【長良川鉄道】一部線区の廃止も検討?全線存続できるか?

長良川鉄道の駅 三セク・公営

長良川鉄道は、美濃太田から北濃まで岐阜県を南北に縦断する第三セクター鉄道です。観光列車「ながら」や、食品サンプル列車などのユニークな企画列車で人気を集めるローカル線ですが、沿線自治体は2025年3月に「鉄道のあり方」について言及。一部線区の廃止を含めた検討を始めることになりました。

その後「全線存続をめざす」と廃止を撤回しますが、長良川鉄道の経営も自治体の財政も厳しい状況が続いています。長良川鉄道は全線存続できるのでしょうか。沿線自治体や岐阜県による支援を振り返りつつ、今後の動向を考察します。

長良川鉄道の線区データ

協議対象の区間越美南線 美濃太田~北濃(72.1km)
輸送密度(1987年→2023年)896→388
増減率-57%
赤字額4億7,672万円
※輸送密度および増減率は、1987年と2023年を比較しています。
※赤字額は、2025年度の経常損益を使用しています。

協議会参加団体

美濃加茂市、関市、美濃市、富加町、郡上市、岐阜県、長良川鉄道など

長良川鉄道と沿線自治体

利用者減少に歯止めをかけた長良川鉄道の沿線自治体

長良川鉄道は国鉄越美南線を継承して、1986年に開業しました。開業当初は利用者数を増やし、1992年には年間約180万人が利用しましたが、この年をピークに減少。沿線地域の少子化や過疎化、モータリゼーションの進展などの影響で、利用者離れが進んだのです。沿線自治体はイベントの開催などで利用促進に努めるものの、減少に歯止めがかからず、2008年には100万人の大台を割り込んでしまいます。

一方で、赤字額は年々増加。欠損補助のために沿線自治体などが募った6億円の運用基金も枯渇寸前でした。この状況に沿線自治体は、長良川鉄道に対するさらなる公的支援の模索を始めます。

2008年に沿線自治体は「利用しやすい鉄道」をめざして、「市民鉄道へ転換するための計画書」を策定。岐阜県と連携して公的支援を増やすとともに、コミュニティバスとの乗継ぎ改善や各種イベントでのPRなど、利用促進を強化します。

企画列車の運行にも、沿線自治体が積極的に関与。観光列車「ながら」の誕生につながる「ゆら~り眺めて清流列車」「ごっつぉ~コタツ列車」などの列車運行を、自治体が支援しています。

こうした取り組みもあって、年間約72万人にまで減少した利用者数は増加に一転。2019年には約78万人にまで増えたのです。

■長良川鉄道の乗車人員の推移(単位:万人)

長良川鉄道の乗車人員の推移
▲企画列車の運行が始まった2014年から、利用者数は増加に転じた。
参考:関市「地域公共交通計画」のデータをもとに筆者作成

なお、岐阜県でも2011年に「岐阜県地域公共交通協議会」を設置。長良川鉄道をはじめ、県内の第三セクター鉄道に対する公的支援の実施を決めています。

長良川鉄道のこれまでの取り組み

長良川鉄道と沿線自治体が協働で取り組んでいる、利用促進策の一例を紹介します。

  • 企画列車や観光列車「ながら」の運行
  • コミュニティバスとの乗継ぎ改善
  • 貨客混載事業
  • シルバー会員制度の導入
  • 高校入学説明会で無料乗車券を配布(通学時の体験乗車)
  • 観光施設と連携したツアー企画
  • クーポン付乗車券の販売
  • 広報紙や地域イベントでの利用促進PR

…など

企画列車は、2014年から順次運行開始。2016年からは長良川鉄道初の観光列車となる「ながら」の運行を始めます。「ながら」のデザインを手掛けたのは水戸岡鋭治氏。車内では、沿線の食材を使った料理をふるまうなど、観光客をもてなします。なお、当初は「森号」「鮎号」という2台の運行でしたが、2018年には新たに「川風号」を増備。2019年度には、合計13,037人の利用がありました。

また、2018年度からは貨客混載事業をスタート。ドライバー不足に悩む物流事業者の課題解決にも貢献しています。2021年からは、JAの農産物も運んでいるそうです。

沿線住民を取り込む施策として、関市のショッピングモールなどと連携した企画も進めています。鉄道を使った企画やイベント、来店者向けのサービスを実施しています。

利用者は増えたのに存廃議論が始まった理由

利用者減少に歯止めをかけた長良川鉄道。2020年はコロナの影響で約54万人に減少しますが、2023年には約76万人と、コロナ禍前と同水準まで回復します。

しかし、2025年になって沿線自治体が「一部線区の廃止」を検討していることが明らかになります。きっかけは、同年1月21日に開かれた郡上市地域公共交通会議の幹事会。この場で、委員の一人から以下の意見が出されたのです。

長良川鉄道の今後については存続を含めた検討が必要である。

出典:郡上市「令和6年度第3回郡上市地域公共交通会議 次第」

また、2月26日に郡上市長が示した施政方針でも、長良川鉄道のあり方に言及。「皆様の意見を伺いながら郡上市として具体的な方針を(市長の)任期中に示したい」と、長良川鉄道に対する支援の見直しを示唆したのです。この施政方針を受けて、他の自治体でも一部線区の存廃議論が広がります。

利用者数は増加したのに、沿線自治体はなぜ存廃議論を始めたのでしょうか。その理由は、長良川鉄道に対する「公的支援額の増加」でした。沿線5市町の支援額は、2018年度の2億4,022万円から2024年度には6億8,026万円と、わずか6年で3倍近くに増えています。岐阜県や国の支援もあわせた支援額は、12億100万円です(2024年度)。

■長良川鉄道に対する支援額(単位:万円)

長良川鉄道に対する支援額
▲2018年と2024年を比べると、支援額は3倍近くに増えた。
参考:郡上市地域公共交通会議の各年度「公共交通会議資料」をもとに筆者作成

支援額が増えた最大の理由が、線路や車両といった鉄道施設の修繕費増加です。一例として、路線全体の3分の2を抱える郡上市が負担する施設修繕費をみると、2018年度の8,301万円から2023年度には1億6,487万円と倍増しています。

前身の国鉄越美南線が全線開通したのは1934年。それから90年を超え、老朽化した鉄道施設の維持管理費は年々増え続けているのです。

維持管理費の増加は、他の自治体も懸念しています。2025年3月3日には関市長が「今後の維持費を考えると公的負担が減る状況にはない」と、支援額の増加を懸念。さらに「通学する生徒たちが困らないよう必要な部分を残すために、一部廃線も視野に入れながら構築をしていくことが、必要な手法ではないか」と私見を述べます。

郡上市と関市が「一部線区の廃止」に言及したことを受け、同年3月26日に開かれた沿線自治体の首長会議では、本格的な「鉄道のあり方協議」を始めることで一致。一部線区の廃止を含め、長良川鉄道の将来について話し合うことを確認したのです。

廃止から全線存続に一転…長良川鉄道の将来は?

長良川鉄道のあり方をめぐり、2025年4月から事務レベルの担当者間で協議が始まります。ただ、同年5月28日に開かれた首長会議では、一部の沿線自治体が「減便」による経営改善策を提言。また6月27日の取締役会では、イベント列車の観光客が増えているという報告を受けて「コスト削減や利用促進で全線維持できないか」といった意見が出されます。

こうした意見を受けて長良川鉄道は、10月18日に減便ダイヤ改正を実施。平日で11本、土日祝日で20本を減便し、年間で約1,100万円の経費削減を図ります。

とはいえ、7億円におよぶ自治体負担額からみれば微々たるものです。しかも負担額は、増加傾向にあります。この状況に、2026年1月7日に開かれた首長会議で、関市は利用者の少ない線区の廃止意向を伝えたのです。

ところが、他の4市町からは「沿線住民の理解を得る必要がある」「拙速な議論は避けるべきだ」など、慎重な意見が噴出。これを受けて、一部線区の存廃議論はいったん保留とし、有識者などを交えながら存続の道を探ることが確認されたのです。

その後、沿線自治体は岐阜県に相談。国の支援を得ながら鉄道を維持する「鉄道事業再構築事業」を活用する考えを伝えます。国の支援を得るには、自治体にも多くの支援が求められます。そのため沿線自治体は、県にも相談したのです。

これに対して岐阜県も同意。制度活用に向けて「再構築実施計画」を策定するための協議体を設置し、議論していくことになりました。国の支援を得ることで、長良川鉄道は全線存続できるのか。沿線自治体の今後の動きが注目されます。

長良川鉄道の関連記事

※長良川鉄道(国鉄越美南線)とつながる予定であった越美北線の協議については、以下のページで紹介しています。

【JR西日本】廃止の危機感を持ち続けた「越美北線」の40年
JR越美北線の沿線自治体は、国鉄末期から幾度も廃止の危惧されたローカル線です。鉄道を守るための沿線自治体の取り組みをまとめました。

※沿線自治体と協議を進めている路線は、ほかにも複数あります。各路線の協議の進捗状況は、以下のページよりご覧いただけます。

【中部】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
中部地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

参考URL

鉄道統計年報
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000053.html

地域鉄道の再生・活性化モデル事業の検討調査
https://www.mlit.go.jp/common/001064373.pdf

第4次関市行政改革 第3期推進計画(関市)
https://www.city.seki.lg.jp/cmsfiles/contents/0000001/1356/3-suishin.pdf

岐阜県地域公共交通協議会(岐阜県)
https://www.pref.gifu.lg.jp/page/163155.html

第1回郡上市地域公共交通会議 次第(郡上市)
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/docs/1357b01e430dd103ae511a16e09fd517e434880e.pdf

郡上市地域公共交通網形成計画(郡上市)
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/docs/gujo_public_trans_plan.pdf

岐阜県第三セクター鉄道の現状と今後の展望について(岐阜県産業経済振興センター)
https://www.gpc-gifu.or.jp/chousa/keikyou/h13/07_09/sanseku.PDF

“岐阜ローカル鉄道4路線” – 考える(OKB総研)
https://www.okb-kri.jp/wp-content/uploads/2019/04/157-research1.pdf

郡上市地域公共交通計画
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/docs/7755d8db533f8468fb8c0f6bc8480a95e3d6f375.pdf

令和7年度施政方針(郡上市)
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/docs/1b12e7b82536b718b26415fc31134d9408aa3b20.pdf

令和7年度 第1回郡上市地域公共交通会議 次第
https://www.city.gujo.gifu.jp/admin/docs/59a6d8c5f84c403158d6a0d41204d7e9614bbce6.pdf

長良川鉄道、一部廃線した場合の5市町の負担試算へ 利用促進の検討と並行して進める方針(中日新聞 2026年3月26日)
https://www.chunichi.co.jp/article/1228306

赤字の長良川鉄道で再構築協議会目指す 沿線首長が知事に支援求める(朝日新聞 2026年7月9日)
https://www.asahi.com/articles/ASV783SMYV78OHGB001M.html

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