【JR東日本】利用促進イベントで苦戦!久留里線存続は「沿線自治体の本気度」がカギに

久留里線の久留里駅 JR

JR久留里線は、千葉県の木更津から上総亀山までを結ぶローカル線です。わずか30kmほどの路線ですが、運行形態は途中の久留里まで区間運転する列車が多く、久留里から上総亀山間は1日9往復、輸送密度は85人/日、営業係数は15,546(2019年)と、JR東日本の路線でもっとも効率の悪い区間となっています。

こうした実情から、沿線自治体とJR東日本は「JR久留里線活性化協議会」を設立し、沿線の活性化に向けてさまざまな検討・取り組みをおこなっています。

JR久留里線の線区データ

協議対象の区間JR久留里線 木更津~上総亀山(32.2km)
輸送密度(1987年→2019年)木更津~久留里:4,446→1,425
久留里~上総亀山:823→85
増減率木更津~久留里:-68%
久留里~上総亀山:-90%
赤字額(2019年)木更津~久留里:10億5,500万円
久留里~上総亀山:3億4,400万円
営業係数木更津~久留里:1,200
久留里~上総亀山:15,546
※輸送密度および増減率は、JRが発足した1987年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額と営業係数は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

君津市、木更津市、袖ケ浦市、千葉県、JR東日本(千葉支社)

久留里線と沿線自治体

JR久留里線活性化協議会の設置までの経緯

JR東日本では2012年ごろから毎年、各線区の輸送密度(平均輸送人員)を公式サイトなどで公表しています。この情報は千葉県をはじめ沿線自治体も確認しており、以前から久留里線の存続に危機感を抱いていたようです。

具体的な取り組みを始めたのは、2015年8月に「久留里線活性化プロジェクト実行委員会」を設置してから。沿線住民が中心となって、地元の大学生や高校生、JR東日本などと連携して動き出します。

当初はスタンプラリーなどのイベントや環境美化活動といった取り組みで支援をしてきましたが、少子化・過疎化・モータリゼーション化が進む沿線において、それだけでは利用者の減少を止められません。そこで、沿線自治体が中心となり利用促進方策を総合的に推進する組織として、2020年4月に「JR久留里線活性化協議会」を設立。持続的な発展と沿線地域の振興を目的に、協議がスタートしました。

久留里線沿線自治体のこれまでの取り組み

協議会は始まったばかりですが、2022年までの2年間に実施した主な取り組みは、以下の通りです。

  • PR動画の作成
  • 壁新聞の作成・掲示(電子媒体「クル!カッキョウ新聞」の発行)
  • サイクルトレイン「菜久留トレイン」の運行
  • 地元小学生を対象とした「乗り方教室」の実施
  • 小湊鉄道・いすみ鉄道と連携したツアーの実施
  • 駅の美化活動(花いっぱいプロジェクト)
  • ご当地マルシェ

…など

観光誘客を目的とした施策や沿線住民への情報発信などで利用促進を訴えますが、ちょうど新型コロナウイルスの流行と重なり、利用者の増加につながっていないのが現状です。

たとえば、JR東日本のサイクルトレイン「B.B.BASE」の運行にあわせ、木更津で接続する臨時列車「菜久留トレイン」を運行しましたが、1便あたりの利用者は最大で14名にとどまっています(2021年度の実績)。

また、小湊鉄道と連携した企画ツアー「ディーゼルマニア」や、小湊鉄道といすみ鉄道と連携したツアー「185系で行く『久留里・いすみライン』号」を催行しますが、前者は34名、後者は24名の参加者しか集まりませんでした。

東京から2時間程度の地域ですから、いずれのイベントもPRを拡充することで増やせる可能性はありますが、とはいえ、一過的なイベントで全体の利用者を増やすのは非常に難しく、抜本的な改善が必要でしょう。

ちなみに、協議会では2021年度にサイクルトレインを含め10件のイベントを開催し、トータルで549名が沿線地域を訪問したそうです。鉄道事業者からみれば、通勤定期客を2~3人増やしたほうが運賃収入は多いという計算です。

沿線自治体では2021年度から、利用者に対するアンケート調査を実施していますが、サンプルが少ないためか2022年度も引き続き実施しています。その結果から、よいアイデアが出てくることを願いたいものです。

JR東日本が「鉄道のあり方」の協議を申し入れ

2023年3月9日、JR東日本は君津市と千葉県に対して「久留里線久留里~上総亀山間沿線地域の総合的な交通体系に関する議論の申し入れについて」というプレスリリースを公表します。対象区間は、久留里~上総亀山の9.6km。この区間について、「交通体系のあり方を総合的に検討する必要がある」という考え方を示しました。

NHKなどの報道によると、JR東日本はバス転換を軸に提案していくとしています。これに対して、沿線自治体は同年5月に「JR久留里線沿線地域交通検討会議」を設置。JR東日本、千葉県、君津市のほか、学識経験者(日本大学理工学部の教授)や沿線の自治会代表も参加して協議が進められています。

5月11日には第1回の検討会議が開催。JR東日本からは久留里~上総亀山の現状について説明があったほか、自治体代表からの要望で住民説明会の開催が決定。同年6月より、説明会が始まりました。

協議の行方が気になるところですが、それにしても、久留里線はなぜ大赤字の路線なのでしょうか。利用促進やコスト削減の観点から、現地調査を実施しました。こちらもあわせてご覧ください。

※2023年5月より始まった、JR東日本との協議内容は、以下のページにまとめています。

※沿線自治体と協議を進めている路線は、ほかにも複数あります。各路線の協議の進捗状況は、以下のページよりご覧いただけます。

【関東】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
関東地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

参考URL

JR久留里線活性化協議会(君津市)
https://www.city.kimitsu.lg.jp/life/5/55/334/

令和3年度第2回JR久留里線活性化協議会総会を開催しました(君津市)
https://www.city.kimitsu.lg.jp/soshiki/7/40085.html

令和3年度事業報告(君津市)
https://www.city.kimitsu.lg.jp/uploaded/attachment/33490.pdf

久留里線久留里~上総亀山間沿線地域の総合的な交通体系に関する議論の申し入れについて(JR東日本)
https://www.jreast.co.jp/press/2022/chiba/20230309_c01.pdf

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