【JR北海道】スマホが観光ガイド!花咲線の定期列車を観光列車にする取り組みとは?

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花咲線の東根室駅 JR
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JR根室本線の釧路~根室間には、「花咲線」という愛称が付いています。この区間の鉄道を守ろうと協議しているのが、「根室本線花咲線対策沿線地域連絡協議会」です。

スマートフォンの音声ガイドアプリを活用して、「普通列車を観光列車にする」というユニークな取り組みで観光利用者の増加につなげるなど、さまざまな取り組みをおこなっている沿線自治体の具体的な施策内容についてみていきましょう。

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JR花咲線(釧路~根室)の線区データ

協議対象の区間JR根室本線 釧路~根室(135.4km)
輸送密度(1987年→2019年)1,006→238
増減率-76%
赤字額(2019年)11億800万円
営業係数753
※輸送密度および増減率は、JRが発足した1987年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額と営業係数は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

釧路市、釧路町、厚岸町、浜中町、根室市、別海町、中標津町、標津町、羅臼町、白糠町

花咲線と沿線自治体

花咲線対策沿線地域連絡協議会の設置までの経緯

花咲線は、釧路振興局と根室振興局にまたがる路線です。花咲線対策沿線地域連絡協議会は、この二つの振興局の期成会から始まりました。

2016年11月18日、JR北海道が「当社単独では維持することが困難な線区」を公表。このなかで根室本線の釧路~根室間(以下、花咲線)は、輸送密度が200人以上2,000人未満の線区(以下、黄線区)に該当し、「鉄道を持続的に維持する仕組みの構築が必要な線区」として位置付けられています。

花咲線の輸送密度の推移
▲花咲線の輸送密度の推移(1987~2022年)。JRが設立した1987年の1,006人/日がピークで、その後は右肩下がりに。近年は200人/日を割り込む危機的状況だ。
参考:JR北海道「輸送密度の推移(釧路・根室間)」をもとに筆者作成

JR北海道の公表を受け、2017年4月には釧路振興局の自治体が主体となる「釧路地方総合開発促進期成会」が、また5月には根室振興局の自治体が主体となる「根室地方総合開発期成会」で、花咲線の存続を目指す話し合いが始まります。

2017年12月には、釧路・根室それぞれの期成会で検討・分析報告書を報告。生活交通や北方領土、観光施策などの観点から、今後の取組の方向をまとめています。なかでも花咲線は、北方領土と隣接する地域と道東の中核都市を結ぶ重要な線区と位置づけ、国に対する働きかけを含め、地域が主体となった利用促進や経費削減の協力もしていくとまとめています。

その後、両期成会が統合して2018年7月に「根室本線花咲線対策沿線地域連絡協議会」になりました。

「北方領土」が強調されるも鉄道の役割がみえない花咲線

沿線自治体の協議会とは別に、北海道でも運輸交通審議会の作業部会として「鉄道ネットワークワーキングチーム」を2016年11月に発足させています。この作業部会では、大学教授やJR北海道の幹部、市町村会の会長などが集まって議論を重ね、2018年7月に「北海道が考える各線区の位置づけ」を公表しました。ただし、この作業部会は個別線区の存続や廃止に関して結論を出すものではないとしている点には留意が必要です。

北海道にとって、花咲線は次のように位置づけています。

北方領土返還運動の拠点として重要な役割を有する北方領土隣接地域における鉄道の役割を十分考慮するとともに、国の北方領土対策や高規格幹線道路網整備の状況も踏まえつつ、地域における負担等も含めた検討・協議を進めながら、路線の維持に最大限努めていく。

出典:北海道交通政策総合指針(仮称)案「鉄道網の展望」

根室市は、北方領土と隣接する重要な地域であることには間違いありません。ただ、地域における「鉄道の役割」が具体的にどのようなものか、表現を濁しているように感じます。

また、「高規格幹線道路網整備の状況」とは、釧路市と根室市をつなぐ北海道横断自動車道(根室線)の延伸計画を指します。現段階では2020年3月にゴール地点となる温根沼IC~根室IC間(7.1km)が開通しました。今後「無料の高速道路」が釧路方面に延びれば、帯広や札幌などへも車のアクセスが便利になる予定です。つまり、「高規格道路ができれば鉄道は不要」という見方もできるでしょうか。

「維持に向けて」という強い表現ではなく、「維持に最大限努める」としている点も確認しておきたいポイントです。

花咲線事業計画(アクションプラン)の策定

2018年7月、国土交通省はJR北海道の経営改善に向けた取り組みを着実に進めるよう監督命令を発出。このなかで、沿線自治体などと一体となった取り組みを2019年度より5年間実施するように求めました。その具体的な取り組みをまとめたものが、「花咲線事業計画(アクションプラン)」です。

アクションプランは、第1期(2019~2020年度)と第2期(2021~2023年度)にわけて、鉄道の利用促進や経費削減などに向けた取り組みを、JRと沿線自治体が一緒に実施する内容になっています。そして、最終年度となる2023年度に総括的な検証をおこなうとしています。

花咲線アクションプランの実施内容

花咲線における具体的な取り組み内容は、以下の通りです。

  • 普通列車の観光列車化に関する取り組み(ご当地弁当の販売など)
  • 中部・関西の旅行会社へのプロモーション
  • 長期滞在者向けのモニターツアー実施
  • 高齢者優待乗車券の交付
  • 茶内駅にバス待合所と公衆トイレを地元自治体が設置
  • 沿線の幼稚園・保育園の体験乗車
  • クラウドファンディング「地球探索鉄道花咲線」プロジェクト
  • JR北海道主催のイベント「ヘルシーウォーキング」を、地元イベントに合わせて実施
  • 札幌駅や東京都内で花咲線沿線観光PRを実施
  • 沿線中学生による列車乗客へプレゼント
  • 根室駅に新たな観光名所として「黄色いポスト」を設置

花咲線では、スマートフォンのアプリを活用して「普通列車を観光列車にする」というユニークな取り組みを実施しています。列車が沿線の見どころを通過する際にスマートフォンの音声ガイドアプリを起動すると、GPSで位置を認識して自動的にガイドが始まるというサービスです。

当初は観光列車で運用する想定でしたが、このしくみであれば定期列車でも活用できます。デジタルの活用で、観光列車を走らせなくても「おもてなし」を提供できるわけです。なお、音声ガイドは日本語のほか英語、中国語、韓国語の4カ国語に対応しています。

花咲線の音声ガイドスポット
▲音声ガイドの実施区間では、列車の速度を下げて観光案内をゆっくり楽しめる。
出典:JR北海道「いつもの列車で観光気分~花咲線のあじわい方~」

また、根室市ではクラウドファンディング「地球探索鉄道花咲線」プロジェクトを展開。ファンド資金は、Webサイトや動画など花咲線の魅力発信コンテンツの制作に使用されています。

浜中町では、茶内駅トイレの老朽化にともない、バス待合室の機能も持つ新たなトイレを町が設置。駅トイレは使用停止として、JR北海道の経費削減につなげています。

コストをかけずアイデアで利用促進を進める花咲線。ただ、2021年度の輸送密度は174人と、黄線区ではもっとも厳しい状況であり、さらなる作戦が求められそうです。

※2024年1月30日にJR北海道が国に提出した「アクションプラン総括的検証報告書」の内容については、こちらの記事で解説しています。

※JR北海道のアクションプランの詳細内容や、改善が求められるポイントについて、以下のページで解説しています。

参考URL

路線の必要性に係る検討・分析報告(釧路市)
https://www.city.kushiro.lg.jp/res/projects/default_project/_page/001/006/041/000116512.pdf

花咲線存続に係る検討・分析報告書(根室市)
https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/material/files/group/2/hanasakisenhoukokusyo.pdf

当社単独では維持することが困難な線区について(JR北海道)
https://www.jrhokkaido.co.jp/press/2016/161118-3.pdf

鉄道WT報告を踏まえた関係機関の取組(北海道)
https://www.pref.hokkaido.lg.jp/fs/5/1/1/4/9/0/9/_/290731shiryou2.pdf

JR北海道の経営改善について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001247327.pdf

第1期事業計画(アクションプラン)
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/region/actionplan_01.html

第2期事業計画(アクションプラン)
https://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/region/actionplan_02.html

日本最東端の鉄路を守ろう!「地球探索鉄道花咲線」プロジェクト(ふるなび)
https://fcf.furunavi.jp/Project/Detail?projectid=231