週刊!鉄道協議会ニュース【2024年8月18日~8月24日】

指宿枕崎線の終点 協議会ニュース

今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、指宿枕崎線(指宿~枕崎)のあり方について話し合う新たな検討会議が始まった話題や、西九州新幹線の未整備区間をめぐる「幅広い協議」が再開されたニュースなどをお伝えします。

JR指宿枕崎線(指宿~枕崎)の存続・廃止に関する検討会議開催

【2024年8月19日】JR九州と指宿枕崎線の沿線自治体は、指宿~枕崎の鉄道の将来について協議する「指宿枕崎線の将来のあり方に関する検討会議」を開催しました。

初会合の今回は、JR九州が該当線区の利用状況や収支といった現状を説明。一方の沿線自治体は、「線区活用に関する検討会」でこれまで実施した利用促進の取り組みなどを説明したそうです。

また、検討会議のメンバーで有識者の神田教授(呉工業高等専門学校)は「鉄道を活用して地域が稼ぐことで、地域の足を確保するという発想があってもよい」と提言。これを受けて、指宿枕崎線の地域活性化につながる可能性を探るため「まずは鉄路存続に向けた議論を進める」ことが確認されました。

検討会議後の記者会見で、会長を務める鹿児島県交通政策課の鈴木氏は「地域の課題に、鉄道をどのように活用するか。住みたくなる地域づくりを目標に、関係者が一丸となり取り組むことが大事だという結論に至った」と述べています。

JR九州は、沿線自治体の積極的な関与が必要という考えを伝えたうえで、「自治体の望むまちづくりが、鉄道を活用して実現できるのかという点を、未来志向で建設的に議論したい」と記者会見で語っています。

【解説】「まちづくり」を含め指宿枕崎線の活用法を模索する検討会議

JR九州は、利用者が激減した線区の沿線自治体と一緒に「線区活用に関する検討会」を、2019年から開催しています。対象線区は指宿枕崎線(指宿~枕崎)のほか、筑肥線(伊万里~唐津)、吉都線、日南線(油津~志布志)、肥薩線です。このうち肥薩線は、2020年の豪雨災害で大きな被害を受け、検討会は中止に。その後、復旧協議に移行しました。

さて、線区活用に関する検討会では、主にイベント実施や団体利用の運賃補助といったソフト面での利用促進策を話し合い、実施できることから実行に移してきました。ただ、コロナの影響もあり、いずれの線区も想定した成果が得られませんでした。

なかでも指宿枕崎線は他線区より効果が薄く、JR九州は2023年11月に、本格的に鉄道のあり方について議論する場の設置を沿線自治体へ申し入れます。沿線自治体は翌年1月から、実務担当者レベルの話し合いを6回開催。協議内容を固めたうえで、今回の「指宿枕崎線の将来のあり方に関する検討会議」が開催されます。

検討会議の構成メンバーは、指宿~枕崎の沿線自治体3市(指宿市、南九州市、枕崎市)と鹿児島県、JR九州、有識者の神田教授です。神田教授は、呉工業高等専門学校でまちづくりや交通政策などを研究しており、芸備線の再構築協議会にも参加しています。

この検討会議で協議する内容は、従来のソフト面の利用促進策だけではありません。検討会議の座長を務める鈴木会長(鹿児島県交通政策課)は、「これまでの単なる鉄道の維持や利用促進の域を超えた、地域づくりを検討する」と説明しており、まちづくりを含めたハード面の施策も話し合う予定です。

たとえば、駅前に「パークアンドライドを設置する」「二次交通との結束機能を強化する」「病院や高校、市役所などの集客施設を駅に移転する」といった内容も、検討されるかもしれません。そうした話を進める意味で、まちづくりを専門とする神田教授が、この検討会議のメンバーに選ばれたとみられます。

ただ、ハード面の施策は莫大な予算が必要です。沿線自治体には、大きな負担になると予測されます。そこまでして、指宿枕崎線を鉄道で残す意義があるのか。鉄道の可能性を追求しながら地域に与える価値や便益を明確にすることも、今後の議論の焦点になるでしょう。

なお検討会議は不定期に開催され、今後は沿線の法人や住民などの意見を聞く機会を設けるようです。

※指宿枕崎線の利用実態や経営状況、「線区活用に関する検討会」で実施された内容など、JR九州とのこれまでの協議の流れは、以下のページで詳しく解説しています。

その他の鉄道協議会ニュース

西九州新幹線の未整備区間を話し合う「幅広い協議」が開催

【2024年8月23日】西九州新幹線の未整備区間について、佐賀県と国土交通省が議論する「幅広い協議」が、1年半ぶりに開催されました。このなかで国土交通省は、新幹線の効果を最大化するには「佐賀駅を通るルートにフル規格で整備するのが望ましい」と主張。一方の佐賀県は、佐賀駅ルートのフル規格は「莫大な財政負担や在来線の利便性低下などの不利益が生じる」と、両者とも従来の主張を繰り返すだけで大きな進展はなかったようです。

協議後の記者会見で、国土交通省の北村課長は「互いの思いが一致していない」と、佐賀県とのあいだに深い溝があることを認めたうえで「佐賀県の理解が得られるよう、引き続き議論を重ねたい」と述べています。また佐賀県の引馬部長は、国土交通省から新たな提案はなかったことを伝え「佐賀県としては議論を拒まない。国交省から求めがあれば、今後も意見交換をしていく」と語っています。

※西九州新幹線の未整備区間をめぐる「幅広い協議」の流れは、以下のページで詳しく解説しています。

予土線の利用促進を踏まえ国土交通省に要望書を提出 – 愛媛・高知の両県知事

【2024年8月19日】予土線の沿線自治体や民間団体が愛媛県松野町に集まり、今後の活動方針について意見交換をおこないました。出席者からは、SNSを活用した観光客の呼び込みや、駅トイレなどの設備の整備が必要といった意見が出されたようです。

この翌日、愛媛県の中村知事と高知県の浜田知事が国土交通省を訪問。予土線の維持に向けて、国の支援を求める要望書を提出しました。その後、地元メディアの取材に応じた中村知事は「予土線の利用促進に現場が頑張っていることを国に伝えた」と述べています。また、浜田知事は「JR四国は構造的に不採算体質。国の財政支援を考えてもらいたい」と話しました。

※予土線の沿線自治体が実施している利用促進策については、以下のページで詳しく解説しています。

リニアのモニタリング会議が開催 – 静岡県とJR東海の協議に専門家が評価

【2024年8月22日】リニア中央新幹線の工事による影響を監視・評価する国のモニタリング会議が開催されました。このなかで専門家の委員は、静岡県とJR東海の協議が「着実に進んでいる」と評価。水資源保全や環境保護などに大きな影響を及ぼした際に、代償措置の方法や進め方なども具体的になってきたと伝えています。

また、山梨県側で進めているボーリング調査についてJR東海は、静岡県境の316mの地点まで進んだことを報告。これに専門家の委員からは、「不測の事態が生じた際に、関係機関との情報伝達を想定することが重要」「現場での対応をリアルタイムで伝えることが、地元の安心感や信頼感につながる」と、迅速な情報開示や対応についてJR東海に求めています。

鉄道・バスで出かけた思い出を小学生から募集 – 鳥取県の協議会

【2024年8月22日】鳥取県の「みんなが乗りたくなる公共交通利用促進協議会」では、鉄道やバスで出かけた思い出をつづった「旅日記」を募集しています。「ぼくがわたしが列車・バスで行った旅の思い出キャンペーン」という事業で、夏休み中の小学生が鉄道・バスを使ったときの様子や旅先での風景などを、文章と絵で募集するものです。

対象は、鳥取県内在住の小学生。応募者全員にプレゼントが用意されるほか、若桜鉄道のSLトロッコ乗車体験などが抽選で当たるそうです。協議会は「キャンペーンを通じて公共交通の魅力を発信し、利用促進につなげたい」と話しています。

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