【NEWS】西鉄貝塚線と地下鉄箱崎線の直通運転に向けたトップ会談が初開催

西鉄貝塚線の駅 協議会ニュース

【2026年7月2日】西鉄の林田社長と福岡市の高島市長は、西鉄貝塚線と地下鉄箱崎線の相互直通運転に向けた初のトップ会談を開きました。

会談では、貝塚線の混雑緩和に向けて従来の2両編成から6両編成へ増結する案を軸に、前向きに検討を進めることで一致。採算性や費用対効果を踏まえた実現可能性について、今後協議していくことを確認しました。

会談後の記者会見で、高島市長は「6両編成案を含めて幅広く検討したい。地域の皆さんの期待に応えられるよう頑張る」と述べています。また林田社長は「国の補助がなければ前に進まない。(福岡市と)二人三脚で知恵を出し合いながら検討を深めたい」と語っています。

【解説】西鉄貝塚線と地下鉄箱崎線の直通化構想 – 実現可能性は?

箱崎線は、中洲川端駅と貝塚駅を結ぶ福岡市地下鉄の路線です。貝塚駅では西鉄の貝塚線と接続しますが、両路線のホームは離れており乗り換えは一度改札を出て入り直す必要があります。

また、箱崎線は6両編成で運行されていますが、貝塚線は2両編成です。レール幅は同じでも編成数が異なるため、直通運転するにはホーム長や軌道・路盤の強度などを合わせる必要があります。仮に6両編成で統一する場合、貝塚線のホーム延伸や線路補強などに数百億円かかるといわれ、単に「レールをつなげば直通運転できる」という話ではありません。

両路線の直通化構想は、箱崎線開業前の1970年代からありました。1997年には、貝塚~西鉄香椎における相互直通運転について、福岡市と西鉄が実現に向けて検討することで合意しています。

しかし、当時はモータリゼーションの進展や並行するJR鹿児島本線との競争で、貝塚線(当時は宮地岳線で津屋崎まで運行)の利用者数は減少傾向にありました。こうしたなかで、直通運転にともなう改修などに多額の投資は難しいとして、議論は停滞。利用者減少に歯止めがかからなかった西鉄新宮~津屋崎は、2007年に廃止されます。

その後も、市の交通対策特別委員会が「3両編成による直通運転案」や「貝塚駅で車両を増結・分離させる案」を検討していますが、いずれも費用対効果などに課題があるとして計画は頓挫したのです。

沿線人口の増加と車両軽量化が構想実現の突破口に

幾度も頓挫した箱崎線・貝塚線の直通化構想ですが、ここにきて再び動き始めたのは、なぜでしょうか。理由は大きく2つあります。ひとつは「沿線地域の人口増加」、もうひとつが「車両の軽量化が進んだこと」です。

福岡市の人口はいまも増え続けており、なかでも箱崎線・貝塚線の沿線地域は市内でもトップクラスの人口増加率を誇ります。これにともない、鉄道の利用者数も増加。貝塚線の朝の混雑率は164%(2024年度)と、東京の通勤路線並みに高く、貝塚駅では乗換客の混雑が課題になっています。

なお、箱崎線沿線の九州大学箱崎キャンパス跡地では約2,000戸の住宅などを整備する巨大プロジェクトが始動。貝塚線沿線でも、かしいかえん跡地の再開発が注目されており、人口増加は今後も続く見通しです。

■西鉄貝塚線の混雑率と平均利用者数

▲混雑率は、最混雑区間(名島→貝塚)の7:30~8:30の列車。平均利用者数は、1日あたりの利用者数。
出典:国土交通省「最混雑区間における混雑率」の各年データと、福岡市「福岡都市圏における公共交通に関する調査」をもとに筆者作成。

また、鉄道車両の軽量化も構想を後押ししています。車両が軽くなれば、貝塚線で改修が必要な線路補強箇所が減り、工事費用を抑えられる可能性があります。

つまり、利用者増加にともなう収入増と、車両軽量化による改修費用の縮減により「採算性や費用対効果を改善できる」と福岡市と西鉄は考え、直通化構想を再始動させたのです。

福岡市は2025年5月に策定した「福岡市都市交通基本計画」で、両路線の直通運転について「中長期的な交通状況の変化や国制度の動向などを踏まえ、利便性向上策とあわせて検討」していく考えを示しています。また西鉄も2026年3月に公表した「にしてつグループ第17次中期経営計画」に、「西鉄貝塚線と地下鉄箱崎線の直通運転の実現に向けた検討」を進めると伝えています。

箱崎線・貝塚線直通化構想の3つのプランと課題

箱崎線・貝塚線の直通運転に向けて、福岡市と西鉄は以下3案をベースに検討していくとしています。それぞれのメリットと課題をまとめました。

3両編成案増結・分離案6両編成案
概要箱崎線・貝塚線の双方を3両編成に統一する。貝塚駅で2両と4両の車両を連結・切り離しする。貝塚線を6両編成にする。
メリット貝塚線の改修費用を抑制できる。貝塚線の改修費用を最小限に抑えられる。混雑緩和効果は最大。
課題箱崎線の輸送力が減り、地下鉄利用者の利便性が低下。連結作業による速達性の低下で、費用対効果が減少。貝塚線全駅のホーム延伸や線路補強など巨額の投資が必要。

いずれの案もメリット・デメリットがありますが、巨額の費用が必要なことには変わりありません。そこで福岡市と西鉄は、国の支援制度の活用を検討しています。ただ、国の制度を活用するには、収支採算性や費用対効果(B/C)などの条件(補助採択基準)をクリアしなければなりません。

ちなみに、「3両編成案」と「増結・分離案」の2案について、福岡市はかつて収支採算性と費用対効果を試算しています。それによると、3両編成案(2014年度に試算)の収支は年間1.000万円の黒字ですが、B/Cは0.6で補助採択基準の1を下回りました。増結・分離案(2020年度に試算)の収支は年間2億6.000万円の赤字、B/Cは0.42で、いずれも国の補助条件を満たしていません。

この試算結果から国の支援を得られず直通化構想は頓挫してきたわけですが、沿線地域の発展や将来のまちづくりなどを踏まえることで「黒字収支」「B/Cが1以上」になる可能性もあるでしょう。

一方で、昨今の物価高騰により鉄道の工事費は増加傾向にあります。また、沿線人口は2040年ごろまで増える予測ですが、その後は減少期を迎えます。これらのマイナス要因を上回るプラス要因を、どれだけ提示できるか。これから始まる協議に期待したいところです。

参考URL

福岡都市圏における公共交通に関する調査(福岡市)
https://www.city.fukuoka.lg.jp/gikaizimukyoku/giji/20250124_cyokutuunten1.pdf

福岡市都市交通基本計画
https://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/kotsukeikaku/opinion/documents/toshikotsukihonkeikaku-all.pdf

にしてつグループ 第17次中期経営計画(西鉄)
https://www.nishitetsu.co.jp/ja/news/news20260319/main/0/link/25_122.pdf

タイトルとURLをコピーしました