【青い森鉄道】黒字でも負担増加…鉄道を支え続ける自治体の取り組み

青い森鉄道 三セク・公営

青い森鉄道は、東北新幹線の延伸開業にともない、JR東日本から経営分離された線区を継承する第三セクター鉄道です。かつて東北本線の一部であった、目時~青森を運営しています。

開業以来、黒字経営が続く青い森鉄道ですが、経営基盤はとても脆弱。沿線自治体の支援で成り立っているのが実情です。自治体の負担が年々増すなかで、どのようにして鉄道を支えてきたのでしょうか。存続に向けた取り組みを振り返ります。

青い森鉄道の線区データ

協議対象の区間青い森鉄道線 目時~青森(121.9km)
輸送密度(2010年→2023年)1,439→1,984
増減率38%
黒字額2,169万円
※輸送密度および増減率は、青い森鉄道が全線開業した2010年と2023年を比較しています。
※黒字額は、2025年の当期純利益を使用しています。

協議会参加団体

青森市、八戸市、三沢市、平内町、野辺地町、七戸町、六戸町、東北町、おいらせ町、三戸町、南部町、青森県、青い森鉄道株式会社、青森県市長会・青森県町村会

青い森鉄道と沿線自治体

上下分離方式で青い森鉄道を維持する沿線自治体

東北新幹線(整備新幹線の区間)の並行在来線は、かつて東北本線だった盛岡~青森の区間です。このうち八戸以南の青森県内の線区は、1991年に沿線自治体が経営分離に同意。八戸~青森は、1998年に同意します。

JR時代の同線区は、特急列車が大きな収益源でした。しかし、新幹線が開業すると特急利用者は新幹線に流れ、収入の多くを失います。もっとも、本州と北海道を結ぶ貨物列車や、北斗星などの寝台特急は存続するため、経営分離後の第三セクター鉄道事業者にはJR各社からの線路使用料が得られます。ただ、新幹線が北海道へ延伸すれば寝台特急が廃止され、線路使用料の減少が懸念されました。

沿線地域の少子化・過疎化による利用者減少も見込まれるなかで、鉄道をどのように維持するのか。この課題に青森県は、線路や駅といった鉄道施設を自治体が保有・管理する「上下分離方式」を提言。事業者負担を抑えることで、鉄道を維持できると提言します。

それでも赤字が見込まれることから、青森県は事業者(後の青い森鉄道)が払う線路使用料を柔軟に変更できる仕組みを考案。赤字の年は「線路使用料を減らして県が補助する」といった、減免措置を設けたのです。

■青い森鉄道の収支構成

▲運賃収入の増減による「収支差」に応じて、線路使用料は柔軟に変動する。
参考:青森県「青い森鉄道線マイレールミーティング」をもとに筆者作成

こうして、東北新幹線が八戸まで延伸開業した2002年12月に、第三セクター鉄道「青い森鉄道」の目時~八戸が開業。さらに、新青森まで延伸開業した2010年12月には、八戸~青森をJR東日本から継承します。

開業後の青い森鉄道は、3期連続で黒字と「決算書上」は順調な滑り出しでした。これは先述のとおり、線路使用料の減免措置があったからです。2002~2010年には、目時~八戸の線路使用料(約3億円)が、ほぼ無料に。青森まで開業した2011年以降の線路使用料は約7億円に増額されますが、実際の支払額は約7,000万円~1億5,000万円に抑えることで、青い森鉄道は黒字を達成しています。

このように、経営状況に応じて線路使用料を変えることにより、青い森鉄道は黒字運営を確保しているのです。なお減免額は、県の一般会計から補助しています。

青い森鉄道のこれまでの取り組み

金銭的な支援のほかにも、沿線自治体は「青い森鉄道線利活用推進協議会」を設置し、利用促進などの取り組みを進めています。主な取り組みは、次の通りです。

  • 野内駅の移転・新駅(筒井駅)設置
  • イベント列車の運行(酒のあで雪見列車、ラッピング電車など)
  • 企画乗車券の販売(シニア寿定期乗車券、通学片道定期券、浅虫温泉あさ風呂きっぷなど)
  • アテンダントの乗車
  • 駅舎の環境整備(花壇整備など)
  • フォトコンテストの開催

…など

なかでも効果が顕著だった施策が、駅の移転と新駅設置です。

2011年には「野内駅」を、青森工業高校の近くに移転。JR時代は1日60人程度だった利用者数は、移転した2011年には578人まで増加しました。さらに、路線バスの乗り継ぎ改善など利便性を高めた結果、2016年には1,000人を突破したのです(2024年の利用者数は897人)。

2014年には、青森~東青森に新駅「筒井駅」を開業。近隣には青森高校などの学校も多く、利用者数は1,565人(2024年)で増加傾向にあります。ちなみに筒井駅開業に必要な事業費は、国の幹線鉄道等活性化事業費補助を活用することで、自治体負担額を大幅に軽減。JRの請願駅として設置するより、2億円以上も削減できたそうです。

このほか、企画乗車券も定評があります。61歳以上の人を対象とした「シニア寿定期乗車券」は、通勤定期券の約3割の額で販売。買い物や通院など乗車目的を問わず利用できるとして、人気があるようです。

寝台特急廃止でも自治体負担額が激増しなかった理由

さまざまな利用促進策で利用者を増やし続けた青い森鉄道ですが、実際の収支は赤字です。これを実質的に穴埋めする線路使用料の減免額は、年間6億円前後。つまり、青森県は一般会計から毎年6億円前後を青い森鉄道のために負担してきたのです。

こうしたなかで2016年3月に、北海道新幹線の新青森~新函館北斗が開業します。これにともない、北海道と本州を結ぶ寝台特急が廃止に。JR東日本から得ていた線路使用料を失うことになります。北斗星などの寝台特急の線路使用料は、約3億9,000万円(2013年度)。青い森鉄道の減免額と合わせると、自治体負担額は10億円規模になる想定です。

負担額の大幅増加に、青森県は国と協議。その結果、県に支払われる貨物調整金を増額することで合意します。さらに、JR貨物の機関車交換作業を青い森鉄道の施設で実施することも決定。これにより青い森鉄道は、約6億円の支援を国から受けられるようになったのです。

結果として、寝台特急の線路使用料を穴埋めできただけでなく、青い森鉄道が支払う線路使用料も増加。2017年度と2018年度には初めて、減免なしの満額を支払い、自治体負担額は大幅に減少します。

■青い森鉄道の当期純利益と線路使用料の減免額(単位:万円)

▲青は当期純利益・純損失、赤は線路使用料の減免額。JR貨物の機関車交換作業の受託後は、青い森鉄道の収入が大きく増え、線路使用料の減免額も減少した。
参考:青い森鉄道「事業報告(決算公告)」をもとに筆者作成

高規格な鉄道施設の老朽化対策が課題に

国の支援などで、経営環境が大きく改善した青い森鉄道。しかし、電気料金や資材費の高騰、沿線地域の人口減少にともなう利用者減少など、課題は山積しています。

また、線路を保有する青森県としては、鉄道施設の老朽化にともなう更新費用の増加が、頭痛の種になっています。もともと東北本線という高規格の幹線を継承したがゆえに、更新費用も高額になりやすいのです。これは、他の並行在来線の第三セクター事業者にも共通する課題です。

こうした課題を解決するうえで青森県は、国の「鉄道事業再構築事業」の活用を検討。この事業にともなう補助金を活用すれば、鉄道施設の整備などに対する国の補助率がアップし、自治体負担額を抑えられます。

ただし、この補助を受けるには「鉄道事業再構築実施計画」を策定して、国の認定を受けなければなりません。そこで青森県は、青い森鉄道とともに計画を策定し、2024年11月29日に国土交通省へ申請。2025年1月30日に認定を受けました。

計画案では、駅舎や線路設備の改良といった鉄道施設の更新・修繕や車両設備の改良・修繕などに、今後10年間で70億9,000万円を投資。また、インバウンド増加にともなう多言語対応、Wi-Fi環境の整備、企画乗車券の販売、駅舎の利用環境向上などの取り組みも実施します。

計画期間は、2025年度から10年間。計画最終年度の2034年度には、利用者数が年間400万人、旅客運輸収入は15億2,800万円を目指すとしています。なお、再構築事業を実施しない場合と比べて利用者数は約79万人の増加、旅客運輸収入は約3億8,600万円の増加を見込んでいます。

今後、沿線人口は急激に減っていくことが予測される地域ですから、利用者の減少は避けられません。こうしたなかで、体力があるうちに投資をおこなうことで、青い森鉄道をいつまでも支えてほしいところです。

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参考URL

鉄道統計年報
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000053.html

協議会の取り組み(青い森鉄道線利活用推進協議会)
http://aoimorirailway.com/kyougikai/

青い森鉄道線マイレールミーティング
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kotsu/tetsudo/files/191203siryou.pdf

青い森鉄道線について
http://aoimorirailway.com/company/aoimori

青い森鉄道株式会社(青森県)
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/soumu/gyokei/files/H26houkokusy03_03-aoimori.pdf

会社概要・決算公告(青い森鉄道)
https://aoimorirailway.com/company/company

協議会の取り組み(青い森鉄道線利活用推進協議会)
https://aoimorirailway.com/kyougikai/torikumi

6件の鉄道事業再構築実施計画の認定について(国土交通省)
https://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/content/000341411.pdf

青い森鉄道の鉄道事業再構築実施計画の認定について(国土交通省東北運輸局)
https://wwwtb.mlit.go.jp/tohoku/td/00001_00412.html

青い森鉄道が示すローカル線「上下分離」の光と影 最長の並行在来線、中心市街地との連携不可欠(東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/661180?display=b

筒井駅開業(青森県)
【リンク切れ】https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kikaku/kotsu/tsutsuiopen.html

東北新幹線全線開業への道のり(青森県)
【リンク切れ】https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kikaku/kikaku/files/h21yokuwakaru-2-4.pdf


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