【北越急行】内部留保で「ほくほく線」は維持できるか?

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北越急行のくびき駅 三セク
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北越急行は「ほくほく線」という路線を持つ、第三セクターの鉄道事業者です。首都圏と北陸地方の広域輸送を担う重要路線として、開業当初から黒字経営でしたが、北陸新幹線の開業後は一転。厳しい経営状況が続いています。

赤字ローカル線となった「ほくほく線」に、沿線自治体はどのような取り組みをおこなっているのか紹介しましょう。

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北越急行の線区データ

協議対象の区間ほくほく線 六日町~犀潟(59.3km)
輸送密度(1987年→2019年)6,783→1,293
増減率-81%
赤字額(2019年)6億3,887万円
※輸送密度および増減率は、北越急行が開業した1997年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

十日町市、上越市、南魚沼市、柏崎市、津南町、湯沢町、新潟県

北越急行と沿線自治体

北越急行をめぐる協議会設置までの経緯

北越急行は、国鉄時代に建設が凍結された北越北線を継承するために、1984年に設立されました。ほくほく線が開業したのは、1997年3月。それに先立つ1996年6月、沿線自治体は、鉄道の利用促進と地域振興を目的に「ほくほく線沿線地域振興連絡協議会」を設置します。

協議会の活動は当初、沿線で開かれるイベントのPRや地域交流の促進が中心で、北越急行の運営に関して直接的な支援はおこなっていません。なぜなら、北越急行が黒字経営だったからです。

ほくほく線は、首都圏と直江津や富山などを結ぶ最短コースの一部であり、開業前から多くの需要が見込まれました。また、高規格の路線であることから最高速度160kmという高速運行ができたことも、盤石な経営基盤をつくる一助になったのです。

実際に、開業した1997年度の営業損益は、6億8,800万円の黒字。最高益となった2013年度には11億7,900万円の黒字で、輸送密度は8,769人/日という、第三セクターの勝ち組だったのです。ちなみに、ほくほく線の営業収入の9割近くを占めていたのが、最高速度160kmで走る特急「はくたか」でした。

北陸新幹線の開業で北越急行の経営状況が一変

2015年3月、北陸新幹線の長野~金沢間が延伸開業します。これにともない、首都圏と北陸地方の広域輸送は新幹線が担うことになり、ほくほく線は地域輸送に特化したローカル線に転じます。

北越急行の経営状況も一変します。特急はくたかの廃止で利用者数は7割近く減少。運賃収入も9割近く激減し、赤字経営へ転落したのです。

もちろん、こうした状況は新幹線の延伸開業前から予測できたことで、北越急行では赤字の穴埋めに備え、約130億円もの内部留保を積み上げてきました。これにより、今後30年程度は公的支援を受けなくても自社単独で運営できるとしています。

とはいえ、ほくほく線の開業から20年以上が経過し、設備更新の時期を迎えていました。その更新費用について、新潟県ではレールや車両など安全運行に関わる鉄道設備の更新に関して、2016年度より支援しています。また、国の地方創生推進交付金を活用した支援も実施し、ほくほく線の維持存続をサポートしています。

北越急行のこれまでの取り組み

北越急行は、2018年に運賃の値上げを実施したほか、自治体と協力しながら利用促進や収入確保の取り組みを進めています。主な取り組みを紹介しましょう。

  • 超快速「スノーラビット」を新設
  • 他の鉄道事業者と協働した企画きっぷの販売
  • イベント列車の運行
  • 客貨混載事業の運用
  • 情報誌「ほっくほくマガジン」の発行(新幹線開業前から引き続き発行)
  • 旅行雑誌への情報掲載
  • 沿線交流事業(スポーツ大会等)への支援
  • ほくほく線を利用したイベントの実施
  • 資産運用(投資事業)

…など

特急はくたかの廃止後、快速列車「スノーラビット」を新設。便数や所要時間の点では、特急よりもグレードダウンしたものの、引き続き、地域輸送の高速化を図っています。この施策もあってか、快速・普通列車に限れば、利用者数は新幹線開業前よりも増えているようです。

また、えちごトキめき鉄道など他社線との直通列車も運行。ほくほく線沿線地域振興連絡協議会、えちごトキめき鉄道活性化協議会、大糸線活性化協議会が協働して「とくべつきっぷ」を作成し、沿線の保育園児に配布するなど、利用促進につなげる取り組みもおこなっています。

ダイヤに余裕が生まれたことで、イベント列車も運行しやすくなったようです。「超快速」のスノーラビットに対抗して、「超低速」をウリにする「スノータートル」というイベント列車は、トンネル内信号場の見学ツアーを盛り込むなど、普段は見られない施設に入れるとして人気があるようです。

このほかにも、新潟県内のパン店の味が楽しめる「パン列車」、シアタートレイン「ゆめぞら号」など、地域の誘客を図るイベント列車も、不定期ですが運行しています。

運賃収入以外に収益を確保する取り組みとして、佐川急便と提携した客貨混載や、資産運用などの投資事業も実施。赤字の穴埋めに寄与しているようです。

北越急行の客貨混載事業
▲佐川急便と提携した客貨混載事業。CO2排出量の削減や、運転時間の省力化にも貢献している。
出典:国土交通省「【事業概要】旅客鉄道を利用した貨客混載の取組(北越急行・ほくほく線)」

北越急行は、内部留保を積み立てたこともあって、沿線自治体の積極的な介入はまだ先になりそうです。とはいえ、コロナによる収入減もあり、約130億円もあった内部留保はすでに100億円を割り込もうとしています。沿線人口の減少など利用者減の要因もあるため、早めに手を打つことが求められるでしょう。

参考URL

鉄道統計年報
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000053.html

ほくほく線と北越急行株式会社について(新潟県)
https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/koutsuseisaku/1192637761874.html

組織点検シート「北越急行株式会社」(新潟県)
https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/238419.pdf

赤字も穴埋めした「ほくほく線」の”投資手腕”(東洋経済)
https://toyokeizai.net/articles/-/124870?page=2

えちごトキめき鉄道活性化協議会(Twitter)
https://twitter.com/etr20150314/status/1452529838539956231

ほくほく線利用者の優遇特典(南魚沼市)
https://www.city.minamiuonuma.niigata.jp/docs/1627.html