今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、JR四国が赤字ローカル線のあり方について方針転換を示したニュースや、JR宗谷線の2駅の廃止を沿線自治体が受け入れた話など、さまざまなニュースをピックアップしました。
JR四国の赤字ローカル線問題「地域との対話重視」に方針転換
【2024年6月27日】JR四国の四之宮社長は、利用者の少ない赤字ローカル線の存廃協議について「今はその時期ではない」という考えを示しました。そのうえで、「まずは利便性の向上や利用促進の取り組みに注力したい」と述べ、協議の形にこだわらず沿線自治体と意見交換したいと伝えました。
これに対して、存廃協議の対象とされる予土線で、利用促進協議会の会長を務める愛媛県松野町の坂本町長は、NHKの取材に対して「新社長の考え聞きたい」「まずはJR四国と国が協議し、ローカル線の存続方法について具体的に示してくれたら議論できるかもしれない」という意見を述べています。
【解説】JR四国が方針転換した理由は?沿線自治体と協議できるのか?
四之宮社長は、2024年6月25日に就任したJR四国の新社長です。
JR四国では、西牧前社長が2022年10月の記者会見で、利用者の少ない路線の見直しについて言及。国の再構築協議会は否定しながらも「まずは4県とお話しするのが順序だと思う」と述べ、四国各県に任意協議会を申し入れる考えを示していました。対象線区は、予讃線の海回り区間、予土線、牟岐線の阿南~阿波海南です。
一方の沿線自治体は廃止されることを懸念し、JR四国の申し入れに「待った」をかけていました。西牧前社長の提言から1年以上が過ぎた現在でも、協議を始めた路線はありません。こうした状況から四之宮社長は、沿線自治体との話し合いの場を持つために、協議のハードルを下げる方針に変更したとみられます。
ただ、この方針転換で沿線自治体が協議に参加するかは未知数です。沿線自治体はこれまでも、JR四国と一緒に利用促進をおこなってきましたが、効果は限定的で利用者の減少に歯止めをかけられていません。予土線利用促進対策協議会の会長である坂本町長はNHKの取材に対して「JR四国と沿線自治体が話しあっても、前向きな議論にはならない」と否定的な考えを述べており、国も検討してほしいと要望しています。
確かにJRは国がつくった組織ですから、国が検討することも必要でしょう。とはいえ、国は地域ごとの公共交通事情など細かい部分まで把握しておらず、「まずは地域で考えてほしい」という姿勢です。
国に要望するくらいなら、地元の大学教授など地域公共交通に詳しい有識者に意見を求めたほうが有意義かもしれません。赤字ローカル線をめぐる最近の協議会を見ていると、有識者が座長を務め、沿線自治体と鉄道事業者の話をまとめるケースが増えています。こうした第三者が協議に参加することで、新しいアイデアが出てきたり、まちづくりを含めた地域公共交通全体の再構築につながったりと、前向きの議論ができることも期待されます。
JR四国は2025年度までに、抜本的な経営改善策を国に報告することが求められています。また、協議を拒み続けているあいだにも、ローカル線の利用者数は減り続けています。可能な限り早い段階で、両者が話し合える場を持つことが望まれます。
その他の鉄道協議会ニュース
JR宗谷線の雄信内駅と南幌延駅が来春廃止へ
【2024年6月24日】北海道幌延町は、JR宗谷線の雄信内駅と南幌延駅の廃止を受け入れる方針を固めました。両駅は2021年度から幌延町が維持管理しており、管理費などは町が負担しています。年間管理費は両駅あわせて約250万円です。ただ、今後駅舎の修繕費などが約500万円必要と見積もられ、町は「負担が重い」として廃止を受け入れる方針を示しました。
乗車人員は、いずれの駅も1日あたり1人未満。沿線住民も廃止容認の意見が多いとされ、幌延町は7月にもJR北海道に伝える予定です。廃止時期は、来春のダイヤ改正時とみられます。
※宗谷本線の沿線自治体とJR北海道との協議の経緯は、以下の記事で詳しく解説しています。
弘南鉄道大鰐線の存続を視野に沿線自治体が懇談
【2024年6月25日】青森県の弘前市と大鰐町は、弘南鉄道大鰐線の存続に向けた支援のあり方などを話し合いました。大鰐線には、2021年に策定された沿線自治体の支援計画で「2019年度比で約2,000万円の増収」などの目標が課せられており、達成できなければ2025年度末で支援が打ち切られる予定です。しかし、実際には目標を達成できませんでした。
ただ、計画期間中はコロナ禍であったことや脱線事故が発生するなど、計画策定時とは状況が異なるとして、弘前市と大鰐町が懇談。7月に提出予定だった中長期計画の見直しを確認したうえで、今後も支援に関する協議を続けていくそうです。
※弘南鉄道に対する沿線自治体の支援や利用促進の取り組みなどは、以下の記事で詳しく解説しています。
くま川鉄道で上下分離後の新法人を設立
【2024年6月25日】2025年に全線復旧を予定しているくま川鉄道で、鉄道施設などを維持管理する新法人が設立されました。
くま川鉄道は、2020年7月の豪雨災害で大きな被害を受け、国と沿線自治体が復旧費用を支援しています。ただ、国の支援を受けるにはくま川鉄道の抜本的な経営改善が求められるため、沿線自治体は上下分離方式を採用することで合意。復旧後の「下」を維持管理する組織として「くま川鉄道管理機構」を設立しました。今後は、鉄道施設の資産区分や運営費の負担割合などを沿線自治体が協議し、全線復旧に向けて準備を進める予定です。
※くま川鉄道の沿線自治体が復旧および上下分離方式を受け入れるまでの経緯は、以下のページで詳しく解説しています。
肥薩おれんじ鉄道の経営改善をめざす検討委員会が初会合
【2024年6月27日】肥薩おれんじ鉄道の沿線自治体は、鉄道のあり方について協議する「未来戦略検討委員会」を設置しました。その初会合では、肥薩おれんじ鉄道の利用状況や経営状況が報告されたほか、経営改善案として「駅の複合施設化」「未使用の土地の活用法」などの検討もされたようです。これらの改善案は外部機関で詳しく調査し、経営改善をめざすとしています。
※肥薩おれんじ鉄道の厳しい経営状況や利用促進の取り組みなどは、以下のページで詳しく解説しています
JR八戸線の沿線自治体が任意協議会を設置
【2024年6月24日】八戸市や久慈市などの沿線自治体が、「JR八戸線利用促進協議会」を設立しました。この協議会は、八戸線の利用促進や沿線の活性化などを目的に、県をまたぐ4市町で設立。第1回の協議会では、今年度の事業計画について話し合われたそうです。具体的な事業として「利用者への運賃補助」「モニターツアーの実施」「利用促進イベントの開催者に対する助成金制度の創設」「絵画コンクールの開催」などを予定しています。
協議会の会長である久慈市の遠藤市長は、「市民や観光客に、もっと利用していただけるように企画していきたい」と述べています。