週刊!鉄道協議会ニュース【2024年9月15日~9月21日】

リニア中央新幹線 協議会ニュース

今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、静岡県がリニア中央新幹線のボーリング調査を初めて容認した話題や、三陸鉄道の今年度の決算見通しで過去最大の赤字が予測されている話など、さまざまなニュースをピックアップして紹介します。

静岡県がリニア中央新幹線のボーリング調査を初めて容認

【2024年9月17日】静岡県は、リニア中央新幹線の静岡工区(南アルプストンネルの一部区間)のボーリング調査を、初めて容認しました。これは、静岡県がJR東海に宛てた「静岡県内の高速長尺先進ボーリング調査実施の了解について」という文書で伝えたものです。

この文書はJR東海が、大井川流域の自治体などで構成される大井川利水関係協議会からボーリング調査の了解を得たいとして、静岡県に確認を求めたことに対する回答です。大井川利水関係協議会は、JR東海のリスク管理や不測の事態が生じた際の報告などの条件を前提に、ボーリング調査を容認。これを受けて、静岡県も調査を容認しました。

静岡県の鈴木知事は地元メディアの取材に対して、「リスク管理を十分にしてもらうのが大前提。また、これまでにもトラブルがいろいろあったので、速やかな報告をお願いしたい」とJR東海に要望しています。

【解説】知事交代で大きく動き始めたリニア静岡工区

静岡県とJR東海は2017年に、リニア中央新幹線の着工に関する基本協定を結んでいました。ただ、南アルプストンネルの工事により大井川の水量に影響を与える問題をめぐって、川勝前知事が「解決するまで事業を認めない」と主張。静岡工区の着工は、中断されます。

この状況に国は、大井川の水量問題を検討する有識者会議を設置。2021年には「適切な対策を講じれば水量の影響を抑えられる」という報告書をまとめます。

これを受けてJR東海は、田代ダムを活用して大井川の水量を確保する「田代ダム案」を提案しますが、川勝前知事は「全量を戻せない」「掘削する際の湧き水が山梨県側に流出する」などと反発。山梨県側の県境付近で実施するボーリング調査も、認めないとしたのです。

さらに、工事現場付近の環境への影響も指摘して追加要望を挙げるなど、両者の関係は泥沼化していきます。

こうしたなかで、大井川利水関係協議会の自治体が2023年4月20日に、「国が積極的に関与してほしい」と国土交通省に要望書を提出。一向に進まない両者の議論に対して、不信感を表します。なお、国は環境保全に関する有識者会議を設置。2023年12月7日に報告書を提出する対応を取っています。

これと前後して大井川利水関係協議会は2023年11月28日に、JR東海が示した「田代ダム案」に了解しました。沿線自治体がリニア着工容認へと傾くなかで、静岡県だけが「事業を一切認めない」という構図になっていきます。

事態が大きく動いたのは、2024年4月。川勝前知事が突然、辞任を表明します。その後、新たに就任した鈴木知事が、JR東海や沿線自治体との関係修復に動き始めました。

2024年6月18日には、JR東海と山梨県との三者協議を開催。山梨県側の県境付近のボーリング調査について、条件付きで認めることに合意します。また、環境保全に関する問題については、静岡県が川勝前知事時代に47項目もの課題を挙げましたが、鈴木知事の就任後、建設残土置き場などの問題を含めて解決へと進んでいます。

そして今回、静岡工区でのボーリング調査が初めて認められました。さまざまな条件はあるものの、開業に向けて大きく前進したのは、知事の交代が非常に大きく影響しているでしょう。

もっとも、今回はボーリング調査が認められただけであり、トンネル本坑などの掘削工事に関する協議はこれからです。それに、環境保全の問題に関しては未解決事項も多々あります。その間に、知事の交代で足踏みすることがないよう、JR東海や沿線自治体との関係性を深めていってほしいところです。

その他の鉄道協議会ニュース

三陸鉄道が今年度の決算予測を公表 – 過去最大の赤字に

【2024年9月17日】三陸鉄道は取締役会を開き、2024年度の決算予測が過去最大の赤字になることを明らかにしました。この日公表された決算見通しによると、通年の経常損失は7億1,557万円の赤字に。コロナの影響で運賃収入が激減した2021年度(6億9,015万円)を、上回る見込みです。なお、県や沿線自治体の支援を含めても4,925万円の赤字となり、これは2016年度に次ぐ過去2番目の額になります。

赤字拡大の理由として、三陸鉄道は8月の台風5号の影響を指摘。佐羽根~田老の路肩が崩れるなどの被害を受け、2024年9月現在も宮古~新田老が不通です。この区間の復旧費用が約2億2,000万円とされることや、サケが遡上する川の水質保全のために復旧工事が一時中断することなど、運賃収入の減少も見込まれます。

なお、宮古~新田老の運行再開について、三陸鉄道は「数カ月後」としています。

※三陸鉄道を存続させるために沿線自治体が取り組んできた内容について、以下の記事で詳しく解説しています。

秋田内陸縦貫鉄道への支援額を段階的に減額へ

【2024年9月19日】秋田県と北秋田市、仙北市などは、秋田内陸縦貫鉄道に対する支援額を段階的に減らすことを決めました。これまでは年間2億円を上限に支援してきましたが、2024年度は1億9,500万円と500万円の減額に。2025年度と2026年度は1億6,500万円、さらに2027年度から2034年度までは1億4,800万円になります。

3年後には5,000万円以上の減額となりますが、これについて秋田県は、国の新たな交付金の活用を提案。沿線自治体の負担額を抑える一方で国の支援を得ることにより、秋田内陸縦貫鉄道に対する支援の減額は1,700万円程度になると伝えています。

秋田県交通政策課の信太課長は、県議会の産業観光委員会で「安定的な財源を用いることで、今後10年間の運行を支えていく」と述べています。

※秋田内陸縦貫鉄道に対する沿線自治体の支援や取り組みについて、以下の記事で詳しく解説しています。

富山地方鉄道への支援に富山県知事が「相当な覚悟が必要」

【2024年9月19日】富山県の新田知事は県議会定例会で、富山地方鉄道の経営改善に対する整備に約600億円かかるという概算費用を示しました。この概算費用は、みなし上下分離を導入予定の北陸鉄道の事例を参考に、導き出したものです。北陸鉄道では、国の「地域公共交通再構築事業」の補助制度を活用して経営改善をはかろうとしていますが、この制度を活用するには新車両の導入費用などが沿線自治体にも求められます。

概算費用を示した新田知事は、「国が半分を負担しても、県と沿線自治体にはそれぞれ150億円の負担が生じる。相当の覚悟が必要であり、丁寧な議論が必要だ」と述べています。

なお、富山市や魚津市などの沿線自治体は今月24日に、富山地方鉄道のみなし上下分離の導入に関する会議を開き、富山県に対して支援を求める要望書を提出する予定になっています。

※富山地方鉄道と沿線自治体が取り組んでいる利用促進などについて、以下の記事で詳しく解説しています。

JR水郡線でラッピング列車を運行 – 沿線自治体などが企画

【2024年9月20日】JR東日本と福島県水郡線活性化対策協議会、茨城県水郡線利用促進会議は、水郡線全線開通90周年イベントの一環で、ラッピング列車を運行すると発表しました。

デザインは、袋田の滝やダリアなど沿線の魅力がモチーフに。キハE130系の列車にラッピングされ、2024年10月から12月まで運行される予定です。また、10月からはサイクルトレインの乗降可能駅が福島県側で7駅追加。計38駅で自転車を持ちこめるようになります(事前に利用登録が必要)。

このほか磐城塙駅では「ふくしま鉄道博」という記念イベントも開催。水郡線のプラレールが展示されたり、鉄道を活用した地域活性化をテーマにプレゼン大会を開催したりと、マイレール意識を高めるイベントも予定されています。

※JR東日本と沿線自治体が協働で進めている水郡線の利用促進については、以下の記事で詳しく解説しています。

JR只見線で「全国ローカル鉄道サポーターズサミット」が開催

【2024年9月14~15日】全国19路線の関係者などが一堂に会する「全国ローカル鉄道サポーターズサミット in 只見線」が、会津川口駅近くの金山町開発センターで開催されました。このサミットは、ローカル線を応援する有志などが主催し、今回が3回目です。会場では、東北運輸局鉄道部やJR飯山線活性化協議などの基調講演・事例発表・シンポジウムがおこなわれ、ローカル線を活用した地域活性化の取り組みについて議論されました。

また、2022年に全線復旧した只見線に乗車するイベントも開催。参加者は、沿線地域の散策などを楽しんだようです。

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