【JR四国】予土線は廃止を避けられるか?沿線自治体の取り組みを解説

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予土線の列車と四万十川 JR
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予土線は、愛媛県の北宇和島と高知県の若井をつなぐ、JR四国のローカル線です。「しまんとグリーンライン」という愛称が付けられ、四万十川に沿って走る風光明媚な路線でもあります。

自然に囲まれた路線ゆえに利用者は非常に少なく、沿線自治体では協議会を設置して利用促進の取り組みに注力しています。ここでは、協議会の成り立ちや取り組みを紹介するとともに、予土線の存続・廃止をめぐる動きもお伝えします。

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JR予土線の線区データ

協議対象の区間JR予土線 北宇和島~若井(76.3km)
輸送密度(1989年→2019年)575→301
増減率-48%
赤字額(2019年)8億7,000万円
営業係数1,137
※輸送密度および増減率は1989年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額と営業係数は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

宇和島市、松野町、鬼北町、四万十市、四万十町、愛媛県、高知県

予土線と沿線自治体

予土線をめぐる協議会設置までの経緯

予土線をめぐる協議会は、愛媛県と高知県でそれぞれ組織されています。先に誕生したのは「高知県予土線利用促進対策協議会」で、国鉄時代末期の1984年11月に設置されました。

当時、高知県では予土線、中村線、阿佐西線の3路線が特定地方交通線に指定されました。このうち予土線は、代替輸送道路が未整備という理由で除外され、JR四国に継承。中村線と阿佐西線はその後、第三セクターの土佐くろしお鉄道に移管されます。

JR四国の路線となった予土線ですが、1989年の輸送密度は575人/日。中村線や阿佐西線の半分にも満たない閑散区間です。とりわけ高知県側は利用者が少なく、道路整備が進めば廃止になる可能性がありました。危機意識を高めた沿線自治体は、早々に協議会を設置。現在も、年1回のペースで開催しています。

一方、「愛媛県予土線利用促進対策協議会」が設置されたのは、2010年11月です。この年の4月、四国経済連合会の呼びかけで「四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会」が設立されます。利用者の減少に歯止めがかからない四国の鉄道。それを、どのようにして維持するのか「みんなで検討しましょう」というのが、懇談会のコンセプトでした。

これを受けて、愛媛県側の沿線自治体も、予土線の存続をめざす機運が高まり、宇和島市、松野町、鬼北町が組織する協議会が設置されます。なお、愛媛県が参画したのは2015年になってからです。

予土線の主な取り組み

沿線自治体の協議会が中心となって取り組んでいる、予土線の利用促進策の一例を紹介します。

  • 企画列車・ラッピング列車の運行(しまんトロッコ、鉄道ホビートレインなど)
  • サイクルトレインの運行
  • 自治体職員による利用促進
  • ファンクラブの設置(YODOSENサポーター)
  • 自動運転モビリティの実証実験
  • 団体利用者への運賃助成
  • イベントの実施(川柳コンテスト、絵画コンテストなど)
  • 予土線専用ホームページやSNSによるPR情報発信

…など

予土線には、「予土線3兄弟」と呼ばれる観光列車が走っています。「しまんトロッコ」は、1984年から運行されてきたトロッコ列車の後継車両として、2013年に登場。定期列車にトロッコ車両を併結して、運行しています。このほか、フィギアで有名な海洋堂とコラボした「海洋堂ホビートレイン」、0系新幹線をイメージした「鉄道ホビートレイン」などの観光列車も運行しており、沿線自治体も協力しています。

予土線のホビートレイン
▲予土線を走る「鉄道ホビートレイン」。

また、高知県四万十町では、予土線などの公共交通の時刻に合わせて自治体の職員が勤務時間を決められる特例措置をおこなっています。ただ、利用者は少数のため輸送密度のアップにはつながっていないようです。

愛媛県ではマイレール意識の醸成を図るために、「YODOSENサポーター」を設立。会費は1,000円で、オリジナル会員証とピンバッジ、トートバッグなどが進呈されます。ただ、「積極的に乗ってください」「イベントに来てください」とホームページで呼びかけるだけで、利用促進効果が表れるか微妙な取り組みです。

自動運転対応の電動カートを使った実証実験

注目の取り組みとしては、「自動運転モビリティの実証実験」です。これは、江川崎駅と周辺の観光施設などを、自動運転対応の電動カート(4人乗り)で結ぶという社会実験。JR四国と四万十市が連携して、2022年より走行実験を実施しています。

この実験の目的のひとつは予土線の利用促進ですが、それよりも過疎の進む地域で「持続可能な公共交通ネットワークを構築できるか」という点が主軸のようです。実用化すれば、運転手不足の課題を解消する新たな公共交通として注目を浴びるでしょう。2025年以降の実用化に向けて、実験は進められています。

自動運転の電動カートを使った実証実験
▲左下が自動運転対応の電動カート。現在は、江川崎駅から道の駅よって西土佐までの区間が自動運転で、その先は手動運転区間として実証実験中。
出典:四万十市「第3回 西土佐地域自動運転モビリティ実証実験 企画会議」

JR四国が予土線の「あり方」について表明

2023年4月26日、JR四国の西牧社長は定例記者会見で、赤字路線の「あり方」の議論を始めたいと、四国4県に伝えたことを表明しました。対象路線は、牟岐線(阿南~牟岐)、予讃線の海回り区間(向井原~伊予大洲間)、そして予土線の全線です。

これに対して、愛媛・高知の両県知事は翌4月27日におこなわれた記者会見で「国のほうで考えてもらいたい」という内容の意見を述べています。ただ、県としても必要な対応を取っていく考えも示しており、JR四国からの申し入れを受け入れる方針です。

同年5月12日には、両県で別々にあった協議会を一本化し、合同協議会を立ち上げることで合意。利用促進を中心に、予土線の存続を訴えていくことが確認されています。

では、予土線の「あり方」を巡る協議は、今後どのように進むのでしょうか。JR四国の西牧社長は、2023年3月の定例記者会見で「まずは各県の担当者レベルで話し合うところから始めたい」という考えを示しています。また、国の再構築協議会に関しては「いきなり再構築協議会を開くということにはならないと思う」と話しています。この考えは、愛媛県や高知県でも同じ認識で伝わっているようです。

(八矢副知事)
意見交換を始めたいというような打診はきていますが、JR四国としても、いきなり再構築協議会を直ちに設置するというような意向ではなく、まず今後の利用促進も含めた既存の枠組みも含めて、どういうかたちで進めていきますかという意見交換をしたい、始めたい(と聞いている)。

出典:愛媛県「令和5年度4月知事定例記者会見(令和5年4月27日)の要旨について」

ただ、鉄道の「あり方」の協議は、利用促進だけを話し合う場ではありません。JR四国の西牧社長は、2023年5月の定例記者会見で「利用促進は従前からやっており、これからやらないといけないのは存廃議論をどうするか。利用促進とは少し違うものが必要だと思う」と話しています。

いずれにしても、2023年度中にはJR四国と各県の担当者レベルで、検討会議などが始まりそうです。その後、新たに両県で組織する予土線利用促進対策協議会で、議論がスタートするものと予測されます。

※再構築協議会の基本方針や対象線区の予想は、以下のページで解説します。

参考URL

線区別収支と営業係数(JR四国)
http://www2.jr-shikoku.co.jp/04_company/disclose/pdf/operating_ratio/2019.pdf

JR予土線応援企画「YODOSENサポーター」について(愛媛県)
https://www.pref.ehime.jp/nan54144/yodosensupporters.html

四万十川の鉄道 予土線
http://yodosen-green.com/

「四国における鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会Ⅱ」第五回懇談会 議事要旨(JR四国)
https://www.jr-shikoku.co.jp/04_company/information/shikoku_trainnetwork/5-6.pdf

JR予土線応援企画「YODOSENサポーター」について(愛媛県)
https://www.pref.ehime.jp/nan54144/yodosensupporters.html

第3回 西土佐地域自動運転モビリティ実証実験 企画会議(四万十市)
https://www.city.shimanto.lg.jp/uploaded/attachment/6763.pdf

令和5年度4月知事定例記者会見(令和5年4月27日)の要旨について(愛媛県)
https://www.pref.ehime.jp/governor/teirei/kaiken050427.html

令和5年4月27日 知事の記者会見(高知県)
https://www.pref.kochi.lg.jp/chiji/docs/2023050100092/