【NEWS】長良川鉄道の存続・廃止議論は先送りに – 活性化策の協議を優先

長良川鉄道の列車 協議会ニュース

【2026年1月7日】長良川鉄道の一部線区の存続・廃止を検討する首長会議が開かれ、沿線自治体は「存廃議論の先送り」を確認しました。当面は全線存続に向けて、利用者を増やすなど活性化策の議論を優先する方針です。

この日の首長会議には、沿線5市町が参加。長良川鉄道の社長を務める関市の山下市長は、自治体負担額が増加傾向にあることから、利用者の少ない線区の廃止意向を伝えます。しかし、他の4市町からは「沿線住民の理解を得る必要がある」「拙速な議論は避けるべきだ」など、廃止に慎重な意見が噴出。これを受けて、一部線区の存廃議論はいったん保留とし、有識者などを交えながら存続の道を探ることで一致しました。

ただ、会議後の会見で山下市長は「専門家のアドバイスを受けながら挑戦し、その結果どうにもならなければ一部線区の廃止もありうる」と伝えています。

【解説】長良川鉄道の存続・廃止議論は深まったのか?

長良川鉄道は、沿線自治体や県などの支援を受けながら運行を続けていますが、老朽化した施設の修繕費増加などにより赤字額は増加傾向にあります。これにともない、沿線自治体などが負担する公的支援も増加。2024年度はトータルで約12億100万円を支援しており、このうち沿線自治体は6億8,026万円を負担しています。

2018年度はトータルで4億1,418万円(うち沿線自治体の負担額は2憶4,022万円)でしたから、わずか6年で約3倍に膨れたのです。

■長良川鉄道に対する公的負担額の内訳(2024年度)

郡上市3億5,259万円
関市1億4,370万円
美濃市8,647万円
美濃加茂市8,268万円
富加町1,482万円
岐阜県2憶5,128万円
2憶6,946万円
約12億100万円
参考:郡上市「令和7年度 第1回郡上市地域公共交通会議 次第」をもとに筆者作成

公的負担額がもっとも多いのは郡上市で、岐阜県や国よりも多く支援しています。この状況に郡上市の山川市長は、令和7年度の施政方針で「皆様の意見を伺いながら郡上市として具体的な方針を(山川市長の)任期中に示したい」と、長良川鉄道に対する支援のあり方に言及しています。

この施政方針がきっかけとなり、他の自治体でも一部線区の存廃議論が始まったのです。

一部廃止から「経営改善」にシフトした沿線自治体

関市では2025年3月3日に開かれた市議会で、議員が「沿線市町は長良川鉄道の『存続』で一致しているのか?」と、山下市長に質問します。

山下市長は、他の市町の検討状況から「今すぐ廃止にはならないと認識している」と答えながらも、「今後の維持費を考えると公的負担が減る状況にはない」と、支援額の増加を懸念。さらに「私としては通学の生徒たちが困らないよう必要な部分を残すために、一部廃線も視野に入れながら構築をしていくことが、必要な手法ではないかと考えている」と私見を述べたのです。

郡上市と関市が「一部線区の廃止」に言及したことを受け、3月26日に開かれた沿線自治体の首長会議では、新年度から本格的な協議を始めることで一致。廃止検討区間は、「郡上八幡~北濃」または「美濃白鳥~北濃」のいずれかで検討することが確認されます。

協議は4月から、事務レベルの担当者間で始まります。ただ、5月28日に開かれた首長会議では、一部の沿線自治体が「実態に合わせた運行をしたほうがよい」と、減便による経営改善策を提言。また6月27日の取締役会では、イベント列車の観光客が増えているという報告を受けて「コスト削減や利用促進で全線維持できないか」と考える自治体が現れ始めます。

そして迎えた2026年1月7日の首長会議。廃止の意向を示したのは、長良川鉄道の社長を務める関市のみで、他の4市町は「活性化策を考えるのが先だ」と主張。存廃議論は先送りにされたのです。

建設的な議論が進まなかった首長会議

沿線自治体は今後、有識者などを交えて長良川鉄道の全線存続に向けた活性化議論をおこなう方針です。ただ、その議論で決まった取り組みが失敗に終われば、存廃議論が再び始まるでしょう。

沿線自治体は、これまでも観光列車の運行や路線バスとの乗継ぎ改善、貨客混載事業など、さまざまな活性化の取り組みを実施してきました。2025年10月18日には、コスト削減の一環で減便ダイヤ改正を実施。平日で11本、土日祝日で20本を減便し、年間で約1,100万円の経費削減効果を生んでいます。

とはいえ、7億円近くの自治体負担額からみれば微々たるものです。他の施策による効果を含めても、負担額の軽減は難しいでしょう。

長良川鉄道の首長会議を見ていて気になるのが、「責任の所在があいまいになっていないか」という点です。

長良川鉄道の取締役は沿線自治体の首長が務め、代表は2年ごとに交代しています。第三セクター事業者でよくみられる運営体制ですが、この体制だと責任の所在が不明確になりやすく「馴れ合い体質になる」というデメリットがあります。これは第三セクター事業者が陥りやすい特質で、倒産する理由のひとつでもあるのです。

長良川鉄道でも、大きな損失が生まれているにもかかわらず、結論を先送りにしたり、公益性を盾に「損失が生じたら公的負担(=税金による赤字補てん)をすればよい」と抜本的な経営改革から目をそらしたりと、どこか他人事のようにも感じられます。公益性も大切ですが、収益性と両立させなければ、ローカル線の経営は成り立ちません。

この状況を打破するには、事業者側の人材で代表を据えるなどして、責任の所在を明確化することも必要でしょう。ひたちなか海浜鉄道や若桜鉄道などのように「公募社長」を募るといった、民間の力を活用するのも一手です。

すでに巨額の公的負担が生じている長良川鉄道では、自治体による従来の経営手法で立て直すのが難しくなっています。手遅れになる前に、専門家の知見を借りながら、抜本的な経営改善に向けた体制づくりも議論してほしいところです。

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参考URL

令和7年度施政方針(郡上市)
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/detail/11925.html

令和7年度 第1回郡上市地域公共交通会議 次第
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/docs/59a6d8c5f84c403158d6a0d41204d7e9614bbce6.pdf

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