【NEWS】秩父鉄道・いすみ鉄道の「あり方会議」始動 – いすみは廃止も示唆

秩父鉄道といすみ鉄道 協議会ニュース

【2026年5月27日】秩父鉄道と秩父市は、利用者の少ない影森~三峰口について、今後の地域公共交通のあり方を調査・検討すると発表しました。同区間について秩父鉄道は、沿線地域の人口減少などを理由に利用者が減り続けていると説明。これに対して秩父市は、沿線地域の将来人口予測やバス転換した場合の課題など、多角的な視点から検討すると伝えています。

また、いすみ鉄道でも鉄道のあり方を検討する新たな会議の初会合が開かれました。いすみ鉄道は、2024年10月に発生した脱線事故以降、全線で運休が続いています。利用者が比較的多い大原~大多喜は2027年秋の再開を目指して復旧工事が進んでいますが、大多喜~上総中野は今後の方向性が決まっていません。会議では、存廃の前提を置かず「全線復旧」「一部区間の復旧」「全線廃止」など、さまざまなパターンで比較検討することを確認。いすみ鉄道の存在意義にも迫る協議になりそうです。

【解説1】秩父鉄道は「影森~三峰口」のあり方を議論

秩父鉄道全線の輸送密度は3,803人(2023年度)、鉄道事業の収支は2億1,300万円の黒字(2025年度)です。輸送密度がそれほど高くないわりに儲けているのは、貨物収入があるから。そのため会社全体の体力は、一定程度維持されています。

ただ、終点に近い山間部では利用者数が激減しており、影森~三峰口の輸送密度は378人/日しかありません。この線区では貨物列車が走らず、収支は赤字でしょう。

こうした状況が長年続く秩父鉄道は、沿線自治体の秩父市に相談。将来の地域公共交通のあり方について調査・検討を進めることになりました。

具体的な調査内容について、秩父市の清野市長は「沿線地域の現状分析や将来予測、鉄道を維持した場合、あるいはモード転換を行った場合の効果や課題などについて、多角的な視点から検討」すると、自身のブログで伝えています。なお、これらの調査は外部コンサル会社に委託するようです。

国の支援制度を活用して存続を模索か?

秩父鉄道では「鉄道安全輸送設備整備費補助」という補助金を、埼玉県や沿線自治体から受けています。この補助金は、車両の更新やレールの整備など安全運行に必要な設備投資に対して補助する国の制度です。埼玉県によると、秩父鉄道に対する支援は1976年から続いており、毎年数千万円を補助しています。

このことから、県や沿線自治体の考えは「事業者がたとえ黒字経営でも、地域に必要な鉄道であれば支援する」というスタンスであることがうかがえます。

では、影森~三峰口の線区は、地域にとって本当に必要なのか。それを客観的な目線で調べるために、秩父市は外部コンサル会社に委託したわけです。清野市長は「調査結果をもとに、地域にとって最適な公共交通のあり方や必要な行政支援について、丁寧に協議を進める」とブログで語っており、公的支援で存続させる可能性も示唆しています。

ちなみに今回の調査にかかる費用は、国の「鉄道事業再構築事業」を活用します。この事業にもとづく制度(社会資本整備総合交付金など)を使い、存続を決めたローカル線は全国各地にあります。

公的支援で鉄道を存続させるか、それともバス転換など他の交通モードにシフトするか。まずは、コンサル会社の調査結果が待たれます。

【解説2】いすみ鉄道は「全線廃止」も視野に協議開始

いすみ鉄道は、2024年10月に発生した脱線事故の影響で、現在も全線で運休しています。このうち大原~大多喜では復旧工事が始まっており、2027年秋に運転再開する予定です。この線区の復旧費用は約10億円。代行バスの運行費を含め、千葉県や沿線自治体が負担します。

一方、大多喜~上総中野について、いすみ鉄道は2026年3月25日に「復旧費用は約10億円」と発表。さらに、復旧後の維持管理費(全線)として「10年間で約50億円必要」とする試算結果も公表しました。これらの費用も、赤字経営のいすみ鉄道には負担できません。そこでいすみ鉄道は、今後の対応に関する協議を沿線自治体に申し入れます。

これを受けて沿線自治体と千葉県は「いすみ鉄道が担う地域公共交通のあり方検討会議」を設置。2026年5月27日に初会合が開催されました。構成メンバーは沿線4市町、千葉県、有識者(流通経済大学教授)、いすみ鉄道です。

会議では、鉄道の必要性に関する意見や、地域経済効果を踏まえた検討が必要といった意見が出たようです。こうした意見を踏まえ構成メンバーは、「存廃の前提を置かず、さまざまな選択肢を比較検討する」ことで一致。復旧工事が進む大原~大多喜の存廃も含めて「タブーなく議論したい」と、地域に最適な公共交通のあり方を探っていくことになったのです。

20年前に存続を支持した「住民意向」は変わらないのか?

検討会議では今後、住民アンケートなどを通じて潜在的な交通ニーズを把握するほか、観光などによる地域経済効果の試算などもおこなわれる模様です。クロスセクター効果や費用対便益といった分析も、おこなわれるかもしれません。

なお、いすみ鉄道では2006年にも住民アンケートや費用対便益分析などをおこなっています。当時の調査では、いすみ鉄道を利用している世帯は地域全体の21%。公的支援に関する質問では、「いくらでも増やしてよい」「一定の範囲内であれば増やしてよい」と答えた人を合わせると52.7%と、半数を超えました。

また費用対便益の分析では、「鉄道を存続させる場合」と「バスに転換する場合」で、今後30年間にもたらす便益を試算。その結果、鉄道・バスいずれも約80億円で互角でした。結果的に、利用促進などの取り組みを継続することで「将来的に収支が均衡し存続できる」と、協議会は判断。今日まで存続することができたのです。

この調査が実施されてから20年。沿線地域では少子化・過疎化が進み、社会情勢も大きく変わりました。こうしたなかで、「公的支援を増やしてでもいすみ鉄道の存続させてほしい」と願う人が、どれくらいいるのか。いすみ鉄道の将来は、沿線住民の意向も大きく影響しそうです。

検討会議は、2027年秋をめどに方向性をまとめるとしています。

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参考URL

秩父市長 清野和彦ブログ
https://ameblo.jp/kiyonokazuhiko/entry-12967443318.html

秩父鉄道の活性化支援(埼玉県)
https://www.pref.saitama.lg.jp/a0109/ctk-main/index.html

補助金交付実績(埼玉県)
https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/2444/chichibu-hojyojissekir-r6.pdf

「いすみ鉄道が担う地域公共交通のあり方検討会議」の設置について(千葉県)
https://www.pref.chiba.lg.jp/koukei/press/2026/isumitetsudou-kentou.html

いすみ鉄道再生会議中間報告(千葉県)
https://www.pref.chiba.lg.jp/koukei/shingikai/isumi/documents/isumichukan2.pdf

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