【えちぜん鉄道】赤字ローカル線を「社会資本」と認めた沿線自治体の努力

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えちぜん鉄道の駅 三セク
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えちぜん鉄道は、福井から勝山までを結ぶ勝山永平寺線と、福井口から三国港までを結ぶ三国芦原線の2路線からなる第三セクター鉄道です。

前身である京福電鉄の廃止から奇跡の復活を遂げた赤字ローカル線として、「成功事例」と紹介されることも多い鉄道会社ですが、沿線自治体はどのような取り組みをおこなってきたのでしょうか。行政の支援スキームや地域公共交通網形成計画の策定および結果もふまえて、えちぜん鉄道から学ぶところをみていきましょう。

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えちぜん鉄道の線区データ

協議対象の区間勝山永平寺線 福井~勝山(27.8km)
三国芦原線 福井口~三国港(25.2km)
輸送密度(2003年→2019年)2,119→1,816
増減率-14%
赤字額(2019年)1,300万円
※輸送密度および増減率は、えちぜん鉄道が発足した2003年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

福井市、勝山市、あわら市、坂井市、永平寺町、大野市、えちぜん鉄道株式会社、福井県バス協会ほか

えちぜん鉄道と沿線自治体

京福電鉄からえちぜん鉄道に継承される経緯

えちぜん鉄道は、京福電鉄を継承して2003年に設立された会社です。

前身の京福電鉄時代は、並行する国鉄越美北線の開通やモータリゼーションの進展などで利用者の減少が続いており、1992年には一部路線の廃止を表明していました。これに対して福井県や沿線自治体は、運行経費の助成や利用促進活動などで京福電鉄を支援していました。

こうしたなかで、京福電鉄は2000年12月と2001年6月の2度にわたり、列車衝突事故を起こします。2度目の事故後、国土交通省は事業改善命令を出しますが、赤字が慢性化していた京福電鉄は事業を存続できないとして、2001年10月に鉄道事業の廃止届を提出したのです。

鉄道が廃止になったことで、利用者ニーズが大きく変化します。2度目の事故後、鉄道を利用していた人の44%が代行バスや既存の路線バスに移りますが、42%はマイカー送迎に転じたのです。これにより、代行バスでは「ピーク時間帯に乗客できない」という問題が、またマイカーでは「渋滞が深刻になった」という問題が発生しました。

さらに、鉄道利用者の19%の人が「外出することが減った」と答え、社会的にも大きな影響が出てきたのです。

改めて鉄道が「重要な社会基盤」と証明されたことで、福井県と沿線自治体は第三セクター方式による鉄道の存続を決定。廃止から2年後の2003年10月に、えちぜん鉄道として再開しました。

えちぜん鉄道活性化連携協議会の設置までの経緯

第三セクターとして再出発するにあたり、福井県と沿線自治体は「行政の役割と責任」についても取り決めています。

たとえば、運転再開に必要な工事費や設備投資などは福井県が支援し、沿線自治体は運行開始後の欠損補てんをすることが決まっています。こうした支援スキームをあらかじめ決めることで、「誰が負担するのか」という無駄な議論を回避し、迅速な対応ができる体制にしています。

この支援スキームは、2002年度から2011年度までの10年間続きますが、財政状況の厳しい沿線自治体だけで続けるには限界があります。こうしたなか、国は「地域公共交通活性化再生法」を制定。これを利用した国の支援を受けるため、沿線自治体は2010年10月に「えちぜん鉄道活性化連携協議会」を設置します。そして、えちぜん鉄道を生活関連社会資本と位置付けた地域公共交通計画を策定し、2012年度から始まる第2次支援スキームへ盛り込むことになったのです。

なお、第2次支援スキームにおいても、福井県は「安全のための設備投資」を、沿線自治体は「欠損補てん」を中心に、さまざまな支援をおこなっています。

えちぜん鉄道のこれまでの取り組み

2003年に開業したえちぜん鉄道は、利用者数を年々増加させています。2018年の年間利用者数は約370万人と、設立以来最高を記録。2019年以降はコロナの影響で減少したものの、少子化・過疎化が進む沿線地域を考えれば大健闘でしょう。

利用者が増加する要因には、沿線自治体が中心となった施策が功を奏していることも挙げられます。えちぜん鉄道で実施された施策の一部を紹介しましょう。

  • 車内アテンダントの導入
  • 福井鉄道への乗り入れ
  • 新駅の設置
  • パークアンドライド
  • バスなど他の交通機関との接続強化
  • 運賃の値下げ
  • サポーターズクラブ運営(会員数は約4,000人)
  • サイクルトレインの運行
  • 沿線観光地へのバスアクセスの向上

…など

えちぜん鉄道は、ローカル線における「車内アテンダントのパイオニア」としても知られます。アテンダントの役割は、主に高齢者への介助や案内です。地方では、高校を卒業してから地元の鉄道を利用したことがないという高齢者も多く、鉄道の乗り方すら知らない人も結構いらっしゃいます。こうした方々でも安心して利用してもらえるよう、アテンダントが駅や車内でサポート。高齢者の利用を促しています。

また、2016年より始まった福井鉄道との相互乗り入れも、利用者増加につながっている要因です。えちぜん鉄道では、福井鉄道が所有する低床車が乗り入れできるよう、低床ホームの新設や線路・信号設備の改修などを実施。工事費用は、国の補助を活用しながら福井県と福井市が負担しています。

一方、沿線自治体は欠損補助にくわえて、パークアンドライドの整備も支援しています。各自治体が予算状況に応じて駐車場を整備し、これまで20駅で設置が完了しています。

車と鉄道が共存する社会をめざし、えちぜん鉄道活性化連携協議会では「車と比べても『選ばれる移動手段』になる」というコンセプトを掲げて各種取り組みに挑んでいます。その実現に向けて、えちぜん鉄道と沿線自治体の挑戦は、これからも続くでしょう。

※福井鉄道福武線の協議会については、以下のページで解説しています。

参考URL

鉄道統計年報
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000053.html

えちぜん鉄道活性化連携協議会(福井市)
https://www.city.fukui.lg.jp/kurasi/koutu/public/p010665.html

個別事例(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/tetudo/bestpractice/best%202.pdf

えちぜん鉄道交通圏地域公共交通計画(えちぜん鉄道活性化連携協議会)
https://www.city.fukui-sakai.lg.jp/kokyokotsu/shisei/koutyou/pabukome/documents/keikakusaisyuu.pdf

えちぜん鉄道の経験(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/000056278.pdf

地域公共交通再生への取り組み(OKB総研)
https://www.okb-kri.jp/wp-content/uploads/2019/03/166-research1.pdf