【2026年3月30日】南海電鉄は、子会社の南海フェリーが運航する和歌山~徳島の航路を、2028年3月末を目途に撤退すると発表しました。撤退時期は、船舶や設備の老朽化などの理由で早まる可能性もあるとしています。
撤退の理由について南海電鉄は、明石海峡大橋の開通による利用者減少や、燃料価格をはじめ運航コストの上昇などにより収益が悪化。2021年度以降は債務超過が続いているとしています。またフェリーの老朽化も進んでおり、新たなフェリーの建造費を確保できないことも、撤退の理由として挙げています。
なお、南海フェリーと連絡する南海和歌山港線については、現段階で「廃止予定はない」としています。ただ、利用者の大半がフェリー利用者とみられ、南海和歌山港線の行方も注目されます。
【解説】フェリー廃止で問われる南海和歌山港線の価値
南海では、和歌山と徳島(小松島)を結ぶ航路を1956年から運航しています。同じ年に鉄道も、南海和歌山港線が開業。2026年現在は、和歌山市駅から和歌山港駅までの2.8kmを営業運行しています。
今回、南海電鉄が撤退を表明したのはフェリーのほうです。その理由のひとつが、利用者の減少でした。
南海フェリーは、前身の南海汽船を継承するかたちで1975年に設立。1995年度には約97万人が、和歌山~小松島の航路を利用しました。しかし、この年をピークに減少が始まります。1998年に明石海峡大橋が開通すると、関西と四国の移動は陸路が主役となり、フェリー利用者は激減。2008年度には50万人を割り込みます。
航路廃止の危機感を抱いた和歌山・徳島の県市は、2009年に「和歌山徳島航路活性化協議会」を設置。南海フェリーとともに、ツアー商品の開発やポスター製作、自転車・バイクの無料キャンペーンなど、さまざまな利用促進に取り組んできました。これが功を奏してか2009年度は50万人台を回復しますが、翌年度からは40万人前後にまで落ち込んでしまったのです。
2020年度にはコロナの影響で、利用者数は19万人台にまで減少。その後、回復傾向にあるものの、2024年度の利用者数は357,326人と、ピーク時の3分の1程度まで減少しています。
航路の維持に自治体支援を申し入れた南海
コロナ禍後も、南海フェリーの苦しい台所事情が続きます。
そのひとつが、フェリーの更新です。和歌山~徳島の航路では現在「かつらぎ」「あい」の2隻が運航していますが、このうち「かつらぎ」は竣工から26年が過ぎ、寿命に近づきつつあります。新たなフェリーの建造費は40億円以上。債務超過が続く南海フェリー単体での資金調達は不可能です。
また、運航コストの上昇も問題です。とくに燃料価格は、ここ数年で2倍近くに高騰し収支を悪化させています。ちなみに南海フェリーの営業損益は、2024年度は900万円の赤字でした。
こうした状況で南海電鉄は、2025年夏に和歌山・徳島の両県市へ支援を申し入れたことを朝日新聞(2026年4月1日)が伝えています。記事によると、「新フェリーの建造費」と「運航経費の赤字補てん」の自治体負担を南海電鉄が要望したそうです。これに対して自治体側は負担が大きすぎるとして、支援ではなく貸し付けなどを提案しますが、南海電鉄と合意できなかったとしています。
自治体からの支援が得られなかった南海電鉄は2026年3月30日に、フェリー事業の撤退、つまり和歌山~徳島の航路からの撤退を表明したのです。
フェリー廃止後も南海和歌山港線は存続できるか?
和歌山~徳島の航路撤退で、気になるのが南海和歌山港線の将来です。
和歌山港線にはかつて、久保町、築地橋、築港町などの途中駅があり、通勤などにも利用されました。1975年度の利用者数は、年間で約127万人。この年をピークに減少へ転じ、2000年代に入ると50万人を割り込みます。とくに途中駅の減少が著しく、2005年にはすべての途中駅を廃止。現在の和歌山港線は南海フェリーとの接続に特化され、難波駅と結ぶ特急列車や急行列車も運行しています。
ただ、フェリーの利用者が減れば和歌山港線の利用者も減り、コロナ禍の2020年度には10万人を下回ります。その後は回復し、2024年度の利用者数は約15万3,000人、1日あたり約420人です。和歌山港線には途中駅がありませんから、輸送密度も約420人になります。
■南海和歌山港線の利用者数(単位:千人)

現状、和歌山港線の利用者はフェリー利用者や見送りの客が大半でしょう。南海電鉄は、現段階において和歌山港線の廃止はないとしていますが、フェリーがなくなれば和歌山港線の存在意義は薄れます。毎年夏におこなわれる花火大会では観客輸送を担いますが、年1回のイベントのために鉄道を残すのは難しいでしょう。
ちなみに、和歌山港線の大部分(2.0km)は和歌山県が整備・保有しており、上下分離方式で運行しています。仮に南海が撤退を表明しても、別の鉄道事業者を誘致して存続させるという方法も考えられます。とはいえ、沿線には工場などが並ぶだけで、めぼしい観光施設はありません。県として和歌山港線をどのように活用していくかも、今後問われることになりそうです。
参考URL
フェリー事業からの撤退について(南海電鉄)
https://www.nankai.co.jp/lib/company/ir/news/pdf/260330.pdf
和歌山徳島航路活性化協議会(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/000057577.pdf
和歌山徳島航路利用促進事業(和歌山市)
https://www.city.wakayama.wakayama.jp/kurashi/douro_kouen_machi/1007740/1002193.html
自治体に負担要望、合意できず 南海フェリー、建造費や赤字補てん(朝日新聞 2026年4月1日)
https://www.asahi.com/articles/ASV3043SBV30PXLB00GM.html
和歌山県公共交通機関等資料集
https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/020500/book_d/fil/R6siryou.pdf