【NEWS】「基本計画路線」の新幹線早期実現を求める全国決起大会が開催

新幹線イメージ 協議会ニュース

【2026年1月22日】法律で基本計画路線に位置づけられた新幹線の早期実現をめざす、総決起大会が開催されました。

総決起大会は、羽越・奥羽・山陰・中国横断・四国・東九州の6つの期成会や同盟会、協議会が共同で主催。7県の知事、石破前首相をはじめ26人の国会議員、自治体や経済界の関係者など1府19県から約500人が参加しました。全国規模の総決起大会は、今回が初めてです。

総決起大会では、基本計画から整備計画への格上げに必要な法定調査の実施や国の財源拡充など、6つの要望を決議。また、政府が毎年6月頃に閣議決定する骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)に、「2020年代に整備計画への格上げを図る」という文言を盛り込むことも求めています。

これらの決議内容は要望書にまとめられ、国土交通省などに提出されました。

【解説】半世紀も実現しない「基本計画路線」の新幹線とは?

今回の決起大会の名称は「新幹線基本計画路線全国総決起大会」です。基本計画路線の早期実現をめざす決起大会は、これまでも各路線の沿線自治体などで構成される期成会や同盟会、協議会がそれぞれ実施してきました。これらの団体が一堂に結集する大規模な決起大会は、今回が初の試みです。

総決起大会の発起人は、東九州新幹線などの実現をめざす大分県の佐藤知事でした。

全国新幹線鉄道整備法(全幹法)にもとづく基本計画の路線は、1973年に国が示しています。しかし、将来的に整備すべきと位置づけられながらも棚上げされたまま、50年以上が経過しました。これらの沿線自治体では、事業化がめざせる「整備計画への格上げ」を国土交通省に求めてきました。これに対して国土交通省は、北海道新幹線や北陸新幹線などの整備計画路線が完工しないと「基本計画を進められない」と回答。計画は一向に進んでいません。

■整備計画待ちの基本計画路線

▲白抜きの路線が基本計画路線で、全国に11路線ある。このうち中央新幹線(茶色)は、JR東海が進めるリニア中央新幹線で整備する方針。
出典:国土交通省「全国の新幹線鉄道網の現状」

「このままでは、いつまでたっても新幹線ができない」と焦りを滲ませた大分県の佐藤知事は、2025年7月の全国知事会で総決起大会の開催を提言。その後、大分県の関係者が基本計画路線のある自治体や経済界など関係機関を行脚し、今回の総決起大会の実現につながりました。

なお、7月の知事会では整備新幹線の財源問題についても議論され、JRが支払う貸付料の期間延長などを提言しています。

※整備新幹線の貸付料に関しては、以下の記事で解説しています。

整備計画路線に格上げするには?

基本計画の路線を、事業化がめざせる整備計画に格上げするには、まず国が法定調査を実施する必要があります。

この調査は全幹法にもとづいて実施されるもので、具体的には、新幹線の整備により地域社会や経済に与える効果の検証、技術的・費用面(B/C)の精査などをおこないます。平たくいうと、整備新幹線の着工5条件にある「収支採算性」「費用を上回る投資効果」といった項目のベースになる調査といえるでしょう。

法定調査を始めてもらうには、地元の機運を醸成することも大切です。「新幹線がほしい」という熱意を国に伝えるために、基本計画路線の沿線自治体は決起大会などを開いて、さまざまな取り組みをおこなってきたわけです。

こうしたなかで、国も新たな動きを見せ始めます。2025年12月に国土交通省が公表した鉄道局関係予算決定概要で、基本計画路線の「ケーススタディ」を実施することが示されました。ケーススタディとは、一部の基本計画路線で整備方法や運行手法を検証し、実現可能性や課題を探るというもの。国土交通省は、この事業に1億8,900万円の予算を盛り込んでいます。

具体的にどの路線で実施するかは不明ですし、これが整備計画への格上げにつながるかはわかりません。ただ、基本計画路線の沿線では、「国が前向きに検討してくれる」と期待しているようです。

輸送密度でみる基本計画路線の現状

さて、総決起大会では「財源の確保」に関する要望も決議されていますが、実際に運行するJRからみれば「基本計画路線は採算がとれるのか?」という点も気になる項目でしょう。利用者が少なければ、運行するJR側の負担が大きくなります。

基本計画路線でどれくらいの利用が見込めるのかを予測する目安として、並行する在来線の実績も参考になるでしょう。そこで、基本計画の11路線と並行する在来線の輸送密度(2024年度)を見てみます。なお、基本計画路線のルートは正確に決まっていません。以下表の在来線は、あくまでも仮定であることはご了承ください。

■基本計画路線と並行する在来線の輸送密度(2024年度)

基本計画路線並行する在来線
北海道南回り新幹線室蘭本線(長万部~東室蘭):4,390人/日
室蘭本線(室蘭~苫小牧):6,155人/日
千歳線:47,377人/日
函館本線(札幌~岩見沢):40,802人/日
函館本線(岩見沢~旭川):7,176人/日
羽越新幹線羽越本線:5,862人/日
越後線:5,462人/日
奥羽新幹線奥羽本線:4,354人/日
中央新幹線東海道新幹線:210,302人/日(2022年度)
北陸・中京新幹線北陸本線(米原~敦賀):13,474人/日
山陰新幹線山陰本線:4,096人/日
中国横断新幹線伯備線:5,010人/日
四国新幹線高徳線:3,744人/日
予讃線:5,838人/日
四国横断新幹線本四備讃線:23,120人/日
土讃線:2,453人/日
東九州新幹線日豊本線:8,227人/日
九州横断新幹線豊肥本線:3,407人/日

現在開業している整備新幹線のなかで、もっとも利用者が少ないのは、北海道新幹線(新青森~新函館北斗)の4,532人/日です(2024年度)。北海道新幹線の赤字額は年間120億円前後。青函トンネルを通るなど特殊な環境ではあるものの、利用者が少ないと採算性も良くないといえます。

基本計画路線のなかには、北海道新幹線よりも需要が見込めない路線も少なくありません。

もっとも、新幹線ができると需要が増えることも考えられます。北海道新幹線も、在来線時代の2015年度は、中小国~木古内が3,706人/日、木古内~五稜郭が4,133人/日でしたから、利用者が1~2割増えています。とはいえ、将来の人口減少により利用者が減ることが見込まれますし、人口減少は新幹線の建設費を負担する国と自治体にとっても脅威です。くわえて利用者が少なければ、地域に与える経済波及効果も期待できないでしょう。

こうしたことから国は、ミニ新幹線など在来線を活用した整備や、フル規格の場合は単線にするなどの負担軽減も検討していますが、運行するJRからみれば負担が増える可能性も否定できません。

高速道路の延伸や航空路線が身近になったことなど、基本計画が策定された50年前とは、移動のニーズが大きく変わりました。また、整備計画に格上げされても、ルートや地元負担などの協議が難航し、実現のめどが立たない区間もあります。新幹線が地域に大きく貢献するのは間違いありませんが、将来に負の便益を残さないよう新幹線計画を考え直す時期かもしれません。

整備新幹線の関連記事

参考URL

第1回新幹線基本計画路線全国総決起大会の開催について(大分県)
https://www.pref.oita.jp/soshiki/10530/kouikikoutsu10.html

全国新幹線鉄道整備法第四条第一項の規定による建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/1973/62035a03/62035a03.html

令和8年度 鉄道局関係予算決定概要(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/page/content/001975403.pdf

タイトルとURLをコピーしました