【NEWS】JR赤字路線問題に広島県知事が持論 – 有識者「県は何もする気がない」

広島県 協議会ニュース

【2026年3月18日】国土交通省は「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会(第2期)」の第4回会合を開き、その議事録が公開されました。この検討会は2026年2月18日に開催したものです。

検討会には自治体代表として、長野県の阿部知事、広島県の横田知事、新潟県の花角知事の3名を招集。赤字ローカル線の維持に向けた各県の取り組みや、国・JRへの要望などを述べました。

このうち広島県の横田知事は、JRの内部補助による路線維持や国による鉄道ネットワークの定義を強く求めましたが、有識者の委員から疑問や意見が噴出。「広島県は何もする気がないと言っているに等しい」といった厳しい声も聞かれました。

横田知事は、利用促進や駅活用の検討など自治体としての役割を果たしていると反論し、議論は平行線を辿っています。

【解説】JR赤字路線問題の検討会で露呈した広島県と有識者の温度差

「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会(第2期)」は、広島県をはじめ全国知事会が提出した「特別要望書」をもとに、2025年10月より開催。主にJR赤字ローカル線の再構築をめぐり、国・自治体・JRの役割分担などを議論しています。

第2回(2025年11月25日開催)では、JR東日本、JR西日本、JR九州に対するヒアリングを実施。内部補助や鉄道ネットワークに関する考え、国・自治体への要望などの意見が出されました。

自治体へのヒアリングは、第3回(2025年12月24日開催)から第5回(2026年3月18日開催)の3回にわけて実施。第4回(2026年2月18日開催)では広島県の主張に対して、公共交通や都市計画などの専門家である有識者委員から厳しい意見が噴出しました。なお広島県は、2022年に開かれた第1期の検討会(湯崎前知事が参加)でも有識者委員と対立しています。

今回の第2期では、どのような流れになったのかを詳しくみていきます。

広島県が主張する「JRや国の責任と内部補助」

広島県のプレゼン資料
▲広島県が提示したプレゼン資料。
出典:第4回鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会(第2期)配布資料「広島県プレゼン資料」

広島県の横田知事は冒頭の説明で、中山間地域の持続可能性に「国もローカル線のあり方を議論することが重要」と強調。そのうえで、以下3点を軸に持論を展開します。

(1)鉄道ネットワークの維持
輸送密度などの「データのみ」で存廃を判断すれば、鉄道ネットワークが分断されて地域衰退を招く。国が、全国的な鉄道ネットワークの考え方や範囲を明らかにすべき。

(2)JRの内部補助
JR各社は大きな利益を上げている。その利益を地域インフラであるローカル線に還元すべきであり、なぜ内部補助で維持できないのか具体的なデータを示してほしい。

(3)持続可能性
自治体がコストを負担するよりも、経営基盤の安定したJRが運行を続けたほうが持続可能性は高い。JRはもっと地域の交通体系の維持に協力していただきたい。

このほか地域の取り組みとして、芸備線再構築協議会などで基礎自治体(市町)が利用促進などに協力していることも説明しました。ただ、広島県の資料にはJRと国への要望ばかりが目立ち、県としての交通政策や取り組みの内容が薄く感じます。

「突っ込みどころ満載」有識者委員が痛烈に批判

横田知事の説明に対し、有識者委員からは「資料を理解するのが難しい」といった困惑の声や「突っ込みどころが満載」と痛烈な批判が相次ぎます。

前富山市長で富山大学客員教授の森委員は、「あらゆる問題の解決はJRと国がやるべきで、広島県は何もする気がありませんと言っているに等しい」と断じ、主体的な関与が感じられない県の姿勢を問題視しました。

また、名古屋大学大学院教授の加藤委員は「(鉄道路線が)物理的に繋がっているから国土発展に貢献しているというのは科学的ではない」と、中山間地域の持続可能性に必ずしも鉄道が貢献しないことを説明。内部補助の考えも「利用の多い区間にも投資すべきであり、利用の少ない区間は別の交通モードも含めて検討すべき。残せばよいという単純な発想が地域の発展を止めている」と、鉄道ありきの広島県の姿勢を厳しく批判しています。

さらに、流通経済大学教授の板谷委員からも「人が乗らなくても(鉄道を)残そうとするのは、日本の経済成長を阻害する考え方。第二の国鉄を生み出しかねない」と、財政的・経済的視点の欠如を指摘しました。

相次ぐ疑問や意見に対して横田知事は、広島県もJR赤字ローカル線の維持に向けて一定の役割を果たしていると反論。「今ある路線を『最低限残してほしい』という意見ではない」「需要の拡大に向けて、県も投資が必要だという認識は持っている」「そのために利用促進や駅を中心としたまちづくりなど、県が主体的に取り組んでいる」などと伝えます。

ただ、具体的な投資判断や鉄道以外の交通モードへの転換の可能性については、「JRからデータをもらって議論する」と述べるに留まり、県としての交通政策ビジョンを明示できませんでした。

内部補助に関しては、オブザーバーとして出席したJR西日本からも意見が出ています。

JR西日本は「内部補助で維持すべき路線があることは認識している」としつつも、「1日数本しか走らず、利用者が数人の状況をいつまで続けるのか」「企業価値を維持・向上させる責任があるなかで、最適な資金や人材の配分を考えなければならない」と、芸備線再構築協議会でも伝えた内容を改めて説明します。

また、仮に鉄道が廃止になった場合でも「私どもとしては、逃げるつもりはございません」と、廃止後も地域と協力して公共交通を維持する姿勢を強調。「地域にとって本当に利便性の高い交通は何なのか、共に考えてほしい」と、広島県に歩み寄りを求めています。

有識者やJR西日本の疑問や意見に、広島県は今後おこなわれる芸備線再構築協議会などでどのような手を出してくるか、注目されます。

検討会がJR赤字路線問題の「方向性」を提示

広島県と有識者との激しい応酬が繰り広げられてから1カ月後の2026年3月18日に、第5回検討会が開催されます。この検討会では、これまで議論してきた内容からJRと自治体の課題をまとめるとともに、赤字ローカル線を「誰が、どのように維持・負担するか」といった方向性も示しています。

有識者委員の提言は、以下の通りです。

【国に提言】ローカル鉄道の再構築推進等のための制度の充実・強化

ローカル線の維持に自治体が負担しやすいように、「国の制度のあり方」の見直しが必要。JRや地域が頑張れるインセンティブを付与するシステムなども、国に検討を求めたい。

【国と自治体に提言】鉄道ネットワークの基本的なあり方

国として維持する幹線を明示した「グランドデザイン」の検討・公表が必要。
また、都道府県や市町村は「住民の生活の質を向上させるために、モビリティをどうするか」という視点で検討すべき。「社会インフラ」「公共サービス」といった曖昧な概念や言葉ではなく、各路線で「何が必要なのか」「どのような意義があるのか」と具体的な議論をしていく。

【自治体に提言】地域とローカル鉄道の関係

まちづくりのビジョンやグランドデザインを検討し、「それを実現するために鉄道が必要だ」というロジックが必要。そのためには地域住民を巻き込み、地域の意思を引き出すこと。

【JRに提言】国鉄分割・民営化の経緯を踏まえJRに期待される役割

自治体に主体的・能動的な姿勢が足りないのは、JRに関する情報やノウハウが自治体にないことも一因。JRは、自治体の地域公共交通計画やしくみの策定に積極的に関わるなど、シンクタンク的な機能が求められる。地方創生や地域の持続可能性に貢献するために、JRの鉄道網をどのように活かすかを議論すべき。

【自治体に提言】内部補助に関する考え方

内部補助をするだけの理由を、自治体側が合理的に説明することが重要(過度な内部補助は賛成できない)。
「地域住民は鉄道を『日常の移動手段』として必要としているのか」「必要としてもらうためには何が課題か」を整理する。

【国と自治体に提言】全国の鉄道ネットワークを支える財源確保について

税やユニバーサルサービス料など、財源の確保も検討したい。すべての鉄道を残すのが現実的に難しいなかで、次世代に負担を渡さないよう納得できるコスト負担を考えていく。

◇◇◇

JR赤字ローカル線の存廃をめぐる協議で、「何を議論すべきか」という具体点まで踏み込んだ提言です。

誤解がないように補足すると、有識者委員は利用者の少ない路線の廃止を求めているわけではありません。「ただ残せと言うだけでなく、地域をどうしたいのか、鉄道をどう活用するのかを検討してほしい」と、自治体の当事者意識を高めた議論を願っているのです。

自治体の責務は、鉄道を残すことではありません。「住民の生活の質を上げるために公共交通をブラッシュアップすること」です。建設的な議論の結果「鉄道が必要」ということであれば、鉄道を維持するためのしくみをJRと一緒に考えればよいのです。

沿線住民が利用しやすい公共交通を、どのように再構築していくのか。これは広島県だけでなく、全国のJR赤字ローカル線を抱える自治体に託された宿題でもあります。

地域モビリティの刷新に関する検討会の関連記事

参考URL

第4回議事概要(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001986859.pdf

課題整理の方向性(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/tetudo/content/001990000.pdf

鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会(第2期)について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk5_000011.html

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