【NEWS】紀州鉄道の事業譲渡先が決定へ – 沿線自治体は公的支援を検討

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【2026年6月3日】鉄道事業の譲渡を検討している紀州鉄道は、譲渡先となる民間企業との交渉が大詰めを迎えたことを明らかにしました。譲渡先の事業者名は現時点で非公表ですが、譲渡に合意しており、現在は本契約の締結に向けた最終調整を進めているようです。

紀州鉄道の鉄道事業は、年間5,000万円以上の赤字が続いており、譲渡先が見つからない場合は2026年中にも廃止にする方針を示していました。譲渡先と正式に合意すれば、路線存続へ一定の道筋が見えることになります。

また、紀州鉄道が走る和歌山県御坊市の三浦市長は「運行主体が変わるだけでは抜本的な収支改善は難しい」として、公的支援の必要性を示唆。2026年6月12日に開かれる定例市議会で、支援策を調査・分析するための予算案を提出する予定です。

【解説】廃止危機から一転し事業譲渡へ…存続のカギを握る自治体支援

紀州鉄道は沿線住民の足であるとともに、「日本一短いローカル私鉄」として鉄道ファンにも愛される路線です。ただ、近年は利用者減少と設備の老朽化に苦しみ、経営は悪化していました。

2023年度の輸送密度は239人/日。経営基盤が盤石なJR各社でも、廃止を検討する水準です。また、前身となる御坊臨港鉄道の開業から100年近くが経ち、鉄道施設の老朽化も課題に。最近では2025年11月19日に、踏切を制御する装置が故障し、2カ月以上の運休を余儀なくされました。

維持管理費は増加の一途をたどり、鉄道事業の赤字額は2016年度以降5,000万円を超えています。本業である不動産事業やホテル事業などの利益で内部補助をしても、踏切の改修ができないくらい経営は火の車だったのです。

こうした状況に紀州鉄道は、鉄道事業の撤退を検討。事業譲渡先を探していることが、2025年11月に明らかになります。譲渡先が見つからなければ、2026年中にも廃止する方針も打ち出し、後のない状況に追い込まれていたのです。

紀州鉄道の存続に向けて動き出した自治体&沿線住民

紀州鉄道のピンチに対して、地域社会は迅速に動きました。

御坊市の三浦市長は2025年11月に、紀州鉄道が地域にとって大事な資源として「存続できるように協議したい」と表明。翌12月には、市の地域公共交通活性化再生協議会のなかに専門部会を設置し、協議が始まります。構成メンバーは御坊市と紀州鉄道のほか、和歌山県や国、有識者も参加しています。

その初会合は、2025年12月25日に開催。紀州鉄道の経営状況や、今後必要な設備更新費などが確認されました。また第2回部会では、持続可能な運営形態に関する議論も。上下分離方式の導入なども検討したようです。

行政側の動きに呼応するように、沿線住民も動き始めます。2026年1月には「紀州鉄道ファンクラブ」と「紀州鉄道を未来につなぐ会」が相次いで発足。これらの組織は、イベントや清掃活動で紀州鉄道を応援するほか、会費とクラウドファンディングで設備更新費を支援できないかと検討しているようです。

行政も住民も動き始めるなかで開かれた、第3回部会(2026年4月13日)。NHKの報道によると、この会合で「紀州鉄道が、事業譲渡先との交渉や進捗状況などを報告」したようです。この報道に対して御坊市は、翌14日に「市として公表したものではない」という文書をリリース。水面下で進めていた事業譲渡の交渉が、明らかになります。

そして迎えた第4回部会(2026年6月3日)で紀州鉄道は、民間企業への譲渡の見通しが立ったことを報告したのです。

運営主体が変わるだけでは、鉄道は存続できない

新たな運営会社は事業譲渡に合意しており、今後本契約を結ぶ見通しです。しかし、「これで鉄道が存続する」と、手放しで喜べる状況ではありません。利用者数は減少傾向。設備の老朽化が進む一方で、資材や人件費は高騰を続けています。新会社への譲渡が成立しても、数年後に存廃議論が再燃する可能性もあるのです。

これについて、御坊市の三浦市長は2026年6月5日の記者会見で「運行主体が変わるだけでは抜本的な収支改善に至らないことは明白」と指摘。そのうえで、事業者に対する公的支援を検討する考えを明らかにしています。

ただ、公的支援を実行するには住民の理解が必要です。2024年に策定された御坊市地域公共交通計画によると、紀州鉄道の利用者は高校生の通学定期客が主で、社会人の9割以上が利用していないという実態が報告されています。自治体が支援をしたくても、多くの住民が「紀州鉄道への支援は税金の無駄だ」と声を挙げれば、支援できません。

そこで御坊市は、地域の足と観光の両面から鉄道の価値を評価・分析し、紀州鉄道の存在意義を検証する模様です。まずは「紀州鉄道が存続するメリット」を客観的なデータで明確にし、市民の理解を得たうえで具体的な支援メニューを決めることを想定しています。

その調査に必要な予算案を、2026年6月12日に開く定例市議会で提出すると三浦市長は伝えています。調査は外部コンサル会社など専門家に委託するようです。

鉄道事業の譲渡事例は、和歌山電鉄(南海から譲渡)や三岐鉄道北勢線(近鉄から譲渡)などありますが、いずれも沿線自治体が多額の支援を約束することで運行を続けています。事業譲渡はゴールではなく「新しいスタート」です。この先10年、20年と赤字ローカル線が生き残るためには、沿線住民の理解を得ながら実効性のある支援のしくみを構築することが大事です。

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参考URL

御坊市議会(令和8年3月11日)
https://www.city.gobo.lg.jp/sosiki/gikai/gikai/tanto/rokugahaishin/8482.html

紀州鉄道に関する一部報道について(御坊市)
https://www.city.gobo.lg.jp/material/files/group/2/20260414_pressrelease.pdf

御坊市地域公共交通計画
https://www.city.gobo.lg.jp/material/files/group/2/R5_gobochikikotukeikaku.pdf

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