【万葉線】廃止表明から一転!万葉線を救った自治体と市民の力

スポンサーリンク
スポンサーリンク
万葉線の列車 三セク
スポンサーリンク

万葉線は、高岡と越ノ潟(射水市)を結ぶ第三セクターの鉄道事業者です。厳密には、高岡から六渡寺までは路面電車(高岡軌道線)、六渡寺から越ノ潟までは鉄道(新湊港線)に区分されますが、一日を通して直通運行されています。

一時は廃止も検討された万葉線。それを救ったのは、自治体と沿線住民の団体でした。万葉線対策協議会の動きや取り組みを中心に、鉄道として存続した理由をお伝えします。

スポンサーリンク

万葉線の線区データ

協議対象の区間高岡軌道線・新湊港線 高岡~越ノ潟(12.9km)
輸送密度(1987年→2019年)1,237→1,380
増減率12%
赤字額(2019年)7,474万円
※輸送密度および増減率は、万葉線が発足した2002年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

高岡市、射水市、市議会、商工会議所、連合自治会、連合婦人会、富山県、万葉線株式会社

万葉線と沿線自治体

万葉線対策協議会の設置までの経緯

万葉線の前身は、加越能鉄道(現:加越能バス)です。加越能鉄道は、1972年には年間470万人もの利用者がいましたが、モータリゼーションの進展などの影響により、その後は減少が続きます。これに危機感を抱いた沿線自治体は、1980年に「万葉線対策協議会」を設置。万葉線の存続と、沿線住民の生活の安定を図ることを目的に活動を始めます。

ただ、利用者離れに歯止めがかからず、1990年ごろには年間で約150万人にまで減少。加越能鉄道のバス事業の利益を投じても赤字は改善されず、沿線自治体は国の欠損補助制度や近代化補助制度などを活用して支援しました。

一方、市民のあいだにも「万葉線を応援したい」という動きが出てきます。1993年には「万葉線を愛する会」が設立。利用者の増加をめざして、協議会などと連携を取りながら活動する団体です。

こうした動きがあるなか、国は1997年に欠損補助制度を廃止にすると表明します。これにより、加越能鉄道は赤字額の公的支援が受けられなくなります。そして1998年2月、万葉線の廃止とバス転換の意向を表明したのです。

万葉線を第三セクターで残せ

万葉線の廃止表明からわずか2カ月後の1998年4月、市民主導の団体「RACDA高岡(路面電車と都市の未来を考える会)」が、万葉線の再生計画を提案します。

これに触発されてか、同年8月には富山県と沿線自治体が「万葉線検討会」を設置。加越能鉄道や万葉線対策協議会と一緒に、経営改善計画の検討を始めることになりました。なお、沿線自治体は、廃止表明からわずか半年の段階で、第三セクターによる運営も視野に入れていたようです。

1999年10月、協議会が経営改善計画案を提示。これをもとに、計画案を調査する検討会が同年12月から始まります。

2000年3月に開かれた第3回の検討会では、加越能鉄道と資産譲渡に関する協議を開始。つまり、この段階で沿線自治体は第三セクターによる運営を決めていたことになります。ただ、譲渡額の折り合いがつかず、協議は難航します。

2000年11月、加越能鉄道は譲渡額を大幅に譲歩するかたちで、自治体への資産譲渡に同意。廃止表明から3年弱で、第三セクターとして再出発することが決定したのです。その後、新しい運行会社「万葉線株式会社」が設立。2002年4月より、新会社のもとで万葉線の運行が始まりました。

なお、新会社の開業にあたり、沿線住民からは1億円を超える寄付が寄せられたそうです。また、1993年に設立された「万葉線を愛する会」は、その後も会員数が増加。2021年現在で、個人会員は907人(1,066口)、法人会員は39社(49口)で、万葉線を支え続けています。

万葉線のこれまでの取り組み

加越能鉄道として最後の年となった2001年、万葉線の利用者数は約99万人にまで減少しました。ところが、第三セクターとして再スタートを切った翌2002年には、100万人台を回復。三セクになって、増加に転じたのです。その後も利用者数は増え続け、2014年には125万人に達しました。

利用者が増加した背景には、万葉線と沿線自治体の取り組みも大きく影響しています。その取り組みを一部紹介しましょう。

  • 新型車両「アイトラム」導入
  • 高岡駅ビルの直下に線路を延伸
  • 沿線イベント時の片道運賃助成
  • 団体割引(最大5割引き)
  • イベント列車の運行
  • 無料レンタルサイクルサービスの導入
  • パークアンドライド
  • 運転免許自主返納に対する支援
  • 運賃改定
  • グッズ販売

…など

開業から2年後の2004年には、新型車両「アイトラム」を導入。斬新なデザインが好評になり、全国各地から電車を見るために訪れる観光客も増え、高岡・新湊の活性化に寄与しました。

また、2014年には再開発中だった高岡駅の駅ビル直下まで線路を延伸。わずかの距離ですが、バリアフリー化を含めた利便性の向上により利用者が大きく増加します。

運賃の助成支援も、万葉線の特徴でしょう。たとえば、15名以上で適用される団体割引は、一般の利用では2割引、学生だと3割引が通常ですが、富山県内の団体で助成申請を提出した場合は5割引になります。差額は万葉線対策協議会の助成です。

さらに、イベント時の片道無料きっぷの配布も好評です。「高岡七夕まつり」「新湊新港花火大会」などのイベント時に、万葉線を利用して会場まで行く方には、帰りの運賃が無料になる券を配布。事実上、片道分が無料になります。

そして、利用者の多い駅にはパークアンドライドの駐車場を設置。富山は典型的な車社会ですが、「イベントには電車で行く」という意識の定着にもつながっています。

副収入として、グッズの販売にも注力しています。アイトラムを模した「かまぼこ」「手焼きしろえびかき餅」といった食品をはじめ、ストラップ、ネクタイ、ショッピングバッグなどのノベルティも、売上に貢献しているようです。

新高岡駅への延伸は実現するか?

北陸新幹線の延伸開業を前にした2014年ごろ、万葉線の延伸計画が浮上します。延伸ルートは、高岡駅の北西に位置する昭和町方面と、南部に位置する新高岡駅方面です。

高岡市総合交通戦略によると、万葉線の延伸について以下の見解を示しています。

万葉線の延伸
昭和町、新高岡駅方面への万葉線の延伸について、その効果や技術的課題の克服、事業手法など、関係機関や市民と議論を深めながら検討していきます。

引用:高岡市「高岡市総合交通戦略【改訂版】」

延伸により高岡市にもたらす効果は大きく期待されます。しかし、技術的な問題、採算性や事業費などに対する財源の確保といった懸念事項もあり、具体的な進捗がないようです。

万葉線の利用者数も、2014年をピークに減少傾向にあります。延伸計画策定時の利用者数の推計値と比べて実績が伸び悩んでいること、また現状でも年間7,000万円を超える公的支援を投入しなければ運営できないことからも、延伸は難しいものと考えられます。

とはいえ、利用者の利便性向上につながる投資であれば、積極的な検討を願いたいものです。

参考URL

鉄道統計年報
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000053.html

万葉線対策協議会(万葉線)
https://www.manyosen.co.jp/about/council/

個別事例(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/tetudo/bestpractice/best%202.pdf

地方都市における鉄軌道の存廃決定要因に関する考察(土木計画学研究講演集No.24)
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00039/2001/24-02-0751.pdf

路面電車「万葉線」(ほっとホット高岡)
https://www.city.takaoka.toyama.jp/kotsu/kurashi/kotsu/kokyo/manyosen/index.html

高岡市総合交通戦略【改訂版】(高岡市)
https://www.city.takaoka.toyama.jp/kotsu/documents/210331kaiteiban.pdf

具体的な施策パッケージ(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001045199.pdf