【長良川鉄道】利用者減少に歯止めをかけた沿線自治体の取り組み

長良川鉄道の駅 三セク

長良川鉄道は、美濃太田から北濃まで岐阜県の中央部を南北に縦断する、第三セクターの鉄道事業者です。

三セクとして開業後は、マイレール意識の高まりもあって利用者数は増加傾向にありましたが、1992年の約180万人をピークに減少へ。2010年には、80万人を割り込みました。ただ、2010年以降は減少に歯止めがかかっています。減少を抑えられた一因に、沿線自治体と岐阜県の協力と支援がありました。

長良川鉄道の線区データ

協議対象の区間越美南線 美濃太田~北濃(72.1km)
輸送密度(1987年→2019年)896→364
増減率-59%
赤字額(2019年)2億9,397万円
※輸送密度および増減率は1987年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

美濃加茂市、関市、美濃市、富加町、郡上市、岐阜県など

長良川鉄道と沿線自治体

長良川鉄道をめぐる協議会設置までの経緯

長良川鉄道の前身は、国鉄越美南線です。当初は福井県の越美北線とつながる予定でしたが、国鉄の経営悪化にともない延伸工事は中止に。さらに、越美南線が特定地方交通線に選定されたことで、沿線自治体は第三セクターとして存続させる道を選びます。

長良川鉄道が開業したのは、1986年12月です。開業前の同年8月には、沿線自治体が中心となって「長良川鉄道連絡協議会」を発足させます。

ただ、赤字運営は容易に見通せます。そこで、沿線自治体と岐阜県は、国の転換交付金とは別に、運用基金を設置。これは長良川鉄道だけでなく、明知鉄道など県内の第三セクター鉄道の沿線自治体でも設置したものです。

長良川鉄道では6億円の基金を募り、欠損補助や設備更新などの資金にすることにしました。なお、この基金とは別に沿線の各種団体や企業、個人が組織する「長良川鉄道協力会」でも、駅周辺の美化などに使うため1億円の協力基金を募っています。

資金的にも準備万端で長良川鉄道は開業しますが、利用者数は1992年をピークに減少の一途をたどります。沿線自治体では、持ち回りで年1回の鉄道イベントを開催するなど利用促進に努めますが、減少の歯止めがかかりません。とりわけ2008年には、リーマンショックによる景気減退にくわえ、運賃値上げを実施したことも影響し、利用者は激減してしまいます。

赤字も増える一方で、欠損補助のために募った基金は枯渇。沿線自治体は、長良川鉄道に対するさらなる公的支援の模索を始めることになります。

「市民鉄道」として自治体が長良川鉄道を支援

こうしたなか2008年、沿線自治体は「利用しやすい鉄道」をめざして「市民鉄道へ転換するための計画書」を策定します。この計画書では、岐阜県と連携して公的支援を実施するとともに、コミュニティバスとの乗継ぎ改善や各種イベントでのPRなど、沿線自治体が積極的に利用促進に努める内容になっています。

また、企画列車の運行も沿線自治体が積極的に関与。観光列車「ながら」の誕生につながる「ゆら~り眺めて清流列車」「ごっつぉ~コタツ列車」などの企画列車の運行もあって、年間約72万人にまで減少した利用者数は徐々に増え始めたのです。

▲利用者数は、2013年の約72万人を下限に増加に転じ、以降も横ばいの状態が続いている。
参考:関市「地域公共交通計画」のデータをもとに筆者作成

なお、岐阜県でも2011年に「岐阜県地域公共交通協議会」を設置。長良川鉄道をはじめ、県内の第三セクター鉄道に対する公的支援の実施を決めています。

ちなみに、長良川鉄道に対する公的支援額(2019年度)は、沿線5市町が約3億2,608万円、県が約1億920万円、国が約7,749万円で、合計約5億1,278万円になっています。

長良川鉄道のこれまでの取り組み

長良川鉄道と沿線自治体が協働で取り組んでいる、利用促進施策の一例を紹介します。

  • 企画列車の運行(ゆら~り眺めて清流列車、ごっつぉ~コタツ列車など)
  • 観光列車「ながら」の運行
  • コミュニティバスとの乗継ぎ改善
  • 貨客混載事業
  • ショッピングモールと連携
  • シルバー会員制度の周知による高齢者の利用促進
  • 高校入学説明会で無料乗車券を配布(通学時の体験乗車)
  • 観光施設と連携したツアー企画
  • クーポン付乗車券の販売
  • 広報紙や地域イベントでの利用促進PR

…など

企画列車は、2014年から順次運行開始。2016年からは長良川鉄道初の観光列車となる「ながら」の運行を始めます。「ながら」のデザインを手掛けたのは水戸岡鋭治氏。車内では、沿線の食材を使った料理をふるまうなど、観光客をもてなします。

なお、当初は「森号」「鮎号」という2台の運行でしたが、2018年には新たに「川風号」を増備します。2019年度には、合計13,037人の利用がありました。

また、2018年度からは、貨客混載事業をスタート。ヤマト運輸と連携した事業で、ドライバー不足に悩む物流事業者の課題解決にも貢献しています。

買い物客の利用者を取り込む施策として、関市のショッピングモール「マーゴ」と連携した企画も進めています。鉄道を使った企画やイベント、来店者向けのサービスを実施するほか、2021年からはJAの農産物を列車で運ぶ貨客混載列車も運行しています。

なお、長良川鉄道(国鉄越美南線)とつながる予定であった越美北線の協議については、以下のページで紹介しています。

※沿線自治体と協議を進めている路線は、ほかにも複数あります。各路線の協議の進捗状況は、以下のページよりご覧いただけます。

【中部】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
中部地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

参考URL

鉄道統計年報
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000053.html

第三セクター鉄道等協議会加盟各社の輸送実績・経営成績
https://www.akitakeizai.or.jp/journal/data/202203_kikou_02.pdf

地域鉄道の再生・活性化モデル事業の検討調査
https://www.mlit.go.jp/common/001064373.pdf

第4次関市行政改革 第3期推進計画(関市)
https://www.city.seki.lg.jp/cmsfiles/contents/0000001/1356/3-suishin.pdf

岐阜県地域公共交通協議会(岐阜県)
https://www.pref.gifu.lg.jp/page/163155.html

第1回郡上市地域公共交通会議 次第(郡上市)
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/docs/1357b01e430dd103ae511a16e09fd517e434880e.pdf

郡上市地域公共交通網形成計画(郡上市)
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/docs/gujo_public_trans_plan.pdf

岐阜県第三セクター鉄道の現状と今後の展望について(岐阜県産業経済振興センター)
https://www.gpc-gifu.or.jp/chousa/keikyou/h13/07_09/sanseku.PDF

“岐阜ローカル鉄道4路線” – 考える(OKB総研)
https://www.okb-kri.jp/wp-content/uploads/2019/04/157-research1.pdf

特定地方交通線における経営形態の転換と現状(交通観光研究室)
【リンク切れ】http://www.osaka-sandai.ac.jp/file/rs/research/archive/12/12-15.pdf

タイトルとURLをコピーしました