【青い森鉄道】青い森鉄道が並行在来線初の上下分離にした理由

青い森鉄道 三セク

青い森鉄道は、東北新幹線の八戸・新青森までの延伸開業にともない、JR東日本より経営分離される線区を継承した第三セクターです。かつて東北本線の一部であった、目時~青森間の鉄道路線を運営しています。

青い森鉄道は、並行在来線では初の上下分離を採用するなど、自治体の手厚い支援も注目を集めています。ここで、沿線自治体が組織する「青い森鉄道線利活用推進協議会」の活動内容を中心に、鉄道の維持存続に向けた取り組みを紹介しましょう。

青い森鉄道の線区データ

協議対象の区間青い森鉄道線 目時~青森(121.9km)
輸送密度(1987年→2019年)1,439→2,239
増減率56%
黒字額(2019年)367万円
※輸送密度および増減率は、青い森鉄道が全線開業した2010年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※黒字額は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

青森市、八戸市、三沢市、平内町、野辺地町、七戸町、六戸町、東北町、おいらせ町、三戸町、南部町、青森県、青い森鉄道株式会社、青森県市長会・青森県町村会

青い森鉄道と沿線自治体

青い森鉄道線利活用推進協議会の設置までの経緯

東北新幹線の盛岡以北の延伸にあたり、青森県の沿線自治体は1991年7月に八戸までの経営分離に同意します。また、1998年1月には八戸~青森間の沿線自治体も同意しました。なお、これと前後してJR東日本は1996年12月、盛岡~青森間の並行在来線の経営分離を表明しています。

2002年11月には、「青い森鉄道利用促進協議会」を設置。翌12月に盛岡~八戸間の東北本線を分離し、青い森鉄道が誕生します。協議会はその後、八戸~青森間の新幹線開業を前にした2010年5月、「青い森鉄道線利活用推進協議会」へ変更し、現在に至ります。

青い森鉄道の線路使用料は経営状況にあわせて決定

青い森鉄道の線路使用料は、鉄道事業の収支が均衡する範囲で算定するよう、青森県が柔軟に対応しています。

八戸~青森間が開業する前の2002年から2010年までは、本来約3億円かかる線路使用料をほぼ無料に、青森まで開業した2011年以降の線路使用料は約7億円になりますが、実際に青い森鉄道の支払う支払額は約7,000万円~1億5,000万円と、その年の経営状況に応じて幅があります。差額は県が減免する形にすることで、青い森鉄道は黒字運営を確保しているのです。

ちなみに、新型コロナウイルスの影響で利用者が大幅に減少した2020年度の青い森鉄道は約867万円の赤字でしたが、2021年度には減免措置のおかげで約331万円の黒字になっています。

青い森鉄道の収支構成
▲青い森鉄道の収支構成。上下分離により、鉄道施設分は青森県が負担(当初は青い森鉄道の線路使用料を無料にし、県の一般財源で補てんしていた)。さらに、運賃収入の増減などの収支差に応じて、赤字分は青森県が負担している。
参考:青森県「青い森鉄道線マイレールミーティング」をもとに筆者作成

青い森鉄道のこれまでの取り組み

青い森鉄道の利用促進策として、以下のような取り組みを実施しています。

  • 新駅の設置・移転
  • イベント列車の運行(酒のあで雪見列車、イラストラッピング電車など)
  • 企画乗車券の販売(シニア寿定期乗車券、浅虫温泉あさ風呂きっぷなど)
  • アテンダントの乗車
  • 駅舎等の環境整備(花壇整備等)
  • フォトコンテスト

…など

効果が顕著だった施策のひとつが、青森市を中心とした新駅の設置や駅の移転です。

2011年には、野内駅を青森工業高校の近くに移転。JR東日本時代の乗降客数は1日60人程度でしたが、移転した2011年には578人まで増加。さらに、地元バス事業者との乗り継ぎ利便性を高めることで利用者は年々増加し、2019年には1,064人になっています。

また、2014年には新駅として筒井駅を開業。JRで新駅を設置する場合、100%地元負担の請願駅となるのが通例ですが、青い森鉄道であれば国が事業費の3分の1を補助する「幹線鉄道等活性化事業費補助」を活用でき、事業費を2億円以上も削減できました。

筒井駅が設置されたエリアは、青森高校などの学校が多い割に公共交通が不便といわれる地域でした。しかし、新駅の開業により交通利便性が飛躍的に向上。駅の乗降客数は1,602人(2019年)で、こちらも増加傾向にあります。

このほか、利用促進策として「シニア寿定期乗車券」という61歳以上を対象とした定期券も評判のようです。通常の通勤定期券の約3割の額で、通勤だけでなく買い物や通院など乗車目的を問わず利用できます。

目時から南は、第三セクターの「IGRいわて銀河鉄道」が運営しています。こちらも黒字路線ですから、協議会の内容をぜひご一読ください。

※沿線自治体と協議を進めている路線は、ほかにも複数あります。各路線の協議の進捗状況は、以下のページよりご覧いただけます。

【東北】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
東北地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

参考URL

鉄道統計年報
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000053.html

協議会の取り組み(青い森鉄道線利活用推進協議会)
http://aoimorirailway.com/kyougikai/

青い森鉄道線について
http://aoimorirailway.com/company/aoimori

No.3 青い森鉄道株式会社(青森県)
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/soumu/gyokei/files/H26houkokusy03_03-aoimori.pdf

青い森鉄道を例にした並行在来線の活性化策(福井県立大学地域経済研究所)
https://www.city.sabae.fukui.jp/kurashi_tetsuduki/kokyokotsu/hokurikushinkansen/oshirase/machizukurikonwakai.files/kaseikasaku.pdf

筒井駅開業(青森県)
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kikaku/kotsu/tsutsuiopen.html

東北新幹線全線開業への道のり(青森県)
【リンク切れ】https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kikaku/kikaku/files/h21yokuwakaru-2-4.pdf


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