【NEWS】JR三江線の代替バス「江津川本線」が廃止へ – わずか9年で終幕

江津川本線が通るJR江津駅 協議会ニュース

【2026年10月20日】JR三江線廃止後の代替バスとして地域輸送を担ってきた「江津川本線」について、運行主の石見交通は2027年3月末で廃止にすると沿線自治体に伝えました。2018年の運行開始からわずか9年で、代替バスの主要路線が姿を消します。

江津川本線は、島根県の江津市と川本町を結ぶ42.3kmの路線です。通学や通院の足として、1日9本を石見交通が運行しています。しかし、1日あたりの利用者数が10人未満と低迷。昨今のドライバー不足も重なり、石見交通は江津川本線の廃止届を2026年9月末に中国運輸局へ提出しました。

沿線自治体は、廃止時期の見直しを含め運行継続を求めましたが、石見交通の廃止届出を受けて交渉を断念。今後は、新たな交通手段の確保に向けて代替交通の検討に着手するとしています。

【解説】江津川本線が廃止へ…代替バスも維持できない中国山地の過疎地域

江津川本線は、旧JR三江線の石見川本駅から江津駅までを並走するかたちで、2018年に運行開始。利便性を高めるために、江津駅の先にある済生会病院や江津高校前まで運行しています。

JR西日本が三江線の廃止届を国土交通省に提出したのは、2016年9月でした。これを受けて沿線自治体は同年11月に、法定協議会「三江線沿線地域公共交通活性化協議会」を設立。廃止後の代替交通について検討を始めます。

検討結果は「三江線沿線地域公共交通計画」にまとめられ、鉄道に代わる14のバス路線を設定します。このうち江津川本線は、三江線のほか石見交通の川戸線、江津市生活バス、自治体運行のスクールバスなど既存バス路線も再編し、市町をまたぐ地域間幹線として誕生します。運行主体は、石見交通が担うことになりました。

代替バスの運行後も沿線自治体は、通学定期代の半額を助成したり運行ルートを柔軟に変更したりと、沿線住民の利便性向上のための工夫を重ねてきました。こうした利用促進策が功を奏してか、運行開始直後の江津川本線は利用者が増加します。
しかし、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大や代替バスの再編(14路線から10路線に再編)などが原因で減少に転じ、江津川本線の利用者数は1桁に落ち込んでしまったのです。

■江津川本線の1日あたりの利用者数

江津川本線の1日あたりの利用者数
▲各年度の実績は、前年10月から当年9月までの平均値。2024年度の場合、2023年10月から2024年9月までの平均輸送量を指す。
参考:「第2期三江線沿線地域公共交通計画【資料編】」をもとに筆者作成

利用者が減れば運賃収入も減り、赤字額は増えます。江津川本線における欠損補助は、2018年度の1,568万円から2022年度には2,961万円まで増加(国庫補助を含む)。自治体負担も重くなっていきます。

なお、路線バスの運営上の赤字には国の補助金が使えますが、江津川本線のような地域間幹線に対する補助には「1日平均15人以上」などの条件があります。江津川本線はこの基準を下回る状況が続いており、いずれ国の補助金が得られなくなる可能性がありました。

石見交通が江津川本線から撤退する理由は?

一方、運行主体である石見交通は昨今のドライバー不足の影響で、「バス路線を維持できない」という課題を抱えていました。バス事業者からみれば、限られたドライバーを効率よく運用するには「利用者の少ない路線の減便や廃止」も検討しなければなりません。

江津川本線の場合、減便により維持したとしても、国の補助条件である「1日平均15人以上」を下回っています。いずれ国の補助が打ち切られ、廃止になることが予測されたのです。

このような背景から石見交通は、江津川本線を廃止にする方針を決定。2026年8月4日に、沿線自治体の江津市と川本町に書面で伝えます。これに対して両市町は、廃止の見直しを求める要望書を送付。協議を通じて存続を求めていく考えを示します。

とはいえ、協議をしたところでドライバーや利用者が増えるわけではないでしょう。石見交通の廃止方針は固く、同年9月30日に中国運輸局へ廃止届を提出。江津川本線の廃止日は、2027年3月末の予定です。

「利用者が減る」から鉄道もバスも廃止される

三江線の代替バスとして誕生した江津川本線は、わずか9年で廃止されることになりました。こうした事実をもとに「バスは鉄道より安易に廃止される」として、鉄道の廃止反対を主張する方もいるようです。確かに、バス転換されることで利用者がさらに減り代替バスも廃止されるケースは、全国的に増えつつあります。

また、「代替バスも廃止されたら、どうするんだ」と、鉄道の存廃に関する住民説明会などで主張する沿線住民の声も、よく聞かれます。バスは公共交通の「最後の砦」とも言われますから、不安になる方々の気持ちも理解できます。

しかし、そもそも鉄道やバスが廃止される最大の要因は「利用者の減少に歯止めがかからない」からです。鉄道もバスも、一定の利用者数が維持される限り、事業者は安易に廃止にしません。つまり、鉄道やバスの廃止を防ぐには「沿線住民が普段から利用する」のが有効な施策です。

とはいえ、地域公共交通が「利用しづらい」のも事実でしょう。使いたい時間帯に運行していなかったり、出発地・目的地が駅やバス停から離れていたり、目的地までの所要時間が増えたりと利便性が悪くなれば、みんなマイカーで移動します。

現に、三江線沿線住民の多くが普段からマイカーや家族の送迎で移動している人たちです。三江線廃止後の2019年に川本町が実施したアンケート調査によると、廃止前と廃止後の公共交通の利用頻度について、住民の8割以上(廃止前約81%、廃止後約82%)が「まったく利用しない」と回答したそうです。

その一方で、代替バスになって利便性がどう変わったかという質問には「以前と変わらない(約37%)」と答えた人がもっとも多く、「やや不便になった(約21%)」「かなり不便になった(約22%)」という結果に。便利になったと答えた人たちは、2割程度しかいなかったのです。これらの結果から、大多数の沿線住民には「鉄道もバスも不便」として、公共交通の利用が避けられたことがうかがえます。

石見交通との協議断念を受けて江津市と川本町は、来年4月からの新しい交通手段の検討に入りました。沿線地域の人口は、ここ10年で15%前後も減少しています。廃止路線の跡をなぞるだけでは利用者はさらに減るだけで、いずれ新しい交通モードも廃止されてしまうでしょう。民間バス会社に運行委託するのが難しい現状において、自治体が主体となり地域の実情に合った公共交通へ再構築することが、持続可能なモビリティ維持への鍵となります。

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参考URL

三江線沿線地域公共交通計画(島根県)
https://www.pref.shimane.lg.jp/admin/region/access/tetudo/jr.data/01keikaku.pdf?site=sp

第2期三江線沿線地域公共交通計画(島根県)
https://www.pref.shimane.lg.jp/admin/region/access/bus/sankoumou.html

江津市地域公共交通計画
https://www.city.gotsu.lg.jp/soshiki/3/28484.html

川本町地域公共交通計画
https://www.town.shimane-kawamoto.lg.jp/gyosei/town_administration/various_plans/machizukurisuishinka/5298

JR三江線廃止後の沿線住民の公共交通に対する意識構造(島根県立大学 総合政策学会『総合政策論叢』第41号)
https://izumo.u-shimane.ac.jp/img/old_post_img/20230402150755_4/02_saito.pdf

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