【IGRいわて銀河鉄道】IGRいわて銀河鉄道が黒字経営の続く理由

IGRいわて銀河鉄道の車両 三セク

IGRいわて銀河鉄道は、東北新幹線が八戸まで延伸開業する際に、JR東日本が経営分離する線区を継承した第三セクターです。かつて東北本線の一部であった、盛岡~目時間の鉄道路線を運営しています。

開業にあわせて、沿線自治体は「いわて銀河鉄道沿線地域等活性化協議会」を設置。手厚い支援が、黒字経営を支える一助になっています。具体的な支援内容や協議会の取り組みについて紹介しましょう。

IGRいわて銀河鉄道の線区データ

協議対象の区間いわて銀河鉄道線 盛岡~目時(82.0km)
輸送密度(1987年→2019年)3,608→2,694
増減率-25%
赤字額(2019年)9,267万円
※輸送密度および増減率は、IGRいわて銀河鉄道が発足した2002年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

盛岡市、二戸市、岩手町、一戸町、滝沢市、八幡平市、岩手県、住民代表者、各交通事業者

IGRいわて銀河鉄道と沿線自治体

いわて銀河鉄道沿線地域等活性化協議会の設置までの経緯

東北新幹線の盛岡以北の延伸にともない、岩手県の沿線自治体は1991年6月に「並行在来線対策岩手県協議会」を設置します。翌月には、東北本線の沼宮内~八戸間について経営分離に同意。また、1995年には盛岡~沼宮内間の沿線自治体も経営分離に同意しました。

区間によって同意の時期がずれているのは、もともと東北新幹線の延伸は沼宮内~八戸がフル規格として、盛岡~沼宮内はいわゆる「ミニ新幹線」で開業する予定だったからです。その後、全区間がフル規格で建設され2002年12月に盛岡~八戸間が開業します。

並行在来線対策岩手県協議会は、1999年に並行在来線経営分離にあたっての基本方針を発表。「地域の旅客輸送を将来にわたり確保することを基本に、利用者の利便性の向上、安全性の確保及び健全な経営に努める」という方針のもと、第三セクターの設立を示すとともに、協議会名を「岩手県並行在来線経営準備協議会」に改組します。

この協議会は、IGRいわて銀河鉄道の開業後も存続しますが、東北新幹線が新青森まで延伸される前年の2009年3月に「いわて銀河鉄道沿線地域等活性化協議会」へ変更されました。

沿線自治体の積立制度による手厚い経営支援

並行在来線として開業したものの、IGRいわて銀河鉄道の経営は開業前から不安要素を多く抱えていました。沿線の過疎化・少子化にともなう利用者の減少にくわえ、寝台特急の減便による線路使用料の減少など、経営状況の悪化が見込まれていたからです。

岩手県や沿線自治体では、IGRいわて銀河鉄道開業前の2000年に「並行在来線経営計画概要」を策定。開業後の約10年間に見込まれる経費の所要額を積み立て、設備更新などにかかる費用について支援していくことを決めます。

この積立制度は、その後も約10年スパンで岩手県と沿線自治体が検討をしながら出資額を決めており、車両の更新費用や災害復旧費などに充てられています。なお、出資比率は岩手県が62.5%、沿線の市町村が37.5%です。

こうした沿線自治体の手厚い経営支援と貨物調整金の拡充もあって、2011年からは経常損益ベースで黒字達成。北斗星などの寝台特急の線路使用料がなくなった後も、黒字を達成してきました。ただ、2019年以降は開業した2002年と比べて輸送密度ベースで約25%も利用者が減るなどの理由で、赤字に転落しています。

IGRいわて銀河鉄道のこれまでの取り組み

IGRいわて銀河鉄道の利用促進策としては、以下のような取り組みを実施しています。

  • ・企画きっぷ・割引乗車券などの販売(あんしん通院きっぷ、定期券家族割引など)
  • アテンダントの乗車
  • 後方車両の全座席を優先席化
  • 乗継定期券の拡大
  • 観光パンフレットの製作・配布
  • バス事業者・タクシー事業者と連携した実証実験
  • 新駅の設置(青山駅・巣子駅など)

…など

盛岡市内の病院に通院する高齢者をターゲットに、「IGR地域医療ライン」という通院サポートサービスを展開している点が、IGRいわて銀河鉄道の特徴です。通院専用の往復割引乗車券「あんしん通院きっぷ」の販売、アテンダントによる介助、後方車両の全座席優先席化といった高齢者に利用してもらえるような施策を展開しています。

また、乗車駅には利用者専用の無料駐車場を設置するほか、盛岡駅では病院までの交通手段としてタクシー会社と連携し、自宅から病院までシームレスに移動できるように取り組んでいます。

なお、列車に乗車するアテンダントは介護施設で働いていた方など、高齢者のニーズを熟知している専門家集団です。車内では乗車案内のほか、薬用の飲料水を配布したり盛岡駅からのタクシーを手配したりといったサービスも提供しています。

このほか収益性を高める施策として、駅構内に地産地消レストランを運営するなど飲食店の運営や、直営の旅行会社「銀河鉄道観光」を経営している点も、売上を上げる施策として特筆すべきポイントでしょう。

目時から北は、第三セクターの「青い森鉄道」が運営しています。上下分離方式を採用し、こちらも黒字運営を達成していますので、ぜひご一読ください。

※沿線自治体と協議を進めている路線は、ほかにも複数あります。各路線の協議の進捗状況は、以下のページよりご覧いただけます。

【東北】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
東北地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

参考URL

鉄道統計年報
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000053.html

ごあいさつ(IGRいわて銀河鉄道)
https://igr.jp/company/

いわて銀河鉄道沿線地域等活性化協議会(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/000119407.pdf

IGRいわて銀河鉄道(運輸総合研究所)
https://www.jttri.or.jp/survey/zisseki/archives_event/pdf/railway.pdf

あんしん通院きっぷ(IGRいわて銀河鉄道)
https://igr.jp/ticket/medical/

今後のIGRいわて銀河鉄道株式会社への財政支援について(岩手県)
【リンク切れ】https://www.pref.iwate.jp/kendozukuri/koutsuu/koukyou/1005394.html

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