【山形鉄道】上下分離方式+αで鉄道を支える自治体の取り組み

山形鉄道の列車 三セク

「フラワー長井線」の愛称で親しまれる山形鉄道は、新幹線停車駅の赤湯から荒砥までを通る第三セクターです。一時、年間1億円を超える不採算路線でしたが、2016年より上下分離方式を採用したことにより経営再建をめざしています。

この経営再建策を計画・実行しているのが「山形鉄道公共交通活性化協議会」です。協議会設置までの経緯や再建計画の内容、具体的な取り組みについてお伝えしましょう。

山形鉄道の線区データ

協議対象の区間フラワー長井線 赤湯~荒砥(30.5km)
輸送密度(1988年→2019年)1,466→403
増減率-73%
赤字額(2019年)6,626万円
※輸送密度および増減率は、山形鉄道が発足した1988年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

長井市、南陽市、白鷹町、川西町、山形県、山形鉄道

山形鉄道(フラワー長井線)と沿線自治体

山形鉄道公共交通活性化協議会の設置までの経緯

山形鉄道は、国鉄長井線を継承して1988年に開業しました。翌1989年7月には、沿線自治体や商工団体、観光協会などによって「フラワー長井線利用拡大協議会」を設置。利用促進やマイレール意識の醸成、広報PRなど、利用拡大に関する取り組みを現在に至るまで進めています。

また、山形県をくわえた沿線自治体では、山形鉄道の開業に際して6億円の基金を造成。開業から1998年までの10年間は、基金の運用益による支援をおこなってきました。

しかし、金利低下により運用益は減少。1999年からは基金を取り崩して助成金を拠出するようになります。

一方で、利用者数も年々減少の一途をたどり赤字額は増大。その穴埋めとして山形県と沿線自治体は、毎年6,000万円を基金に拠出していましたが、2016年度には赤字額が1億円を見込まれるなど、抜本的な経営改善が求められるようになります。

山形鉄道の経常損益の推移
▲山形鉄道の経常損益の推移(単位:百万円)。開業から一貫して赤字で、とくに2000年以降は1億円前後になる年もある。
参考:南陽市「フラワー長井線沿線地域公共交通網形成計画」をもとに筆者作成

そこで沿線自治体は2015年7月に、地域公共交通活性化再生法にもとづく法定協議会として「山形鉄道公共交通活性化協議会」を設置。上下分離方式の導入の検討を始めます。

2016年2月には、再構築実施計画として「フラワー長井線沿線地域公共交通網形成計画」を策定。国土交通省に認定され、5年計画で経営再建が始まりました。

フラワー長井線沿線地域公共交通網形成計画の内容

沿線自治体が鉄道施設を保有・管理する上下分離方式は、2016年度より導入しています。施設の修繕や更新、除雪費、土木構造物の保険料などを沿線自治体が負担するほか、山形鉄道の線路使用料や固定資産税は減免。これにより、2016年度の山形鉄道は約1,500万円の黒字に転換します。

なお、自治体の負担金は基金に拠出することになっており、それでも損失が生じた場合には基金から運転資金を貸付けるという取り決めになっているようです。

上下分離の導入にくわえ、沿線自治体は以下の3点を実施して利用促進や収支改善をめざすとしています。

  1. 経営体制の強化(安全対策の実施、ウェブページを活用した情報発信の強化など)
  2. 沿線地域との連携による利用拡大(沿線住民と連携したイベント列車やラッピング列車の運行など)
  3. 沿線自治体や関係団体との連携による利用拡大(利便性向上、マイレール意識の醸成、観光まちづくり施策との連携による観光誘客など)

2021年以降も上下分離方式で継続支援

山形鉄道の再構築実施計画は、2021年3月31日までの5カ年計画でした。しかし、新型コロナウイルスの影響などにより利用者は減少していることから、2021年度以降も継続しています。

更新された計画では、「下部分」の支援をさらに強化するとともに、運行経費にあたる「上部分」についても特例的に支援しています。

山形鉄道のこれまでの取り組み

山形鉄道の利用促進策として、以下のような取り組みを実施しています。

  • イベント列車の運行(方言ガイド列車、ローカル線プロレスなど)
  • 車内インターネット接続サービスの導入
  • 沿線住民の出資による新駅設置
  • 企画きっぷの販売
  • 公式ガイドブックの販売
  • 道の駅と連携したゲートウェイ機能の向上
  • 企業サポーター制度の導入(ネーミングライツやラッピング列車、エコ通勤等)

…など

置賜地域の方言で観光客をもてなす「方言ガイド列車」や、みちのくプロレスのレスラーが車内で戦う「ローカル線プロレス」など、ユニークなイベント列車は観光客に好評のようです。

また、車内インターネット接続サービスは2003年から導入しています。導入にあたり、まちづくり団体が技術提供したり、パソコン関連メーカーが機器を提供したりと、地域の団体や企業の協力によって、サービスが提供されています。

2002年に新駅として開業したあやめ公園駅は、市民の寄付で設置された駅です。総工費は1,120万円。駅近くにある長井工業高校のPTAが材料を負担し、生徒が駅舎や駐輪場をつくるという、「地域住民の手づくり駅」ともいえる駅でしょう。マイレール意識の醸成にもつながっているようです。

※沿線自治体と協議を進めている路線は、ほかにも複数あります。各路線の協議の進捗状況は、以下のページよりご覧いただけます。

【東北】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
東北地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

参考URL

鉄道統計年報
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000053.html

山形鉄道公共交通活性化協議会
https://www.pref.yamagata.jp/documents/17584/yokou.pdf

フラワー長井線沿線地域公共交通網形成計画
https://www.town.kawanishi.yamagata.jp/machinojoho/seisaku/2017-1017-1735.pdf

山形鉄道(フラワー長井線)への支援について(山形県)
https://www.pref.yamagata.jp/020026/kensei/joho/kocho/namanokoe/2021nen/2gatsu/0213281.html

地方鉄道の経営改善に関する調査
https://www.mlit.go.jp/common/001293545.pdf

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