必要なのか」「鉄道を生かした地域づくりが可能か」といった観点からも議論することが大事です。

そのうえで、JR北海道に対する支援を「将来への投資」と捉えることができれば、存続の道が開けるでしょう。支援を「負担」と考えているうちは、どんな理由を叫んでも赤字ローカル線を維持することが難しい時代なのです。

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参考URL

当社単独では維持することが困難な線区について(JR北海道)
https://www.jrhokkaido.co.jp/pdf/161215-5.pdf

JR北海道・JR四国・JR貨物に対する支援(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001730651.pdf

三陸鉄道の鉄道事業再構築事業の概要(国土交通省)
https://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/content/000341446.pdf

青い森鉄道の鉄道事業再構築事業の概要(国土交通省)
https://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/content/000341409.pdf

北近畿タンゴ鉄道の鉄道事業再構築実施計画の認定について(国土交通省)
https://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/content/000339148.pdf

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