【NEWS】多数決に委ねた平成筑豊鉄道の未来は「バス転換」で決議

平成筑豊鉄道の車両 協議会ニュース

【2026年3月25日】の将来の方向性をめぐり、福岡県は路線バスへ転換する方針を示しました。

方向性を決めるにあたり、沿線9市町村などで構成される法定協議会では「鉄道(上下分離方式)」「BRT転換」「路線バス転換」の3つから1つを選ぶ書面決議を実施。その結果、路線バスが有効投票数の過半数を占めたと伝えています。一方で、転換後のバス事業者やダイヤ、ルートといった具体的な内容は決まっていません。運転士確保や財源確保などの課題も、今後の協議で解決をめざすとしています。

法定協議会は2026年度の早い段階で、地域公共交通計画を策定する見通しです。なお、バス転換の時期や平成筑豊鉄道の最終運行日は未定です。

【解説】スピード感と負担にとらわれすぎた協議会

平成筑豊鉄道の将来は、「平成筑豊鉄道沿線地域公共交通協議会」で2025年1月から議論されてきました。この協議会は、福岡県が主宰。沿線自治体としては、平成筑豊鉄道の筆頭株主でもある福岡県からの支援を期待したと思われます。

一方、まとめ役となる福岡県からみれば、関係する自治体数が9市町村もあり、議論の長期化を懸念していました。

近年の平成筑豊鉄道の赤字額は、年間5億円前後。2026年度以降は10億円前後に膨らむと予測されています。一方で沿線には財政基盤の脆弱な自治体が多く、支援に耐えられない自治体が現れてもおかしくない状況です。

両者にとって議論の長期化は、デメリットしかありません。そこで福岡県は、スピード感のある決議を促すうえで、協議会の設置要綱に以下の文章を記載します。

議事は出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、座長の決するところによる。
ただし、委員は棄権できることとし、この場合、棄権した委員を除く出席委員の過半数で議事を決するものとする。

出典:平成筑豊鉄道沿線地域公共交通協議会設置要綱(第6条第4項)

意見が分かれたときは「多数決で決める」。これに、沿線自治体をはじめ協議会の構成メンバーは了承したのです。

その後の協議で、平成筑豊鉄道の将来の方向性は「鉄道(上下分離方式への移行)」「BRT転換」「廃止・バス転換」の3案が、現実的な選択肢であると提示。それぞれの収支シミュレーションが第6回協議会(2025年11月20日)で報告されると、案の定、自治体間の温度差が生じてきます。

そして第7回協議会(2025年12月3日)で、3案から1つを多数決で選ぶことが決定します。なお、決議は9市町村以外にも平成筑豊鉄道、バスやタクシー事業者、そして福岡県など27人の構成メンバーが投票。棄権票を除いて多数だった意見を方向性とすることも確認されます。

鉄道の存廃を決める27票の行方は?

投票期限は2026年3月13日でした。結果は、3月24日に協議会のホームページで公表されています。ただし、交通事業者(平成筑豊鉄道・西鉄バス・JRバス・太陽光通・筑豊地区タクシー協会)の投票先または棄権については「非公表」となっています。

27人の構成メンバーが下した結果は、次の通りです。

鉄道(上下分離方式への移行)2票(福智町、みやこ町)
BRT転換4票(田川市、直方市、有識者1名、交通事業者1名)
廃止・バス転換8票(行橋市、小竹町、香春町、糸田町、赤村、有識者1名、交通事業者2名)
棄権12票(国土交通省3名、警察本部1名、福岡県6名、交通事業者2名)
※座長は同数のときに投票する規定により無投票
参考:福岡県「平成筑豊鉄道のあり方に係る大きな方向性 書面決議結果」をもとに筆者作成

投票数は14票。国や福岡県、警察などの半分近くが棄権しました。座長の福岡県交通政策課長も、可否が同数の場合に投票する規定ですから、投票していません。国や福岡県は「地元の意見を尊重する」というスタンスから棄権したと考えられます。ただ、福岡県は地元ですし、平成筑豊鉄道の筆頭株主でもあります。棄権ではなく、何らかの意思表示をしてほしかったところです。

鉄道(上下分離方式)を支持した福智町、みやこ町は、住民アンケートでも存続を求める声が多数を占めていました。

BRTは、田川市と直方市が支持。田川市は、住民アンケートでもっとも多く支持されたBRTを選択しました。直方市の住民アンケートでは路線バスが過半数を占めたものの、定時性と速達性の観点でBRTを選んだとしています。

その他の市町村は、路線バスを支持。今後30年間の自治体負担額が約110億円で、鉄道の4分の1に圧縮できることが大きな理由としています。

この結果から、平成筑豊鉄道の将来は「バス転換」の方向性が決まり、鉄道の事実上の廃止が確定したのです。

協議で見過ごされた「鉄道の価値」

近年の鉄道の存廃協議では、鉄道がもたらす地域経済効果や、鉄道を失うことで被る自治体の損失といった「鉄道の価値」を分析するケースが増えています。

たとえば、平成筑豊鉄道には「ことこと列車」という観光列車が走っています。この列車をはじめ鉄道が地域にもたらす経済波及効果について、協議会では議論されていません。また、バス転換にあたり必要になる道路整備(渋滞対策)やデマンド交通の再整備といった「バス転換以外に必要な自治体負担」を分析するクロスセクター効果も、検証されませんでした。

こうした鉄道の価値よりも、年間10億円規模とされる財政負担ばかりに着目して廃止を決断したように見える協議だったことは、残念です。

もっとも、これらの費用を算出しても「年間10億円規模の財政負担」を下回ると想定されたのかもしれません。平成筑豊鉄道は利用者の大半が沿線住民ですから、観光による効果は期待できなかったとも考えられます。

地元が決断したことに対して、ガヤが文句を言うのはご法度だと筆者は考えています。ただ、迅速な決断が求められたとはいえ、もう少し丁寧に協議や検証ができなかったかと感じるのです。バスドライバーや財源の問題を含めて、細かいところまで検証していないため、今後の協議が予定通りに進まなかったり、再構築した交通体系が利用者の実態に合わずバスも早々に廃止されたりと、今後に不安が残ります。

人口減少が見込まれるなかで財政的な余裕がないことはわかりますが、重要なのは、「地域にとって持続可能で、かつ利用される交通」をどう構築するかです。その具体案が今後の協議で出てくるかも、注目していく必要があります。

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参考URL

平成筑豊鉄道のあり方に係る大きな方向性 書面決議結果
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/281379.pdf

平成筑豊鉄道沿線地域公共交通協議会
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/heichikukyogi.html

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