【JR九州】吉都線は廃止を防げるか?高速道路に人を奪われたローカル線

吉都線のえびの駅 JR

吉都線は、宮崎県の吉松と都城をつなぐJR九州のローカル線です。かつては急行列車も走る路線でしたが、高速道路の延伸開業などの影響で2000年に廃止。現在は、普通列車のみ、1日8往復運行しています。

沿線自治体は30年近くにわたり利用促進策を展開していますが、利用者の減少は続いています。今後の「鉄道のあり方」が注目される路線のひとつです。

JR吉都線の線区データ

協議対象の区間JR吉都線 吉松~都城(61.6km)
輸送密度(1987年→2023年)1,518→402
増減率-74%
赤字額(2023年)4億2,800万円
営業係数656
※輸送密度および増減率は、JRが発足した1987年と2023年を比較しています。
※赤字額と営業係数は、2023年のデータを使用しています。

協議会参加団体

都城市、高原町、小林市、えびの市、湧水町

吉都線と沿線自治体

吉都線をめぐる協議会設置までの経緯

吉都線の沿線自治体は、1994年に「JR吉都線利用促進協議会」を設置しています。この前年には、吉都線のワンマン運転が開始。また、翌1995年には九州自動車道の人吉~えびの間の開通を控えており、宮崎から熊本・福岡方面への移動が鉄道から自動車に大きくシフトすることが想定されました。当時、吉都線には急行えびのが走っており、この廃止を防ぐ意味でも、沿線自治体は利用促進などを目的とした協議会を設置したと考えられます。

協議会では、沿線マップやガイド、パンフレットなどを制作し、吉都線の利用促進に努めます。しかし、高速道路の延伸開業による影響は大きく、2000年には急行列車が廃止になります。さらに、沿線の少子化・過疎化の影響もあり、利用者数は減少の一途をたどり続けます。

JR九州などと連携した検討会を発足

一方、JR九州は2019年より「線区活用に関する検討会」を開催しています。この検討会は、吉都線をはじめ利用者が大きく減少した線区を対象に、沿線自治体や九州運輸局と協働で利用促進などに取り組むことを目的とした場です。もちろん、沿線自治体に線区の現状を理解してもらうことも目的にしています。

吉都線の検討会では、イベント列車の運行や団体利用への支援などの取り組みを実施。実施した施策に対する、効果検証もおこなっています。

ちなみに、「線区活用に関する検討会」を開催しているのは吉都線のほか、筑肥線(伊万里~唐津)、日南線(油津~志布志)、指宿枕崎線(指宿~枕崎)の4路線です。

吉都線の主な取り組み

JR九州の検討会をはじめ、沿線自治体が協力して実施してきた利用促進の取り組みについて紹介します。

  • 企業とコラボしたラッピング列車の運行(キットカット列車など)
  • イベント列車の運行(レストラン列車の運行など)
  • 団体利用者などへの運賃支援(小中学校や幼稚園、老人クラブなどの活動が対象)
  • 吉都線サポーターの募集
  • 駅周辺などの環境美化活動
  • 通勤定期購入の支援

…など

鉄道ファンのあいだで有名になったのは、ネスレ日本の「キットカット」とコラボレーションした、ラッピング列車の運行でしょう。だるまや招き猫など縁起物をあしらったデザインは、沿線の高校生が担当。一部の吊り輪をハートマークに変更したり、乗客にキットカットの商品や絵馬を配布するなど、細部にもこだわった列車でした。なお、この企画はJR九州との検討会が始まる前の2018年に実施したものです。

検討会で決まった利用促進策については、2022年は6件実施。一部施策の結果は、以下の通りです。

  • イベント列車の運行:15人
  • 吉都線を活用したツアーへの支援:424人
  • 吉都線団体利用への支援:23団体・739人

このほかのイベントを含め、トータルの参加者は約1,300人でした。コロナ禍の実績としては、比較的に多かったのかもしれません。ただ、イベントだけでは全体の利用者を増やすには至らず、厳しい状況が続いています。

なお、検討会は2023年以降も続く予定ですが、さらなる利用促進策が求められるところです。

※沿線自治体と協議を進めている路線は、ほかにも複数あります。各路線の協議の進捗状況は、以下のページよりご覧いただけます。

【九州】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
九州地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

参考URL

交通・営業データ(JR九州)
https://www.jrkyushu.co.jp/company/info/data/senkubetsu.html

協議会について(JR吉都線利用促進協議会)
https://kittoline.jp/about-council/

2022年度「線区活用に関する検討会」の取り組みについて(JR九州)
https://www.jrkyushu.co.jp/news/__icsFiles/afieldfile/2023/07/25/230725_senkukatsuyou_2022.pdf

吉都線沿線の環境美化活動などに対して補助金を交付しています(都城市)
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/soshiki/78/1012.html

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